認知症について知る

認知症患者の割合はどれくらい?
病型の特徴や似ている症状


年齢を重ねるごとに、認知症への不安を感じるようになる人もいるでしょう。そもそも、認知症になる人はどのくらいいるのでしょうか。

ひとくちに認知症といってもさまざまな種類があり、それぞれの認知症患者数の割合は異なります。また、認知症と勘違いされやすい症状もあるため、違いを理解しておくことが大切です。

この記事では、日本の高齢者人口における認知症患者数の割合や、種類別の患者数の割合などを解説します。認知症発症前に行える対策も紹介するので、不安を感じている方はぜひ参考にしてください。

日本の高齢者人口と認知症患者数の割合

日本の総人口のうち、65歳以上の高齢者人口は3,627万人といわれており、その割合は29.1%にあたります(2022年9月推計)。総人口は前年よりも減少している一方で、高齢者人口は前年よりも6万人増加しました。
また、「平成29年度高齢者白書」によると、2012年の時点では65歳以上の認知症患者数が高齢者人口の15%(462万人)でしたが、2025年には20%が認知症になると推計されています。これは、およそ5人に1人が認知症になるという計算です。
これらのデータを見る限り、年齢を重ねるごとに認知症リスクは高まる可能性があり、他人事のようには思えない状況といえるでしょう。

そもそも認知症とは

認知症に似ている症状として、加齢による物忘れや軽度認知障害が挙げられます。ここでは、認知症による物忘れと加齢による物忘れの特徴、認知症と軽度認知障害の違いを解説するので確認しましょう。

認知症と加齢による物忘れの違い

まずは、認知症による物忘れと加齢による物忘れの違いを解説します。自身の症状に不安を感じている方は、それぞれの違いを理解することが大切です。

認知症による物忘れの特徴

認知症による物忘れは、記憶する機能の障害により起こります。自身が経験した出来事そのものを覚えられないため、知人と約束したことを忘れてしまう、大事なものをしまったこと自体覚えていないといった症状が出現するのが特徴です。

認知症によって物忘れの症状が出現している人は、物忘れの自覚がありません。忘れたことを指摘されたりヒントをもらったりしても思い出せない場合は、認知症による物忘れの可能性が高いでしょう。

加齢による物忘れの特徴

脳の機能は、60歳あたりから徐々に低下するのが一般的です。そのため、記憶力や適応力などが衰えることは、自然な老化現象の一つと考えられます。

例えば、時間をかけたりヒントを得たりして思い出せる場合や、物忘れの自覚がある場合は、加齢による物忘れの可能性が高いでしょう。

また、加齢による物忘れがある人には、学習能力があります。そのため、新しいことを覚えられる状態であれば、加齢による物忘れであると考えられます。

認知症と軽度認知障害(MCI)の違い

正常な状態と認知症の中間といえるような状態のことを、軽度認知障害(MCI)といいます。認知機能の低下は確認できますが、日常生活に大きく影響するほどではありません。そのため、自身が軽度認知障害であることに気付いていないケースもあるでしょう。

軽度認知障害の症状があるからといって、必ず認知症になるとは限りません。症状の進行を少しでも抑えるためには、早期に適切な対策を行なうことが大切です。

認知症の種類別の患者数割合

認知症は、発症する原因などの違いによって、おもに4つの病型に分類されています。

・ アルツハイマー型認知症
・ 脳血管性認知症
・ レビー小体型認知症
・ 前頭側頭葉変性症(前頭側頭型認知症)

上記は「4大認知症」と呼ばれているものです。このほかには、アルコール性認知症や混合型認知症などを発症するケースもあります。

認知症の種類のうち、発症する割合が高いものはどの種類なのでしょうか。ここでは、厚生労働省老健局が公表している「認知症施策の総合的な推進について」のデータをもとに、種類ごとの割合や特徴を解説します。
認知症の種類別患者数割合

参考:厚生労働省老健局「2019年 認知症施策の総合的な推進について」

※ データをもとに朝日生命が作成

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、アミロイドβというたんぱく質が脳の神経細胞に蓄積したことで神経細胞が破壊され、脳が委縮して発症します。認知症のなかでアルツハイマー型認知症が占める割合は67.6%と、最も高い割合です。

アルツハイマー型認知症を発症すると、おもな症状として記憶障害が出現します。初期段階で適切な治療を行なえば進行を遅らせることが可能なため、早期対応が重要といえるでしょう。

通い慣れている道で迷子になる、日常的に行なっていた家事などの手順を忘れてしまうといった症状がある場合には、アルツハイマー型認知症の疑いがあるかもしれません。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳血管がさまざまな原因により障害されることによって脳の血流が阻害され、脳の一部が壊死することで発症します。認知症のなかで占める割合は、19.5%です。

脳出血や脳梗塞などの病気は、糖尿病や高血圧といった生活習慣病が原因で生じるケースが多いと考えられます。したがって、生活習慣を見直すなどして予防することが大切です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、レビー小体という特殊なたんぱく質が脳内に蓄積し、神経細胞が破壊されて発症する認知症です。神経細胞が壊れるため、命令が伝達されにくい状況になります。認知症のなかでレビー小体型認知症が占める割合は、4.3%です。

レビー小体型認知症を発症すると、体のこわばりや手足の震え、歩行障害などの症状が出現します。転倒の危険性が高いため、歩行時などには十分注意しなければなりません。また、幻視や睡眠時の異常行動なども症状の一つです。

前頭側頭変性症(前頭側頭型認知症)

前頭側頭変性症は、前頭葉や側頭葉で神経細胞が減少し、脳が委縮することで発症します。認知症全体のうち、前頭側頭変性症が占める割合は1.0%です。

前頭側頭変性症を発症すると、万引きなどの反社会的な行動に出たり、性格が極端に変化したりするような症状が出現します。これらの症状は認知症によるものですが、精神疾患と間違われることもあるため注意が必要です。

その他の認知症

上記の4大認知症のほかにも、アルコール性認知症や混合型認知症を発症するケースもあります。4大認知症に該当しないものの割合は、全体の7.6%です。

慢性硬膜外血腫や正常圧水頭症などにより生じる認知症の場合は、適切に治療することで症状の改善が期待されます。ただし、アルコール性認知症の方はアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症も発症しているケースが多いため、治療が難しくなる可能性があるでしょう。

認知症を発症する前に行なうべき対策

認知症の原因などを知ることにより早期対策が行え、進行を抑制できる可能性があります。したがって、正しい知識を身に付け、原因への理解を深めることが大切です。個人差はありますが、認知症は年齢を重ねるとともに徐々に始まるケースが多いことから、40代から対策を始めるとよいでしょう。

アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症では、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病が危険因子と考えられています。バランスの取れた食事や適度な運動を日常的に行なうことで、認知症の発症リスクを軽減する効果が期待できるでしょう。

認知症を発症すると、症状の進行により一人暮らしが難しくなり、介護を要する可能性が高まります。症状の進行度合いには個人差があるため、公的制度では補いきれない状況も考えられるでしょう。介護期間が長引いたり重症化したりする可能性を考慮して、民間保険への加入も検討しておくと安心です。

認知症の予防について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

認知症予防のポイント

認知症への理解を深めて可能な対策を講じることが大切


日本の高齢者人口や認知症患者数の割合は、今後も上昇する可能性があります。患者数の割合が高い種類はアルツハイマー型認知症で、初期段階の適切な治療がその後の症状に大きく影響すると考えられるでしょう。

認知症への理解を深めることで、発症を遅らせたり進行を緩やかにしたりすることが期待されます。ただし、症状には個人差があるため、万が一の事態に備えておくことが大切です。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年8月22日

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