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少子高齢化社会における介護問題とは?


昨今、少子高齢化の影響により、介護に関するさまざまな問題が深刻化しています。

自分や家族の介護に備えようと考えている方のなかには、「少子高齢化社会における介護問題とは?」「介護問題が起こる背景には何がある?」などの疑問を持つ方もいるでしょう。

今から介護問題に備えるには、相談先の確認や、介護予防のための健康的な暮らし、介護費用など、元気なうちに準備をしておくことが大切です。

この記事では、介護問題の背景や少子高齢化社会における6つの介護問題、今から介護問題に備える4つの方法について解説します。

介護問題の背景には何がある?

まずは、少子高齢化社会の現状や介護問題について解説します。

高齢者の増加

総務省統計局の発表(※)によると、日本の総人口が減少しているなかで、2022(令和4)年時点での65歳以上の高齢者の人口は、3,627万人と過去最高を記録しました。高齢者が総人口に占める割合は、過去最高の29.1%を記録しています。

日本は、世界の200の国※や地域のなかでも、高齢者の人口割合が最も高い国となりました。

「2025年問題」と「2040年問題」とは

これからの介護問題を考える際、「2025年問題」と「2040年問題」は社会的な懸念材料となります。

「2025年問題」とは、団塊の世代である1947(昭和22)年~1949(昭和24)年生まれのすべての方が75歳以上になることで起こりうる、さまざまな社会的問題のことです。2025(令和7)年になると、日本の総人口の約18%が75歳以上になるとされています。

一方、「2040年問題」とは、団塊ジュニア世代である1971(昭和46)年~1974(昭和49)年生まれのすべての方が65歳以上になり、社会に大きな影響を与えると考えられる問題のことです。2040(令和22)年には、日本の人口が1億1,284万人に減少し、65歳以上の人口は全人口の約35%になると予想されています。

要介護認定者の増加と介護要員の不足

高齢者の人口増加にともない、要介護認定者の増加と介護要員の不足も懸念されています。

2022(令和4)年10月の厚生労働省老健局の発表(※)によると、要介護(要支援)の認定者数は、2000(平成12)年4月末で約218万人でしたが、2022(令和4)年3月末には約690万人と、3.2倍に増加しました。
また、厚生労働省「令和3年 第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2023(令和5)年度には、2019(令和元)年度に比べて約22万人増の約233万人の介護職員を確保する必要があると推計されています。

さらに2040(令和22)年度には、2019(令和元)年度に比べて約69万人増の約280万人の介護職員を確保する必要があると推計されています。

しかし、実際の介護職員数の推移を表した厚生労働省「令和3年 介護職員数の推移」によると、2021(令和3)年度時点での介護職員数は約215万人と、2019(令和元)年度に比べて約4万人しか増えていません。

なお、国では介護要員の確保や介護現場の革新として以下のような施策を講じていますが、要介護者または要支援者の需要を満たすまでには至っていません。

● 介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取り組みの推進
● テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化・業務負担軽減の推進
● 文書作成や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減の推進

少子高齢化社会における6つの介護問題とは

ここからは、少子高齢化社会における6つの介護問題について見ていきましょう。

1.高齢者の一人暮らし

核家族化の増加により、高齢者の一人暮らしが増加しています。内閣府の発表(※)によると、1980(昭和55)年と2020(令和2)年における、65歳以上の一人暮らしの方が人口に占める割合は、次のとおりです。
 

 

男性

女性

1980(昭和55)年

4.3

11.2

2020(令和2)年

15.0

22.1

高齢者の一人暮らしには、孤独死や認知症の進行に気付かれないリスクが存在します。家族や近所の人などとのかかわりが減り、認知症の進行に気付かれない場合、以下のようなことも考えられるでしょう。

・ 外出したまま行方不明になる
・ 火の不始末により火災を起こす
・ 服薬管理ができなくなる
・ 食生活の乱れにより健康状況が悪化する
・ 金銭トラブルなどの犯罪に巻き込まれる
・ 周囲の人たちとトラブルを起こす

2.介護難民

介護難民とは、要介護状態にもかかわらず、家庭・病院・施設などにおいて適切な介護サービスを受けたくても受けられない65歳以上の高齢者のことです。介護難民のおもな要因には、「要介護認定者の増加」「介護職の人手不足」などが挙げられます。

前述のとおり、要介護(要支援)の認定者数は2022(令和4)年3月末時点で約690万人と、約20年で3.2倍に増加しています。今後、団塊の世代や団塊ジュニア世代の高齢化が進むことで、介護の需要過多の状態もさらに進むと想定されるでしょう。

公益財団法人介護労働安定センターの調査結果(※)では、介護事業所全体における人材の過不足状況について「過剰(0.4%)」、「適当(36.6%)」の一方、「大いに不足(8.5%)」「不足(21.5%)」「やや不足(33.0%)」と回答した「不足感」の合計は、63.0%となりました。

職種別の不足感としては、「訪問介護員」が80.6%で最も高く、次に「介護職員」が64.4%と続いています。

また、介護を必要とする方が介護施設に入居できず、家族が介護を担当する場合、介護離職をしなければならないこともあるでしょう。介護離職では、介護者の経済的・精神的・肉体的負担、キャリア喪失などの問題が考えられます。

3.老老介護・認認介護

「老老介護」とは、65歳以上の高齢者が65歳以上の高齢者の介護をすることです。また、「認認介護」とは、認知症の方が認知症の方の介護をすることを指します。

老老介護や認認介護の要因には、以下が挙げられます。

・ 医療の進歩による平均寿命の延長(平均寿命と健康寿命の差の拡大)
・ 核家族化や人口減少などにともなう生活様式の変化

年次が進むにつれ、夫婦のみの世帯や、親と未婚の子のみの世帯は増加し、三世代世帯は減少傾向にあるため、介護における問題は今後も増えていくでしょう。

4.高齢者への虐待

近年、家庭内や介護施設における高齢者への虐待が大きな問題になっています。

養介護施設従事者※などによる虐待判断件数は、2021(令和3)年度で739件(前年比24.2%増)、養護者(高齢者の世話をしている家族・親族・同居人など)による虐待判断件数は1万6,426件(前年比4.9%減)でした。

介護老人福祉施設など養介護施設又は居宅サービス事業など養介護事業の業務に従事する者

出典:厚生労働省 令和3年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果(資料1)

養介護施設従事者などによる高齢者の虐待判断件数は、増加傾向です。このような状況を鑑み、厚生労働省老健局長から都道府県知事へ、以下4つの事柄が通達されています。

1. 調査結果を踏まえた適切な対応
2. 高齢者虐待防止に向けた体制整備
3. 財産上の不当取引による高齢者の被害への対応
4. 高齢者権利擁護等推進事業の活用

少子高齢化がすすむと、ますます上記のような事柄が増える可能性があります。

5.成年後見人とのトラブル

成年後見人とは、認知症・知的障害・精神障害などを要因とする、判断能力が不十分な方の保護や支援をする人のことです。成年後見人は、判断能力が不十分な方が安心して暮らせるように、契約などの締結や取り消し、預貯金や不動産などの財産管理を行ないます。

支援を受ける方と成年後見人とのおもなトラブルには、成年後見人による財産の不正流用などの不正行為が挙げられます。成年後見人の不正行為によるトラブルを減らすには、以下のような対策があります。

・ 成年後見人の支援体制や、知識不足・理解不足を補う研修体制を強化する
・ 弁護士、税理士、司法書士など親族以外の人に成年後見人を任せる

6.介護費用の捻出

内閣府の発表(※1)によると、高齢者世帯の所得階層別分布では、150万円以上200万円未満の世帯が最も多くの割合を占めています。

また、公益財団法人生命保険文化センターによる調査(※2)では、「自分の介護に対する不安の内容」として、「家族の肉体的・精神的負担」が上位となり、次いで「公的介護保険だけでは不十分」「家庭の経済的負担」との回答が続きました。

要介護の度合いが高くなったり、介護の期間が長引いたりすると、介護費用の負担も大きくなります。低所得世帯が多く、家族の経済的負担が増えてしまう世帯も多いことから、介護費用の問題には十分な備えが必要です。

今から介護問題に備えるには?

最後に、今から介護問題に備えるための対策を4つ紹介します。

介護の相談先を確認しておく

介護が必要になったのちに相談先を探すのは、大きな負担がかかります。元気なうちに、相談先や利用できるサービス、介護保険制度など、介護に関する知識を身に付けておきましょう。介護に関する相談ができるおもな公共機関は、次のとおりです。

・ 市区町村の福祉課
・ 地域包括支援センター
・ 社会福祉協議会
・ 居宅介護支援事業所

元気なうちに家族と話し合いをする

介護が必要になる前に、自分の意思や情報を、家族などの周りの人に伝えておきましょう。事前の話し合いで伝えておくべき内容には、以下が挙げられます。

・ 健康について(健康状態・かかりつけ医・既往歴・服薬など)
・ 将来について(介護の意向・延命の選択・お墓や葬儀に対する考え・家の管理など)
・ お金について(老後資金や介護資金・保有資産・加入している生命保険・相続など)

家族と話し合いをすれば、お互いに介護に関する知識が自然と身に付いたり、心構えができたりするため、いざ介護が必要になった際も慌てずに対応できるでしょう。

適切な食事・運動・社会参加を心がける

疾患や加齢により、精神的・身体的な機能が徐々に低下する状態を「フレイル」といいます。要介護認定者の多くは、フレイルを経て要介護状態に陥るといわれているため、要介護状態にならないためには、フレイルを防ぐことが大切です。

厚生労働省では、フレイル予防として以下3つのポイント(※)を掲げています。

・ 栄養:バランスのとれた食事を1日3食摂る、口腔ケアにも気を配る
・ 身体活動:ウォーキングやストレッチなど、今より10分多く体を動かす
・ 社会参加:就労、趣味、ボランティアなど自分に合った活動で外出する機会を増やす

このように、介護予防では、適切な食事・定期的な運動・他者とのコミュニケーションを積極的にとるなど、フレイルを防ぐ心がけが大切です。

介護費用に備える

介護費用は、介護をする場所(自宅または施設)・施設の種類・要介護度などによって異なります。公益財団法人生命保険文化センターの発表(※)によると、公的介護保険制度の自己負担費用を含む介護費用の平均額は以下のとおりです。

・ 介護に要した一時的な費用の平均:74万円
・ 介護に要した平均月額:8万3,000円

介護費用を考える際、まずは預貯金・株式・金銭信託・不動産などで補えるかどうかを検討しましょう。保有資産で介護費用を補えないと予想される場合は、民間の介護保険に加入しておくのも一つの方法です。

介護問題に対しては早めの準備が大切

高齢化社会における介護問題の背景には、高齢者の増加や、それにともなう要介護認定者の増加、介護要員の不足などが挙げられます。

今後の日本では、団塊の世代や団塊ジュニア世代の高齢化により、介護問題の深刻さが増す可能性も十分に考えられるでしょう。

介護問題に対しては、元気なうちに早めに準備をすることが重要です。
 

朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

赤上 直紀

元銀行員。住宅ローンを通じて、多くのお客様のライフプランニングに携わる。住宅ローンは人生で一番の買い物と言われているため、慎重に契約すべきだと考える。現在は、編集者として金融機関を中心に、ウェブコンテンツの編集・執筆業務を行う。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士

公開日:2023年8月9日

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