認知症について知る

認知症テスト「長谷川式スケール」の実施方法や行なう際のポイント


年齢を重ねるごとに、認知機能の低下が気になり始める人は多いかもしれません。
中には、病院で診察を受けるほどではなくても、自身で確認する方法があればよいのにと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

医療機関でも採用されている「長谷川式スケール」は、自宅でも実施できる認知症テストの一つです。このテストを行なうことが、医療機関を受診するきっかけにもなるでしょう。

この記事では、認知症テスト「長谷川式スケール」の概要や実施方法、テストを行なう際のポイントを解説します。
認知症に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

認知症テスト「長谷川式スケール」とは

ひとくちに認知症テストといっても、さまざまなテストがあります。今回紹介する長谷川式スケールとは、どのような手法なのでしょうか。ここでは、長谷川式スケールの特徴、長谷川式スケールと他のテストとの違いを紹介します。

長谷川式スケールは認知症の簡易検査法

長谷川式スケール(改訂 長谷川式認知症スケール(HDS-R))は、精神科医である長谷川和夫氏が開発した認知機能検査です。
長谷川式スケールを使用することで、限られた環境下でも医師が効率的かつ公平に診断することが可能になりました。

長谷川式スケールは信頼性が高く、国内にある多くの医療機関で使用されています。所要時間が短いことや、用意しなければならないものが少ないことから、取り組みやすい検査といえるでしょう。また、認知機能のなかでも、記憶力の評価を行なう項目で構成されていることも特徴です。

長谷川式スケールと他のテストを比較

認知機能を評価する方法としては、長谷川式スケール以外にも以下のような手法が採用されています。

・MMSE(ミニメンタルステート検査)
・DASC-21(地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート)
・CDT(時計描画テスト)
・MoCA-J(日本語版Montreal Cognitive Assessment)
・RBMT(リバーミード行動記憶検査)

MMSEも古くから採用されている手法であり、記憶力の評価を重視する検査です。MMSEは失語や麻痺など、症状によっては適さない手法となるため、その際は長谷川式スケールを検討するとよいでしょう。

DASC-21は、軽度認知症における生活機能障害を検出しやすいツールです。原則として、研修を受けた専門の職員が実施します。

CDTは、空間的広がりの認知と構成能力を評価する方法です。年齢の影響を受けにくいことから、自動車運転免許更新でも認知機能テストとして採用されています。

MoCA-Jは、さまざまな言語に翻訳されている認知機能検査の日本語版です。軽度認知機能障害の発見、スクリーニングを主たる目的とした検査です。

RBMTは日常記憶に関する検査であり、軽度認知機能障害の発見につながる可能性もある手法です。ただし、検査を行なうには慣れが必要なため、導入に消極的な現場もあるようです。

以上のことを踏まえると、すべて口頭で行えて誰でも実施できる長谷川式スケールは、認知機能の早期対応に大きく貢献する手法といえるでしょう。

認知症テスト「長谷川式スケール」はどのように行なえば良い?

長谷川式スケールは、医療機関を受診する前に自宅で行なうことも可能です。ここでは、テストを自宅で行なう際に用意するものや、テストの設問を紹介します。

用意するもの

テストを実施する際は、筆記用具とテストの評価用紙を用意します。また、テストで使用する品物を5つ用意します。例えば、時計やハサミ、皿、鍵など、互いに関連性がなければ身近なもので構いません。

テストには年齢を確認する設問があるため、事前に年齢を確認できるものも用意しておきましょう。なお、テストの開始前に本人に確認することのないように注意してください。

内容

実施するテストの設問は、以下のような内容です。

1. 年齢はいくつですか?
2. 今日の年月日、曜日は?
3. 今いる場所はどこですか?
4. 今から言う3つの言葉を覚えておいてください。
5. 100から7を順番に引いてください。
6. 今から言う数字を逆から順に言ってください。
7. 先ほど覚えてもらった言葉を言ってください。
8. 今から5つのものを見せます。それを隠すので何があったか答えてください。
9. 知っている野菜の名前をできるだけ多く答えてください。
テストは30点満点で構成されており、20点以下の場合は認知症の疑いがあるとされています。

認知症テスト「長谷川式スケール」を行なう際のポイント

前述したように、長谷川式スケールは自宅で実施することも可能です。ただし、自宅で実施する際には、正しい結果を出すために注意すべきことがあります。ここでは、自宅で行なう際のポイントを解説するので、実施前に確認しておきましょう。

テストの実施に適した環境を整える

周囲に人がいる場所や人の出入りが多い環境では、設問に集中できない可能性があります。また、テレビの音なども、気が散ってしまう原因になるでしょう。
正しい結果を導き出すためには、リラックスした状態でテストを受けられる環境が必要です

また、検査を受けること自体が、本人にとって大きなストレスになる可能性があります。そのため、強制されるような印象を与えないことも大切です。

体調が万全な状態で実施する

耳の聞こえが悪い状況でテストを実施すると、設問を聞き間違えたり内容を勘違いしたりする可能性があります。そのため、設問をゆっくり読むなど、耳の状況に合わせて実施することが大事です。

また、認知機能は精神状態に左右される可能性があります。正しい評価を得るためには、精神が安定している状態で実施することが大切です。うつ状態などが疑われる際は、早めに医療機関を受診しましょう。

認知症テスト「長谷川式スケール」における注意点

テストを実施するにあたって、いくつか知っておきたい点があります。正しい評価を得るためにも、実施前に確認しておいてください。

結果がすべてではない

認知症の人がテストを受けた場合でも、高得点が出るケースもあります。「点数が低い=認知症」と診断する根拠にはならないのです。あくまでもテストは補助的なものと認識し、日常の変化を見守るようにしてください。

初期段階で記憶障害が出現しにくい病型「前頭側頭型認知症」「レビー小体型認知症」においては、検査結果の感度が良好でない可能性もあります。また、認知症でなくても、体調や気分によって点数が低くなるケースもあることを理解しておきましょう。

何度も行なうと正確な判断が難しくなる

何度もテストを行なってしまうと、学習効果により設問内容を覚えてしまい正しい評価が得られなくなる可能性があります。そのため、事前練習や短期間で複数回にわたって実施することは避けたほうがよいでしょう。

複数回テストを受けている場合は、学習効果が生まれていないか確認することが大切です。内容を覚えてしまっているようであれば、他の認知症テストを試してみることも検討してみてはいかがでしょうか。

長谷川式スケールで認知症の疑いがあると判明したら何をすれば良い?

長谷川式スケールによって認知症の疑いがあると判明した場合、どのように行動すれば良いのでしょうか。症状が出現して判断力が低下する前に、できることから取りかかりましょう。

医療機関を受診する

認知症は、早期の発見と対応により進行を緩やかにできる可能性があります。治療を始めるためには正しい診断を受ける必要があるため、まずは医療機関を受診することが重要です。

そもそも医療機関では、生活歴や脳画像検査など、さまざまな検査結果の総合評価で診断します。必要に応じて他のテストを実施する可能性もあるため、より自身の症状や進行度合いが明確になるかもしれません。

症状が悪化する可能性を考慮して備える

症状が悪化した場合、家族で対応するのが難しい場面も出てくるでしょう。このような状況を想定し、本人の意思を尊重しつつ、施設への入所を検討すべきか家族で話し合うことが大事です。

なお、認知症になると、通院や施設の利用で多額の費用がかかります。経済的負担を軽減するためには、認知症保険などへの加入も検討してみてはいかがでしょうか。ただし、診断されてからでは加入が難しい保険もあるため、早めに備えておくと安心です。

認知症テストで疑いが判明したら早めに医療機関を受診しよう


「長谷川式スケール」は、認知症の簡易検査法として多くの医療機関で使用されている手法です。自宅でも実施できるため、認知症の早期発見にも貢献するでしょう。

ただし、長谷川式スケールで正しい評価を得るためには、落ち着いて受けられるように環境を整えることが大切です。また、テストの結果はあくまでも参考としておき、日常の変化を見落とさないように注意してください。

認知症は、早期発見によって適切な対応を行なえば、症状を緩やかにすることが可能です。長谷川式スケールで認知症の疑いが判明したら、早めに医療機関を受診しましょう。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年8月4日

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