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若年性認知症について

若年性認知症とは

65歳未満で発症した認知症のことを「若年性認知症」と呼びます。
若年性認知症の特徴を見ていきましょう。

若年性認知症の特徴

若年性認知症は、発症年齢の若さから高齢者の認知症とは異なる問題が生じます。
若年性認知症と高齢者の認知症との主な違いは以下の通りです。

発症年齢

  • 発症年齢の平均は51.3歳
  • 約3割が50歳未満で発症

出典:厚生労働省「若年性認知症ハンドブック(改訂版)」(平成27年度)

男女比

  • 高齢者の認知症は女性に多いのに対し、若年性認知症は男性に多い

性・年齢階級別有病率(調査時 65 歳未満)

【性別を区別した有病率(10万人あたり)の平均】※1
30歳未満 30歳~34歳 35歳~39歳 40歳~44歳 45歳~49歳 50歳~54歳 55歳~59歳 60歳~64歳
男性 4.8 5.7 7.3 10.9 17.4 51.3 123.9 325.3
女性 1.9 1.5 3.7 5.7 17.3 35.0 97.0 226.3

介護者

  • 主介護者は配偶者に集中する傾向があり、子育て・家事や親の介護と重なってしまう可能性がある
  • 高齢の親も主介護者となることがある
  • 働き盛りで罹患する人が多く、患者本人や介護を担う配偶者の収入が減少することにより、家族が経済的に困窮してしまう可能性がある

若年性認知症の患者数

全国における18歳~64歳の若年性認知症者数は3.57万人と推計されています。(※2)

若年性認知症の原因疾患

若年性認知症に関する調査では、若年性認知症においてはアルツハイマー型認知症が最も多く、血管性認知症、前頭側頭型認知症、外傷による認知症、レビー小体型認知症/パーキンソン病、アルコール関連障害による認知症と続くことが判明しました。

若年性認知症の原因疾患 ※3

若年性認知症の症状

初期症状

若年性認知症も含めた認知症の初期症状は、認知症の種類で異なります。

血管性認知症の場合

障害が生じた血管の場所によって症状が異なる。計算力や理解力・記憶力などの障害、運動まひ、歩行障害、排尿障害、飲み下すことへの支障、感情のコントロールが難しくなる、抑うつ症状など。

アルツハイマー型認知症の場合

もの忘れ、短気になる、置き忘れやしまい忘れ、趣味などに関心がなくなる、時間や場所の感覚が衰える、匂いがわかりにくくなる、片付けが苦手になるなど。

前頭側頭型認知症の場合

人格の変化や非常識な行動が目立つ、失語、共感・感情移入ができない、食事の好みが変化、社会性の低下、同じことをくりかえすなど。

レビー小体型認知症の場合

幻視、手足の震えなどのパーキンソン症状、軽度のもの忘れ、1日の中で症状が変動するなど。

中核症状

認知症の症状には、「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」があります。
「中核症状」とは、脳の障害が原因で起こる以下のような症状であり、認知症の進行とともに症状が重くなっていきます。
  • 記憶障害…物事を記憶する力が低下する。
    例)食事をしたことを忘れる、何度も同じ話を繰り返すなど。
  • 見当識障害…見当識(時間・場所)が低下する。
    例)時間や日付が分からない、慣れた道で迷うなど。
  • 遂行機能障害…手順通り、計画通りに行う機能が低下する。
    例)仕事を期日通りに終わらせられないなど。
  • 失語…人やものの名前が出てこない。
    例)会話中に「あれ」「それ」が多いなど。
  • 失行…身につけた動作を行う機能が低下する。
    例)衣服の着脱ができない、道具の使い方が分からないなど。
  • 失認…五感が正常に働かなくなる。
    例)ものを見間違えるなど。
原因疾患別の特有の症状としては、アルツハイマー型認知症では「最近あった出来事を思い出せない」、前頭側頭型認知症では「社会性の欠如や抑制が効かなくなる、同じことを繰り返す」、血管性認知症では「手足のまひやしゃべりにくさ」などがあります。

周辺症状(BPSD)

本人の性格や周囲の環境などが影響して二次的に引き起こされる症状を「行動・心理症状(BPSD)」といいます。不安や抑うつ、徘徊、興奮・せん妄、幻覚、介護拒否などの症状が、本人の性格や環境、心理状態によって出現します。

若年性認知症のBPSDの有無 ※4

若年性認知症の早期発見

若年性認知症の診断は遅れる傾向

現役世代の方は、仕事でミスが重なったり、物忘れの症状があっても、それが認知症のせいとは思い至らない傾向があります。
疲れや更年期障害、あるいはうつ状態等、他の病気と思って医療機関を受診する方もいます。誤った診断のまま時間が過ぎ、認知症の症状が目立つようになってからようやく診断された例もあります。

若年性認知症に気づくきっかけ

若年性認知症に気づくきっかけとなった症状は、「もの忘れ」(64.9%)、「職場や家事などでのミス」(43.0%)、「怒りっぽくなった」(27.0%)などが多いことが分かっています。

最初に気づいた症状 ※5

もの忘れが多くなった 64.9%
言葉がうまく出なくなった 16.5%
怒りっぽくなった 27.0%
何事にもやる気がなくなった 22.1%
職場や家事などでミスが多くなった 43.0%
上記以外の、今までにない行動・態度が出るようになった 17.4%
その他 34.9%

若年性認知症か不安になったら 医療機関の受診

どのような医療機関にかかれば良いか

かかりつけ医

認知症の治療は長く、日常生活での困りごとが生じる場合があることから、身近にかかりつけの医療機関があると安心です。
専門医を受診する場合も、かかりつけ医に紹介状を書いてもらうことでスムーズに受診できると期待されます。

専門医療機関

<認知症疾患医療センター>
認知症を専門とする医師がおり、診断・治療方針の選定・入院も可能な医療機関。
都道府県に複数存在。認知症についての医療福祉相談も行っており、地域の保健 医療・福祉関係者の支援も実施。
都道府県ホームページで公開されている。

<認知症専門医>
認知症を専門とする医師でそれぞれの学会が認定した専門医。
<認知症サポート医>
国が進める「サポート医研修」を受け、認知症に関する専門的知識・技術をもって、かかりつけ医への助言や、地域の認知症医療の中心的役割を担う医師。地域の医師会のホームページ(http://med.or.jp/link/search.html)に名簿が公表されている。

病院ではどの科を受診すれば良いか

「もの忘れ外来」など、認知症を専門に診ている科のほか、「神経内科」「精神科」「脳神経外科」などを受診します。

若年性認知症と公的介護保険

若年性認知症と公的介護保険制度

認知症と診断された場合、40歳から介護保険制度による介護サービスが利用可能となります。

若年性認知症での介護保険の申請・認定状況

65歳未満の認知症の人のうち、介護保険を申請した人は69.9%(※6)、認定を受けている人は62.4%(※7)という調査結果があります。
介護保険サービスは高齢者の方向けのもの…というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、半数以上の方が認定を受けていることがわかります。

若年性認知症発症後の就労・収入

就労

認知症になった人を対象とする調査では、65歳未満の方について、就労に関し以下のデータが明らかになっています。
  • 61.8%は発症時点で就労していた。(※8)
  • 調査時点で72.2%は就労しておらず、収入を伴う仕事についている人は15.1%であった。(※9)
  • 57.7%の人は定年前に自己退職しており、7.6%は解雇されていた。(※10)

収入

また、収入に関しても同調査で以下が明らかになっています。
  • 世帯の主な収入は「ご家族の収入」が最も多く(52.3%)、「ご本人の障害年金等」(39.9%)、「ご本人の年金」(29.9%)と続いた。(※11)
  • 64.0%人は世帯収入の減少を感じており(※12)、家計が「とても苦しい」「やや苦しい」と感じている人は38.7%にのぼった。(※13)

他人事ではない認知症に備えるために

現役世代の方にとっても、認知症は決して他人事ではありません。
正しくリスクを認識したうえで、認知症保険などもうまく活用し、「もしも」に備えておきましょう。

1~13出典資料:地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所 『「わが国における若年性認知症有病率・生活実態把握」に関する調査研究報告書』(2020年)より朝日生命で試算

とよだクリニック・認知症予防センター院長
豊田 早苗

2000年鳥取大学医学部医学科卒業。2002~2004年総合診療医として病院過疎地域での地域住民の健康診断等に従事した後、2005年とよだクリニック(精神科・心療内科・神経内科・内科)開業。2015年とよだクリニック認知症予防リハビリセンター開設。
所属学会:総合診療医学会/認知症予防学会/老年精神医学会 所属医療機関:鳥取県米子市 とよだクリニック

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