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認知症になると顔つきが変わる?特徴や変化の原因を解説

認知症になると、生活が単調になりやすく、外的刺激が減り、顔つきや表情に変化が現れる場合があります。また、アパシーや抑うつといったBPSDによっても、表情が乏しくなったり、悲しい・暗い表情になったりすることがあります。

認知症のリスクを低減するには、レクリエーションや表情筋トレーニングなどを行なって、笑顔を増やすことが大切です。

この記事では、認知症の方に見られる顔つきの特徴や顔つきが変わる原因に加えて、認知症リスクを低減する「笑顔」を増やす方法について解説します。


認知症の方に見られる顔つきの特徴とは?

まずは、認知症になった方に見られる顔つきの特徴を確認していきましょう。

認知症になった方は、以下のような顔つきに変化する傾向があるといわれています。

・目つきが変わる
・悲しい、暗い表情をしている
・表情が豊かではなくなる
・ぼーっとしている
・顔が垂れて見える
・口角が下がって見える

ただし、眠そうなとろんとした目になる方もいれば、睨むような険しい目つきになる方もおり、個人差があります。

また、生活が単調になって外出や人と話す機会が減るため、表情筋・口角筋が使われにくくなります。その結果、顔の皮膚がたるんで老けたように見え、口角が常に下がって見えることも多くあります。

認知症だけでなく認知症と併発しやすい疾患が原因で、顔つきが変わるケースもあります。以前は表情が明るく、よく笑っていた方が、急に暗くなったりぼんやりしたりする機会が増えた場合は、認知症かもしれません。

明らかに顔つきや表情が変わり、認知症が疑われる場合は、物忘れ外来や専門医に相談することをおすすめします

認知症になると顔つきが変化してしまう原因とは?

認知症になると、目つきが変わり表情が暗くなるといった変化がありますが、なぜ顔つきが変わってしまうのでしょうか。

顔つきが変わる原因として、おもに以下のようなものが挙げられます。

・アパシーや抑うつ状態になるため
・単調な生活が増え刺激が減るため
・脳の自閉化が進むため
・パーキンソン症状が起こることがあるため

ここからは、それぞれの原因と顔つきの変化以外の認知症の初期症状を解説します。

アパシーや抑うつ状態になるため

認知症になると、BPSDの一つであるアパシーや抑うつが原因で意欲が低下します。その結果、顔つきが変化するケースも少なくありません。

アパシーとは、周囲の物事に限らず自分自身に対しても、無関心・無気力になる状態です。アパシーになると、何に対しても意欲が湧かなくなるため、表情が乏しくなります。

抑うつ状態は、憂鬱・不安を強く感じやすくなる状態です。気分が落ち込むことに加えて、表情も沈みがちになります。抑うつは、不安感や孤独感の解消が重要なため、できるだけ共感を心がけて安心できるような対応をとるとよいでしょう。

単調な生活が増え刺激が減るため

若い頃は、周囲で起こる出来事を新鮮に感じやすく、一日の行動バリエーションも豊富です。しかし、認知症になると加齢にともなって、日々の暮らしが単調になりやすくなります。

認知症が進行して要介護度が高まると、「食事・入浴・排泄を繰り返すだけ」といったルーティン化された日々になるケースが多くあります。

その結果、日常生活がワンパターンになって外的刺激が減少し、脳機能の低下にともなって顔つきにも変化が表れるようになります

脳の自閉化が進むため

健康な方であれば、友達との会話や趣味を楽しむなど、日常の何気ない行動を当たり前のようにできます。しかし、認知症になると、周囲の人や物事に興味関心を抱かなくなるケースが多くあります。

このように、外部からの刺激に対して、何も反応しなくなる現象のことを「脳の自閉化」と呼びます。

認知症の方は、人から話しかけられてもぼーっとしてしまい、名前を呼ばれた際もうつろな目のままといったことが珍しくありません。

脳の自閉化が進行すると、外的刺激に対して反応がなくなるため、無表情になり顔つきが変化することもあります

パーキンソン症状が起こることがあるため

パーキンソン病の患者は、そうでない方と比較して4〜6倍、認知症になりやすいといわれています。以下は、パーキンソン病の症状の特徴です。

・身体をうまく動かせなくなる
・まばたきが少なくなる
・一点を見つめている

こうした症状によって、表情の変化に乏しい状態になるケースもあります

さらに、身体をうまく動かせないため、外出時間や他者とのコミュニケーションが減少して外的刺激が減り、アパシーや抑うつを併発するケースも多くあります。

ほかにも、レビー小体型認知症によって表情筋をうまく動かせなくなり、無表情になるケースもあります。

認知症の初期症状は「顔つきの変化」以外にもある

認知症は自覚しにくい病気のため、早期発見には周囲の気付きが重要です。そのため、上記で挙げた顔つきの変化以外にも、認知症の初期症状について把握しておくとよいでしょう。

認知症の初期症状としては、以下のようなものが挙げられます。

・同じことを何度も聞いたり話したりする
・物忘れが多くなり、常に探しものをしている
・数分前に電話で話した相手の名前を忘れる
・「財布を盗まれた、隠された」など人を疑いがちになる
・料理、計算、運転などでミスをしやすくなる
・テレビの内容が理解できない
・約束をすっぽかすことが増える
・今日が何月何日何曜日かわからなくなる
・通り慣れた道で迷うことがある
・ちょっとしたことで怒りっぽくなる
・趣味や身だしなみなどに興味関心がなくなる
・やる気がなくなり、だらしなくなる

これらの症状に当てはまるものがある場合は、認知症を発症している可能性があります。疑いを持った段階で、できるだけ早く専門医に相談することをおすすめします。

認知症リスクを低減するにはよく笑うことが大切!その理由とは?

自分自身や家族の将来的な認知症リスクを下げるには、普段からよく笑うことが大切です。認知症予防に笑顔が重要とされる理由として、以下の3つが挙げられます。

・ストレス軽減効果が期待できるため
・血行を促進して脳の酸素・血行不足を予防できるため
・笑うことで海馬の活性化につながるため

それぞれの理由について具体的に見ていきましょう。

ストレス軽減効果が期待できるため

笑うことによって、脳内物質の一つである「エンドルフィン」が分泌されます。エンドルフィンは、幸福感をもたらすだけでなく気分を落ち着かせる効果がある物質です。

エンドルフィンが分泌されると、不安感・痛みを除去してストレスの軽減につながります。

さらに、笑顔にはストレスを受けると分泌される「コルチゾール」を抑制する働きもあります。コルチゾールとは、ストレスホルモンとも呼ばれており、長期的かつ大量に分泌されると脳の萎縮を引き起こす物質です。

脳の萎縮は、認知症の発症にもつながります。そのため、認知症予防においてコルチゾールの分泌量を減らすことは非常に大切です。

血行を促進して脳の酸素・血行不足を予防できるため

認知症の原因の一つに、脳の酸素・血行不足による脳の萎縮が挙げられます。そのため、よく笑って血行を促進すれば、脳に酸素・血液が行き渡りやすくなり脳の萎縮の改善が期待できます

声をあげて笑うと、自然と呼吸が深くなって、腹式呼吸と同じ状態になります。そのため、通常の呼吸よりも、多くの酸素を体内に取り込むことが可能です。

また、心拍数や血圧の上昇も、笑いがもたらす効果の一つです。血行が促進されることで、血液が全身に行き渡りやすくなります。

笑うことで海馬の活性化につながるため

笑いには、脳の海馬を活性化させる働きがあります。海馬とは、脳機能のなかで、記憶を司る器官です。海馬が活性化することで、記憶機能のアップが期待できます。

また、笑いは、脳内のα波を増大させる働きがあるのも特徴です。α波は、脳をリラックスさせて、血行を促進する効果があるといわれています。血行が促進されると脳が活性化されて、記憶機能や認知機能の向上が期待できます。

認知症予防につながる笑顔を増やす方法とは?

先述のとおり、笑顔は認知症予防にとって重要です。普段からテレビを見ている方や人と会話をしている方であれば、自然と笑う機会もあるでしょう。しかし、すでに認知症を発症している方は、笑顔になれる機会を得にくい問題があります。

認知症の方や、認知症予防をしたい方の笑顔を増やす方法としては、以下のようなものがあります。

・レクリエーションに参加する
・コミュニケーション機会をつくる
・表情筋トレーニングを行なう

レクリエーションに参加する

レクリエーションに参加すれば、笑顔になる機会を増やすことが可能です。単調になりがちな認知症の方の生活において、レクリエーションは生き生きと暮らすきっかけにもなります。

レクリエーションを行なうと、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」や「オキシトシン」の分泌が増加します。それぞれ興奮やストレス反応の抑制のほか、精神の安定、不安感の減少といった効果が期待できる物質です。

また、身体を動かすレクリエーションであれば、たとえ単純な動きであっても、身体機能の低下予防や生活リズムの改善といった効果が期待できます。

レクリエーションの具体例 として、「体操ゲーム」「グーパー体操」「イントロクイズ」「連想ゲーム」「糸電話伝言ゲーム」「風船バレー」「玉入れ」などが挙げられます。

コミュニケーション機会をつくる

認知症の介護が必要になると、行動を促したり介助のために声かけをしたりと業務的なやり取りが増えがちです。しかし、業務的なやり取りのみに終始せず、そのなかで雑談や昔話といった会話でのコミュニケーションをとるのも一つの方法です。

雑談する場合は、特に反応がなくても問題ない内容を選びましょう。また、話すときは、わかりやすい言葉でゆっくり話すことを心がけてください。

思い出の品や昔の写真などを参考に昔話をするのも、笑顔につながる可能性があります。これは、実際に病院や施設でも取り入れられている「回想法」という治療法です。

家族で思い出話に花を咲かせれば、孤独感や不安感から意識を逸らせることもあります。

表情筋トレーニングを行なう

認知症が原因で暗くなってしまった顔つきや無表情を改善するには、日常的に表情筋トレーニングを行なうことも有効です。笑顔の相乗効果が期待できるため、表情筋トレーニングは、家族や介護者の方も一緒に取り組むことをおすすめします。

認知症患者の顔つきの特徴を理解して笑顔を増やす取り組みをしよう


人によって個人差はありますが、認知症になると「目つきが変わる」「表情が暗くなる」など、顔つき・表情に変化が現れる傾向があります

これは、認知症のBPSDであるアパシーや抑うつによる意欲の低下や、外的刺激の減少による脳機能の低下などが原因です。

認知症を予防したい、認知症の進行を遅らせたい場合は、「笑う機会を増やす」とよいでしょう。

笑顔は、ストレス軽減や血行促進といった効果が期待でき、脳の萎縮を予防・改善することが可能です。さらに、笑うことで海馬が活性化され、記憶機能の向上も期待できます。

認知症を予防するためにも、レクリエーションの参加や表情筋トレーニングを行ない、笑顔あふれる暮らしを目指しましょう。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年7月25日

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