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認知症の方が入所できる施設を解説!
入所を考えるタイミングはいつ?


認知症が進行すると、本人や家族は自宅での生活に不安を感じることがあります。そのようなときに検討したいのが、施設への入所です。

認知症ケアに対応した施設は、認知症の方が安心して生活するための重要な役割を果たしています。しかし、「認知症の方が入所できる施設について詳しく知らない」という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、認知症の方が入所できる施設についてわかりやすく紹介します。また、施設選びのポイントや入所を考えるタイミングについても解説するので、ぜひ参考にしてください。

認知症の方の施設入所を考えるタイミングは?

認知症の方の施設入所を検討するおもなタイミングを3つ紹介します。

介護者の負担感が大きくなったとき

認知症の方は、介護期間が長い傾向があり、年齢の経過とともに本人だけでなく介護者の体力も低下していきます。

長い介護生活により、介護者の精神的・身体的負担は少しずつ蓄積されていくのが実情です。介護者の負担が増すと、余裕を持って介護を行なうことが難しくなるケースがあります。

負担の感じ方には個人差がありますが、「介護に疲れた」「介護の負担が大きい」と感じ始めたときが施設入所を検討する目安といえるでしょう。

介護者がそばにいないことで危険があるとき

認知症の病状が進行すると判断力や理解力が低下し、重大な事故や事件が発生する可能性が高まります。

例えば、「鍋を火にかけたまま放置して火事を起こしてしまう」「夜中に1人で外出して交通事故に遭ってしまう」というようなケースです。在宅介護では、重大な危険から守るために介護者は常に近くで見守る必要があります。

ですが、昼夜を問わず見守りすることは多くの介護者にとって大きな負担といえるでしょう。このように、介護者が常にそばにいる必要性が出てきたときは、施設入所を考えるタイミングととらえましょう。

自宅での生活を続けるのが難しいと感じたとき

認知症を患っている本人が認知・身体機能の低下を実感し、自宅での生活に不安を抱くケースもあります。

具体的には、「自宅に段差が多く転倒のリスクが高い」「一人暮らしで常に見守れる介護者がいない」などの不安です。

本人が「自宅での生活を続けるのが難しい」と感じて施設への入所を望んだ場合、家族が納得しにくいこともあるでしょう。ですが、本人が感じている認知症の不安を理解してあげることが大切です。

認知症の方が自宅生活の継続に不安を抱いたときには、施設入所の検討を始めましょう。

認知症の方が入所できる施設の種類と費用相場

認知症の方が入所できるおもな施設は、グループホーム・特別養護老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホームの4種類です。ここでは、各施設の概要や費用の相場を紹介します。

グループホーム

グループホームは、認知症の方を対象とした家庭的な環境の施設で、1ユニットの定員は5~9人と定められています。ユニットとは、複数の個室・リビング・キッチンなどで構成される生活空間です。

少人数での共同生活を行なうグループホームでは、入所者ができるかぎり自立した生活を送れるよう、ケアの専門職員によって配慮されています。

また、グループホームは、住み慣れた地域での生活を支える地域密着型サービスの一つです。そのため、原則としてグループホームと同じ市区町村に住んでいない場合は利用できません。

費用の相場は、初期費用が15万円程度、月額費用が10万~15万円程度となっています。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは、介護が必要な高齢者のための施設で、介護老人福祉施設とも呼ばれています。

入所の対象となるのは原則として要介護3以上の方です。ただし、認知症の方は要介護1・2の方でもやむを得ない事情で特養以外での生活が困難な場合、特例的に入所が可能なことがあります。

特別養護老人ホームは、多人数のケアを前提とした「従来型」と、少人数のケアを基本とした「ユニット型」の2つに大別されます。

認知症の方は、多人数での共同生活を苦手とする傾向があります。ご本人の様子を見て、どちらが合うかをしっかり検討しましょう。

特別養護老人ホームでは初期費用がかからず、月額費用の相場は10万~15万円程度となっています。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅とは「高齢者の単身・夫婦世帯」に向けた賃貸住宅で、高齢者が生活しやすいようバリアフリーに対応しています。

生活相談員が日中(事業者によっては終日)常駐しているため、安否確認や生活相談の体制が整っているのが特徴です。

サービス付き高齢者向け住宅は「一般型」と「介護型」の2種類です。「一般型」は、外部の介護サービス事業者と個別に契約する必要があります。一方「介護型」は、施設に常駐するスタッフから介護サービスを受けることが可能です。

「介護型」のサービス付き高齢者向け住宅のなかには、認知症の方の介護に対応している施設もあります。

費用の相場は、初期費用が15万~25万円程度、月額費用が13万~25万円程度です。

有料老人ホーム

有料老人ホームは株式会社や社会福祉法人などが運営する高齢者向け施設で、「住宅型」・「介護付き」・「健康型」の3種類に大別できます。

認知症ケアに対応している有料老人ホームは、「住宅型」と「介護付き」がほとんどです。ただし、「住宅型」の場合は外部事業者の介護サービスを利用する必要があります。

また、認知症の方の受け入れ体制とサービス内容は施設ごとに異なるため、事前に確認しておきましょう。

有料老人ホームの費用相場は、初期費用が0円から数百万円、月額費用もばらつきが大きい傾向にあります。

認知症の方が施設に入所するメリット・デメリット

認知症の方の施設入所にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下でおもなものを紹介します。

メリット

認知症の方が施設に入所する最大のメリットは、介護者の負担軽減です。本人や家族が納得できる施設に入所できれば、介護者の負担が軽減され、本人・介護者それぞれの生活が安定します。

また、施設では家族以外の人とのかかわりが増え、認知症の専門的なサポートを受けることも可能です。施設で生活すること自体がリハビリとなり、認知症の症状を和らげたり進行を遅らせたりする効果が期待できるでしょう。

デメリット

本人が集団生活を苦手と感じる場合は、施設での生活がストレスになる可能性があります。長年自宅で暮らしてきた方が施設へ入所することで、苦痛を感じるケースもあるでしょう。

また、介護者の負担が軽減できる反面、施設の入居費用などで経済的な負担が大きくなる場合もあります。条件や環境の整った施設であればあるほど費用が高額になるでしょう。そのため、入所を検討する際はかかる費用について施設へ確認し、十分に検討することが大切です。

認知症の方が施設に入所するまでの流れ

認知症の方の施設選びから、実際に入所するまでの一般的な流れを解説します。

施設を選ぶ

まずは、予算やサービス内容、立地条件などの情報をもとに、認知症の方が入所する施設を選びます。

すでに介護サービスを利用している場合は、担当ケアマネジャーへ施設入所について相談するとスムーズです。担当ケアマネジャーは、本人に合いそうな施設の紹介や施設との連絡調整を行なってくれます。

担当ケアマネジャーがいない場合は、雑誌やインターネットで情報を収集し、興味のある施設の資料を請求してみるとよいでしょう。

最終的な判断は本人や家族が行なうため、担当ケアマネジャーの有無にかかわらず施設の基本的な情報を十分に把握しておくことが大切です。

見学する

気になる施設をいくつかピックアップできたら、施設見学に行きましょう。

施設見学ではスタッフやほかの入所者の様子、施設の実際の雰囲気を知ることが可能です。本人に適した施設を選ぶために、いくつかの施設を見学して比較検討することをおすすめします。

見学の際には、事前に質問したい事柄をメモしておくと聞き逃しがなく安心です。

見学後に余裕を持って見返せるよう、施設の様子を写真に撮っておくのもよいでしょう。ただし、写真の撮影は施設側の許可を得てから行なうのがマナーです。

体験入所を行なう

入所を前向きに考えたい施設が見つかったら、体験入所を行ないます。体験入所の実施の有無や料金は施設によって異なるため、家族や担当ケアマネジャーから施設の担当者に問い合わせましょう。

体験入所は必須ではありませんが、契約前に数日間生活することで、本人に合った施設なのかを判断しやすくなるはずです。本人が快適に過ごせるか、食事は好みに合うかといった判断材料を集めるには体験入所がよいでしょう。

ただし、複数の施設で体験入所を行なった場合、入所する施設を選びきれなくなってしまう可能性があります。施設を決められない事態を防ぐため、体験入所は本命の施設に絞って行ないましょう。

契約する

入所する施設を決めたら、必要書類を用意して契約を結びます。必要書類は施設によって異なりますが、以下の書類提出を求められるのが一般的です。
診療情報提供書 主治医が発行する書類で、本人の日常生活上の注意点や施設側に把握してほしい情報などが記載されています。
健康診断書 医療機関で健康診断を受けることで発行される書類で、取得には2~3週間程度かかります。
契約時は、「入居契約書」「重要事項説明書」「管理規程」といった書類の説明があります。

費用に関するトラブルを防ぐためにも、基本的な費用以外の必要費や退去後の原状回復費など、契約前に細部までチェックすることが大切です。必ず、書類の説明に納得してから署名・捺印をしましょう。

また、「重要事項説明書」には、施設で提供されるサービスやスタッフ体制などについて明記されています。不明点がある場合は、必ず質問して疑問を解消しましょう。

認知症の方の施設選びのポイント

認知症の方が入所施設を選ぶ際には、以下の2つのポイントを押さえておきましょう。

本人と家族の思いを整理する

施設を選ぶときには、施設に入所する本人と家族の希望を混同しないよう整理することが重要です。

片方の希望だけを優先すると、本人と家族のどちらかに精神的・経済的負担が生じてしまうことがあります。本人や家族の思いを箇条書きにするなどして整理すると、お互いの希望を知りやすくなるでしょう。

将来を見据えて考える

認知症は進行性の疾患です。病状が進行した場合に施設が対応できるかは、施設選びの重要なポイントとなります。

認知症が進行した場合には入所を継続できない施設もあり、退所後どのように対応するのかを考えておくことが必要です。病状の進行後の対応は、担当ケアマネジャーに相談するとよいでしょう。

認知症の方が入所できる施設の概要を理解しておこう


認知症の方の施設入所を検討するタイミングは、介護者の負担感が大きくなったときや常時の見守りが必要になったときです。

認知症の方が入所できるおもな施設は、グループホーム・特別養護老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホームの4種類があります。

施設の生活そのものが認知症のリハビリにつながるというメリットがある一方、条件や環境によって費用の負担増や本人に合わないというデメリットもあります。

入所施設について理解することで、入所を検討するタイミングが来たときに慌てずに行動できるはずです。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

AFP 齋藤 彩

急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2023年8月9日

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