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脳血管性認知症とは?主な症状や進行・原因・診断・治療まで詳しく解説

認知症には、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、脳血管性認知症などがあり、それぞれ原因や症状、進行の特徴、治療法、予防法などが異なります。本記事では、脳血管性認知症の症状や進行、原因、診断、治療、介護などについて解説します。

脳血管性認知症の特徴

脳血管性認知症とは、脳の血管の病気によって引き起こされる認知症のことです。認知症の約20%を占めており、アルツハイマー型認知症の次に患者が多いといわれています。また、アルツハイマー型認知症と比べて男性が発症しやすい傾向があり、その差は女性の約2倍です。

*出典厚生労働省「認知症の有病率」第19回 新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チームより(平成23年)

脳血管性認知症の主な症状

脳血管性認知症では、主に次の症状が現れます。

記憶障害

記憶障害とは、一度記憶した出来事を忘れてしまう状態です。例えば、財布を置いた場所や食事をとったことなどを忘れます。

見当識障害

見当識障害とは、今いる場所や今の時刻、家族や知人などの認識ができなくなる状態です。進行すると、自分の名前がわからなくなり、最終的に自分はどこの誰で、どのような人生を歩んできたのかなど、自分が何者なのかを思い出せなくなります。

実行(遂行)機能障害

実行(遂行)機能障害とは、計画的な行動ができなくなる状態です。例えば、レシピがある料理を作れない、予定外のことが起きると対処できないなどの症状が現れます。

脳血管性認知症の進行

脳血管性認知症は進行するため、早期発見・早期治療が重要です。
初期段階は記憶障害によるもの忘れがみられます。また、簡単な日常動作ができなくなったり、物の使い方がわからくなったりする場合もあります。例えば、水が入ったコップが目の前にあっても、それを飲むものと認識できません。そのため、コップに手を入れて逆さに向けてしまうこともあります。

さらに、言葉を話したり聞いたりできなくなるほか、読み書きにも影響が現れ始めます。そして、これらの症状に対して本人がいらだつことでストレスを溜め込んだり、周りの人が不思議に感じたりするのです。

中期以降では、症状の急激な悪化は珍しく、心身のリハビリや薬の使用などによって改善が期待できます。ただし、高齢者の脳血管障害は、小さな梗塞が自覚症状なく進行し、心身の機能が少しずつ低下する場合があります。

脳血管性認知症発症の原因

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血など脳血管障害によって引き起こされます。脳血管が障害を受けた結果、周りの神経細胞にダメージが及び、記憶や見当識などに関する機能が低下します。

神経細胞がダメージを受けるメカニズムについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

脳には血管が細かく張り巡らされており、神経細胞へ絶えず栄養や酸素を供給しています。しかし、脳の血管が詰まる脳梗塞や、脳の血管が破れる脳出血が起きると、神経細胞へ栄養や酸素を十分に供給できなくなり、神経細胞が破壊されてしまうのです。

脳血管性認知症の診断

脳血管性認知症の診断には、脳のCTやMRIの検査が必要です。これらの検査で障害を受けている部位を確認し、認知症の症状と照らし合わせたうえで診断されます。また、脳の血流が低下している場合も同様の症状が現れるため、必要に応じて血流量シンチグラフィーで血流量を確認します。

脳血管性認知症の治療

脳血管性認知症は、原因となっている脳血管障害を治療することが先決です。そのうえで、起きている認知機能障害や周辺症状を和らげる薬を使用します。また、脳の活性化を目的に、一緒に歌う、音楽を聴く、本を読むなどのリハビリを行うことも有効です。

脳血管性認知症の平均余命

日本神経学会の報告によると、脳血管性認知症の発症後の平均余命は男性5.1年、女性6.7年とされています。脳血管障害を再発すると症状が急激に進行する恐れがあるため、周りの家族が本人の症状の変化を注視しておくことが大切です。

*出典日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」

脳血管性認知症の介護

脳血管性認知症が進行すると自宅での介護が困難になる可能性があります。見当識障害によって食事をとれなくなれば、食事の介護が必要です。正しい方法で食べさせなければ誤嚥する危険性もあります。症状が進行すると24時間体制での介護が必要になる可能性もあります。家族だけでの対応が難しければ、ヘルパーの利用はもちろん、必要に応じて介護施設への入所も検討しましょう。

脳血管性認知症の予防

脳血管性認知症は、脳血管障害によって引き起こされるため、糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満などのリスク要因を取り除くことが重要です。また、喫煙やストレス、睡眠不足、運動不足なども脳血管障害のリスクを高めます。

定期検診で生活習慣病を発症していないか確認し、もし発症していれば早期に治療を始めることが大切です。生活習慣病の完治は難しく、生活習慣の改善や薬などでコントロールします。薬の飲み忘れ、生活習慣の乱れなどは症状の悪化を招き、脳血管障害のリスクを高めるため、家族の協力のもとで治療を進めましょう。

村上友太〔医師〕

医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事。現在、東京予防クリニックで勤務。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医、抗加齢医学会専門医。
日本内科学会、日本認知症学会などの各会員。

公開日:2023年2月1日

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