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介護で活用できる補助金制度を8つ紹介!
補助金を活用して介護費用の負担を軽減しよう


誰もがより良い介護を受けられるよう、国や地方自治体はさまざまな補助金制度を用意しています。介護する側もされる側も、可能な限り経済的な負担を減らせるよう、活用できる補助金は積極的に活用していきましょう。

本記事では、介護に使える補助金制度を「介護費用を抑えたいとき」「介護用品の貸与等を受けたいとき」「介護と仕事を両立したいとき」の3つに分類して解説します。

制度によって補助の条件や内容が異なるため、自分に合った補助金制度を探してみてください。

介護にはどれくらいお金がかかる?補助金制度活用の重要性

介護に関する補助金制度について解説する前に、まずは介護にどれくらいの費用がかかるのか、データをもとに見ていきましょう。

生命保険文化センターが2021年9月に公表した「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護にかかった費用(公的介護サービスの自己負担費用を含む)のうち、住宅の改造や介護用ベッドの購入など、一時的にかかった費用は平均74万円となっています。また、月々の介護費用は平均8.3万円であり、介護費用の月額が15万円以上の家庭は全体の約16.3%であることが示されています。

介護には継続して多額の費用がかかります。十分な金銭的余裕がない限り、介護の補助金制度を十分に活用することが大切です。

なお、補助金や制度は申請しないと利用できないものも多くあります。介護が始まる前に、可能な限り早めに補助金や制度の概要を知って、準備しておきましょう。

本記事では、以下の8つの補助金制度等を一つずつ解説します。

    介護費用を抑えたいときに使える補助金制度

介護手当(家族介護慰労金)

高額介護サービス費

高額医療・高額介護合算療養費制度

医療費控除

②介護用品の貸与等を受けたいときに使える補助金制度

福祉用具購入費

居宅介護住宅改修費

③介護と仕事を両立したいときに使える補助金制度

介護休業制度(介護休業給付金)

介護休暇制度

1.介護費用を抑えたいときに使える補助金制度

まずは、介護費用を抑えたいときに使える補助金制度を4つ紹介します。

介護手当(家族介護慰労金)

介護手当は、在宅介護中の家族に対して支払われる手当です。国ではなく自治体が主体となった制度であり、自治体によって支給要件や支給金額が異なりますが、制度内容はおおむね以下のとおりです。

支給要件:介護サービスを利用せず、要介護度4~5の要介護者を在宅で1年以上介護していること など
支給金額:年間10~12万円程度

介護手当を受給するには、居住している自治体への申請が必要です。自治体によっては手当の名称が異なる場合があるため注意してください(例:東京都中央区「おとしより介護応援手当」)。

ただし、介護手当の支給要件には、“介護サービスを利用しないこと”が含まれている場合がほとんどです。介護サービスを利用せずに、重度の高い要介護者を在宅介護するのは、介護者にとって身体的・精神的に大きな負担となります。介護手当は介護費用を抑えるうえで役立ちますが、介護手当の受給を検討する前に、まずは介護サービスの利用を検討するとよいでしょう。

高額介護サービス費

高額介護サービス費とは、介護サービスを利用した際に、月々の利用者負担額の合計額が、所得に応じた上限額を超えた場合、超過分が公的介護保険から支給される制度です。

月々の負担限度上限額は以下のとおりです。

区分

負担上限額(月額)

課税所得690万円(年収約1,160万円)以上

140,100円(世帯)

課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満

93,000円(世帯)

市町村民税課税世帯~課税所得380万円(年収約770万円)未満

44,400円(世帯)

世帯全員が市町村民税非課税

24,600円(世帯)

前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方等

24,600円(世帯)

15,000円(個人)

生活保護を受給している方等

15,000円(世帯)※

15,000円への減額により生活保護の被保護者とならない場合: 世帯15,000円

出典:厚生労働省 「サービスにかかる利用料」厚生労働省老健局介護保険計画課「令和3年7月5日 介護保険最新情報 Vol.997」

上記の負担限度額を超える場合は、居住する市区町村に申請しましょう。ただし、福祉用具購入費や住宅改修費の負担分、施設サービスの食費、公的介護保険給付対象外の利用者負担分などは支給対象とならないため注意してください。

高額医療・高額介護合算療養費制度

高額医療・高額介護合算療養費制度は、同じ医療保険の世帯内において、医療保険と公的介護保険の両方に自己負担が生じた場合、合算後の負担額が軽減される制度です。医療保険者に申請すると、年収に応じて決められた限度額(年額)を500円以上超えた分が支給されます。

世帯単位の負担上限額は以下のとおりです。


 

75歳以上

7074

70歳未満

公的介護保険+後期高齢者医療

公的介護保険+被用者保険または国民健康保険

年収約1,160万円

212万円

年収約770~約1,160万円

141万円

年収約370~約770万円

67万円

~年収約370万円

56万円

60万円

市町村民税世帯非課税等

31万円

34万円

市町村民税世帯非課税かつ年金収入80万円以下等

本人のみ

19万円

介護利用者が複数

31万円

医療費控除

医療費控除とは、納税者自身または自身と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が一定額を超えた場合、所得控除を受けられる制度です。

医療費控除の対象となる金額は、実際に払った医療費の合計額から、給付金などで補填される金額と10万円※を引いた金額(最高200万円)です。また、訪問看護、介護予防訪問看護、訪問リハビリテーションなどの介護サービスは医療費控除の対象となりますが、福祉用具貸与などは医療費控除の対象外である点に注意しましょう。

その年の総所得金額等が200万円未満の場合、総所得金額等の5%

医療費控除を受けるには、医療費控除に関する事項を記載した確定申告書の提出が必要です。

2.介護用品の貸与等を受けたいときに使える補助金制度

続いて、介護用品の貸与等を受けたいときに使える補助金制度を2つ紹介します。

福祉用具購入費

福祉用具購入費は、車いす、特殊寝台、手すりなどの貸与や購入に要した費用に対して補助する制度です。制度を利用すると、かかった費用の原則9割(所得に応じて8割・7割)が給付されます。

制度の対象となる福祉用具は以下のとおりです。

福祉用具貸与

特定福祉用具販売

l  車いす(付属品含む)

l  特殊寝台(付属品含む)

l  床ずれ防止用具

l  体位変換器

l  手すり

l  スロープ

l  歩行器

l  歩行補助つえ

l  認知症老人徘徊感知機器

l  移動用リフト(つり具の部分を除く)

l  自動排泄装置

l  腰掛便座

l  自動排泄処理装置交換可能部品

l  排泄予測支援機器

l  入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台 など)

l  簡易浴槽

l  移動用リフトのつり具の部分

貸与を希望する場合は、担当のケアマネジャーと福祉用具取扱事業者に相談して、貸与する用具を決定しましょう。

購入の場合は、福祉用具販売事業者と相談・製品購入のうえ、自治体に支給申請が必要です。ほかの介護サービスを利用中の場合は、ケアマネジャーにも相談が必要となるため注意してください。

居宅介護住宅改修費

居宅介護住宅改修費は、手すりの取付け、段差の解消、扉の取替えなどに要した費用に対して補助する制度です。かかった費用の原則9割(所得に応じて8割・7割)が給付されます。支給限度基準額は要支援・要介護の区分にかかわらず、生涯20万円となっています。
制度の対象となる住宅改修は以下のとおりです。

制度対象となる住宅改修の種類
● 手すりの取付け
● 段差の解消
● 滑りの防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
● 引き戸等への扉の取替え
● 洋式便器等への便器の取替え
● その他、住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

住宅改修を行なう際は、ケアマネジャー等に住宅改修が必要な理由書を作成依頼し、施工前と施工後に自治体へ申請しましょう。

3.介護と仕事を両立したいときに使える補助金制度

最後に、介護と仕事を両立したいときに使える補助金制度を2つ紹介します。

介護休業制度(介護休業給付金)

介護休業は、労働者が要介護状態にある対象家族を介護するための休業であり、介護が必要な家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。介護休業は休業開始予定日の2週間前までに書面等により事業主に申し出が必要です。

また、介護休業期間中は要件を満たせば、休業開始時賃金日額×支給日数の67%の介護休業給付金がハローワークから支給されます。介護休業給付は原則として事業主を経由して申請が必要ですので、事業所と連絡を取りながら支給申請を行ないましょう。

支払われる給付金額は、休業開始時の賃金日額や介護休業期間中の賃金の支払い状況などによって異なります。詳細は事業所またはハローワークに問い合わせてみてください。

介護休暇制度

介護休暇は、要介護状態にある家族を介護するための休暇制度です。介護休業と似ていますが、取得できる日数や取得単位に違いがあります。

介護休暇の取得可能日数は、対象家族が1人の場合は年5日、対象家族が2人以上の場合は年10日です。取得単位は1日または時間単位であり、口頭での申し出も可能なことから突発的に休暇が必要な場合にも利用しやすい制度だといえます。

休暇の申し出は各事業主に対して行ないます。また、介護休暇は年次有給休暇と別に取得可能ですが、休暇期間中が有給か無給かは会社による(無給であることが一般的)ため、休暇前に事業主に確認しておくとよいでしょう。

経済的不安に備えるなら民間の介護保険も利用しよう

ここまで、介護に使える補助制度を8つ紹介しましたが、これらの補助制度を活用しても介護費用のすべてをまかなうことはできません。介護費用の不安を減らすなら、民間の介護保険を活用するのがおすすめです。

民間の介護保険のメリット

民間の介護保険のメリットは、公的介護保険制度でカバーできない部分を補える点にあります。例えば、65歳未満の方(第2号被保険者)は特定疾病による介護状態以外は公的介護保険適用外となりますが、民間の介護保険なら、商品や契約内容によっては公的介護保険適用外の方へも一時金や年金が支払われます。

民間の介護保険は現金での給付となりますので、介護以外の生活費などへの利用も可能です。

民間の介護保険の内容は、取り扱う保険会社によって異なります。支払う保険料や受給条件などを比較しながら、自分に合った保険を選択しましょう。

民間の介護保険を検討してもよい人は?

民間の介護保険は、貯蓄が少なく、介護費用に不安がある方や、貯蓄はあるものの、より充実した介護サービスを受けたい方におすすめです。また、将来的に介護を頼める人がいない方や頼みづらい方は、民間の介護保険に加入して保険金や給付金を得ることで、介護サービスを利用しやすくなります。

自身の健康状態や経済状況などから、民間の介護保険の必要性を考え、加入の有無や加入の時期を考えてみてはいかがでしょうか。

介護に使える補助金制度を最大限活用しよう

介護には身体的・精神的・経済的な負担がともないます。国や地方自治体では、介護を支援する制度を取り扱っているため、ケアマネジャーなどと相談しながら、自身の環境に合った制度を活用しましょう。

また、介護の経済的不安に備えるなら、公的な補助金制度だけでなく、民間の介護保険を活用するのがおすすめです。
  

朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

CFP 金子 賢司

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務めるなか、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強をはじめる。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

資格:CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2023年8月22日

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