未来に備えるお役立ち情報

認知症について知る

認知症の症状

脳内では多数の脳細胞がネットワークを組んで、五感や各臓器からの知覚情報のインプットを取捨選択し、過去の記憶や感情と照らし合わせながら、推理や理解、判断をし、行動や発言によるアウトプットにつなげ、学習、記憶をしていくという複雑な情報処理を行っています。認知症になるとこれらの脳機能に不具合が生じるため、さまざまな症状が起こります。

認知症の症状にはどのようなものがあるのか、みていきましょう。

脳の細胞が壊れ死んで
減少していく病気の本質として現れる症状を「中核症状」、残存している脳の細胞が頑張りアンバランスを生じることで現れる症状を「周辺症状=BPSD(認知症の行動・心理症状)」といいます。

中核症状

記憶障害
● 認知症の初期段階から現れやすい障害です。目や耳などから入るたくさんの情報や出来事(自分の言ったこと、やったこと)を記憶することができなくなり、直前のことが思い出せなくなります。認知症が進行すると、昔の記憶や自分に関する大事な情報も失われていきます。
見当識障害
● 記憶障害と同様に、認知症の初期段階から現れる障害です。見当識とは、自分が置かれている状況を正しく認識する能力です。認知症になると時間→場所→人の順でわからなくなります。
失見当識の具体例
理解・判断力障害
● 考えるスピードが遅くなり、判断にも支障が出てきます。一度に処理できる情報量が減るため、複雑なことについて理解したり、記銘したり、反応することが困難になります。複数のことが重なったり些細な変化で混乱しやすくなります。
実行機能障害
● 目的をもって、計画を立てて物事を実行し、その結果をフィードバックしながら物事を進めていく機能の障害です。認知症になると、仕事や家事を段取りよく進められなくなり、日常生活に支障が出てきます。また、予想外の出来事に対して、他の手段を考えて適切な方法で対処できなくなります。
失行・失認・失語
● 失行とは、身体を動かす機能の障害はみられず、行動しようとする意思はあるものの、今までの生活で身につけていた動作が行えない状態です(道具がうまく使えなくなったり、服がうまく着られないなど)。
● 失認とは、身体的には問題がなくとも「五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)」による認知力を正常に働かせ、状況を正しく把握することが難しい状態をいいます(例えば、目で醤油を見ているけれど、「醤油を取って」といわれても醤油と認識できない)。
● 失語とは、言葉を司る脳の部分が機能しなくなり、言葉がうまく使えなくなる状態です。

周辺症状

認知症の行動・心理症状(BPSD)は周辺症状とも呼ばれており、中核症状がもととなって、行動や心理症状に現れるものです。本人の性格や環境、心理状態によって出現するため、人それぞれ個人差があります。病気をよく理解して適切に対応したり、リハビリなどを行うことで、改善する場合もあります。

BPSDは大きく4つに分類できます。

  • 活動亢進症状
    焦燥性興奮、易刺激性、脱抑制、異常行動、暴言や暴力、徘徊など。
  • 精神病様症状
    幻覚、妄想、夜間行動異常、不眠、睡眠障害など。
  • 感情障害症状
    不安、ひどく落ち込む、悲哀感、自責感など。
  • アパシー症状
    意欲低下、自発性低下、情緒の欠如、不活発、周囲への興味関心の欠如など。

例えば、元気がなくなる引っ込み思案になる妄想が起こる焦燥感が強くなるいらいらしやすい些細なことで不機嫌になる、なども、病院受診や行政への相談をしてよい症状です。

監修 さちはなクリニック 副院長  岡 瑞紀

さちはなクリニック

さちはなクリニック 副院長  岡 瑞紀

琉球大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部精神神経科学教室にて研修。国家公務員共済組合連合会立川病院、桜ケ丘記念病院勤務後、慶應義塾大学病院メモリークリニック外来、一般内科医院での認知症診療、各種老人入居施設への訪問診療、保健所の専門医相談、地域研究、家族会など各種講演会での啓発活動を通して、様々なステージや状況下の認知症診療を経験。慶應義塾大学大学院医学研究科にて学位取得。2015年より、さちはなクリニック副院長として、もの忘れ、認知症の診療を担当。

免許・資格:医師/精神保健指定医/精神科専門医/日本老年精神医学会認定専門医/医学博士
所属学会:日本精神神経学会/日本老年精神医学会