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認知症について知る

あなたの「?」にもの忘れ・認知症の専門医が答える 認知症クリニック

認知症だと診断されました。
まずは何をすればよいのでしょうか?

慌てないことが大切です。これからのために、冷静になって対策を考え始めましょう。

 自分自身でも家族でも、認知症と診断されれば、誰もが絶望したり、不安でいっぱいになるものです。しかし、認知症になったからと言って不幸になるわけではありません。認知症と上手に付き合いながら幸せに暮らすこともできますので、まずは、慌てず焦らず、今後の生活のための対策を考えることが大切です。

対策1 正しい知識を身に付けましょう。

医師からもらった冊子などがあればよく読んで、また、ご自分でもインターネットや書籍などで調べてみてください。おすすめの書籍を医師に聞いてみるのもよいかもしれませんね。正しい知識は心に余裕を生みます。まずは、認知症を正しく理解することが大切です。
認知症を正しく理解しないまま、取り越し苦労に時間を費やしてしまったり、逆に、知識ばかりでがんじがらめになり、行動できなくなってしまうケースもありますので、適切な行動をとるための正しい知識を身に付けましょう。
認知症の正しい理解に向けては、この「認知症クリニック」で随時紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。

対策2 サポート体制を整えましょう。

これからの生活を考えると、認知症の進行に応じて適切なサポートを受けることが大切になってきますので、まずはお住まいの市区町村にある地域包括支援センター*に相談してみてください。今はまだサポートが必要ないと思っている方も、ぜひ将来のために、地域包括支援センターの存在を覚えておいてください。
地域包括支援センターは、「高齢者相談センター」「高齢者あんしんセンター」などと呼ばれることもあり、高齢者の介護・福祉・健康・医療・生活に関して、総合的に高齢者とその家族を支援するための機関です。
家族や周囲の人と相談できる方は、地域包括支援センターに行く前に話し合って、一緒にセンターを訪れるとよいでしょう。
国や地域には、介護保険サービスをはじめ、認知症をサポートするためのさまざまなサービスがあります。それらを熟知している地域包括支援センターのスタッフに相談するなど、上手にサービスを利用しましょう。

*地域包括支援センターは、地域の高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行い、高齢者の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とし、地域包括ケア実現に向けた中核的な機関として市町村が設置しています。(出典:厚生労働省 政策について 地域包括ケアシステム内)

対策3 かかりつけ医を見つけましょう。

わからないことなどをすぐに相談できる専門家として、かかりつけ医を見つけましょう。
かかりつけ医は、認知症と診断された病院である必要はありませんし、大きな病院でなくても大丈夫です。信頼できるかかりつけ医を見つけることは、今後の生活のためにとても重要です。
かかりつけ医は、認知症診療に知見のある医師が望ましいです。認知症相談医、認知症サポート医、認知症専門医などの情報は、市区町村のホームページなどで紹介されていることが多いので、参考にしてみてください。
しかし、自身で適切なかかりつけ医を見つけるのはなかなか大変なものです。そんな時にも、地域包括支援センターは頼りになる存在です。認知症診療を積極的に行っている医療機関の情報について、問い合わせてみてください。

対策4 経験者と話してみましょう。

自分自身が認知症であっても、家族が認知症であっても、同じ悩みを持つ仲間だから通じ合えるということも多いものです。認知症の症状や介護方法は、体験や経験、失敗談や工夫、成功例などの具体例から学べることがたくさんあります。
認知症の方やその家族、地域住民の方々などが気軽に集まって、情報交換できる場所として、自治体や民間団体が運営する「認知症カフェ*」という場もありますので、ぜひ活用してみてください。スタッフや参加者に、地域包括支援センターや社会福祉協議会の職員、介護福祉士、作業療法士、看護師、医師などの専門職がいる場合も多いので、自然にいろいろな立場の人に出会い、専門的な相談も気軽にできます。お近くの認知症カフェについても、最寄りの地域包括支援センターにお問い合わせください。

*認知症の人の意志が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の一環で、認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有し、お互いを理解し合う場として、厚生労働省が普及を推進している。平成28年度実績調査では、47都道府県1029市町村にて、4267カフェが運営されている。(厚生労働省、経済産業省「認知症対策の推進」より)

 認知症と診断された時に、まず行っておきたいことについて簡単に紹介しましたが、何よりも大切なのは「これまで通りの生活を続けていくこと」です。

 家事など、できることは自分でする、日課となっていることや趣味もぜひ続けてください。これからは認知症と共に生きることになりますが、自分らしい生活を送ることはできます。

 不安は小さくないかもしれません。しかし、適切な治療とサポートがあれば、認知症になっても幸せに暮らしていくことができることを知っておいてください。

認知症と診断されたそのとき、
みんなの反応・行動は?

 10年来、夫の介護を自宅でしているAさん。最近、今まで特に意識することなくできていたことが、いちいち考えてからするようになった。物事をするのに時間がかかるようになり、自信もなくなってきたため、夫の介護を相談している主治医に自分のことを相談。

 認知症検査をしたところ、「アルツハイマー型認知症の疑いが強い」と診断されてしまった。これ以上、症状が進まないようにと薬を飲んでいるが、病を抱える夫には、診断を受けたことを言えないでいる。2人の子どもたちもそれぞれ家庭があり、仕事が忙しい時期なので「心配をかけたくないから」と相談していない。「忘れないように!」となんとか自分を鼓舞して毎日生活している。


 将来のことを考えると、速やかに家族に打ち明けることがとても大切です。子どもたちに負担をかけたくない気持ちはわかりますが、「老いては子に従え」です。これからは子どもに頼ってもいい人生ステージです。まずは、診断内容だけでも伝えることをおすすめします。

 ご自身の状態が悪くなってからお子さまに伝えると、「なんでもっと早くに言ってくれなかったの?」「こんな状態になるまで親を一人で悩ませてしまった」と、逆にお子さまに負担をかけたり、後悔をさせる結果になる場合もあります。「時すでに遅し」とならないように、できるだけ早く状態を伝えることが大切です。また、お子さまの反応がいまいちだった場合などは、繰り返し伝えることもポイントです。

 独身で両親も姉弟もすでに他界したため天涯孤独だが、週に3回はお友だちと外出や趣味を楽しんでいるBさん。もっぱらの話題は「もの忘れ」で、仲間内で「忘れっぽくなった」「私もそうよ」と話している。そこで、仲間みんなで認知症検査を受けることにした。結果、「アルツハイマー型認知症+脳血管性認知症」と診断されたが、特に生活に支障を感じていない。自分では認知症ではないと思っているため、もらった薬を飲まずに様子を見ている。


 生活に支障を感じない、その時期こそが今後の症状の進行を左右する時期ですので、自己判断で医師が処方した薬を飲まないのは危険です。診断に納得がいかない場合や薬を飲みたくない場合には、そのことを医師に打ち明け、相談してみてください。自分で決めず、医師と対話することが大切です。

 認知症という診断が出たということをしっかりと受け止める必要があります。

 また、Bさんは天涯孤独とのこと。身寄りがいない方や一人暮らしをされている方は、早めの対策・準備が非常に重要です。このことは大きな社会問題でもありますので、改めてこの「認知症クリニック」でも取り上げたいと思っています。

 数年前からもの忘れが気になっていたCさん。長年のかかりつけ医に相談してみたが「私もそんなことはあるから、Cさんも年のせいだよ」と言われてしまった。その後も何度か相談したが、同じことを言われていた。

 知り合いのケアマネージャーに相談したところ、かかりつけ医に認知症検査ができる病院を紹介してもらうようにアドバイスをもらった。怒られるのではないかとドキドキしながらかかりつけ医に話してみると、快く認知症疾患医療センターを紹介してくれた。検査の結果、「MCI~極初期のアルツハイマー型認知症」と診断された。

 「やっぱり、認知症だったんだ!」と長年のもやもやが晴れてすっきり。センターから検査結果を聞いたかかりつけ医には、検査の労をねぎらわれ、以後薬の処方を受けている。


 定期的にかかりつけ医に通院していても、認知症の専門医ではない場合、特にごく初期の段階の認知症は気付かれないケースも少なくありません。もの忘れが気になっている場合は、 早期発見のためにも、もやもやを抱えず、「認知症の検査をしたい」ことを伝え、専門医の診断を受けましょう。
医者に対して、物を申していい時代です!

話し手 さちはなクリニック 副院長  岡 瑞紀

さちはなクリニック

さちはなクリニック 副院長  岡 瑞紀

琉球大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部精神神経科学教室にて研修。国家公務員共済組合連合会立川病院、桜ケ丘記念病院勤務後、慶應義塾大学病院メモリークリニック外来、一般内科医院での認知症診療、各種老人入居施設への訪問診療、保健所の専門医相談、地域研究、家族会など各種講演会での啓発活動を通して、様々なステージや状況下の認知症診療を経験。慶應義塾大学大学院医学研究科にて学位取得。2015年より、さちはなクリニック副院長として、もの忘れ、認知症の診療を担当。

免許・資格:医師/精神保健指定医/精神科専門医/日本老年精神医学会認定専門医/医学博士
所属学会:日本精神神経学会/日本老年精神医学会