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認知症高齢者の日常生活自立度とは?ランク別の特徴や判定の注意点・対応方法を解説

認知症高齢者の日常生活自立度とは

認知症の高齢者に対しては、日常生活自立度と呼ばれる評価尺度を判定することがあります。複数のランクが設けられており、それぞれ状態が大きく異なります。本記事では、認知症高齢者の日常生活自立度について、判定が必要になるケースやランク、判定の注意点や対応方法などを詳しく解説します。

日常生活自立度とは

日常生活自立度とは、認知症や障害を持つ高齢者がどの程度の自立した生活ができているのかを判定する評価尺度です。厚生労働省が基準を定めている公的な評価尺度で、主治医意見書や認定調査、介護保険サービスに関する書類作成などの場面で用いられます。

日常生活自立度には「障害高齢者の日常生活自立度」と「認知症高齢者の日常生活自立度」があります。

認知症高齢者の日常生活自立度

下記の表は、厚生労働省が定めている日常生活自立度の一覧表です。ランクⅠからMまで合計9つに分類されています。
 

*出典「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」の活用について(平成18年4月3日老発第0403003号)厚生省老人保健福祉局長通知

それでは、各ランクの判定基準や見られる症状・行動の例について詳しく見ていきましょう。

ランクⅠ

認知症の症状があるものの、家庭内および社会においてほぼ自立した状態です。認知症の初期段階ではありますが、正常に近い状態と言えるでしょう。正常に近いかどうかは家族だけでは判断できないため、日常生活自立度の判定を受けなくてもよいわけではありません。

この段階でしっかりと判定を受けて、現状を把握しておくことも大切です。

ランクⅡ

日常生活に支障をきたす症状や行動、意思疎通の問題が多少見られるものの、周りの人が注意して見守ることで自立した生活ができる状態です。

ランクⅡa

家庭外において、ランクⅡの状態が見られた場合に判定されます。例えば、たびたび道に迷う、買い物忘れ、事務のミス、金銭管理ができないなどの症状がみられます。

ランクⅡb

家庭内でもランクⅡの状態が見られた場合に判定されます。例えば、薬の飲み忘れ、電話の応対や訪問者に適切に対応できないなどの症状がみられます。

ランクⅢ

日常生活に支障をきたし得る症状や行動、意思疎通の問題などが見られ、介護しなければ生活ができない状態です。

ランクⅢa

主に日中にランクⅢの状態が見られた場合に判定されます。例えば、着替えや食事、排せつが上手にできない・時間がかかる、奇声をあげる、徘徊、火の不始末、不潔な行為をする、性的異常行為などがみられます。

ランクⅢb

主に夜間にランクⅢの状態が見られた場合に判定されます。症状の例はランクⅢaと同じです。

ランクⅣ

日常生活に支障をきたす症状や行動、意思疎通の問題が頻繁に見られ、常に介護が必要な状態です。症状の例はランクⅢと同じですが、頻度の違いで区分されます。

ランクM

著しい精神状態や問題行動、重篤な身体の病気が見られ、専門医療を受ける必要がある状態です。例えば、妄想や自傷行為、他者に危害を加えるなどの精神症状、または精神症状によって起きた問題が継続している状態が該当します。

*出典厚生労働省「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」の活用について(平成18年4月3日)を元に記載

日常生活自立度判定における問題点と対応方法

日常生活自立度は、聞き取り調査の内容で判定するため、調査員の認知症に対する理解度や経験などによって結果が変動します。また、判定対象者にとっては、見知らぬ人に自分について話すことになるため、不信感を抱いたり緊張したりして意志とは異なる回答をする可能性があります。

反対に、普段は受け答えに問題があっても、見知らぬ人の前ではしっかりと受け答えができる場合もあるなど、日常生活自立度の正確な判定は難しいです。
また、同居家族が質問を受けるケースもありますが、関係が良好ではない場合、本人の状態を正しく理解していない可能性があります。その結果、判定に悪影響が及び、実際よりもランクが低くなってしまう恐れもあるでしょう。

認知症高齢者の日常生活自立度と介護

厚生労働省の「平成27年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成27年度調査)」によると、認知症高齢者の要介護度が重症化するにつれて、日常生活自立度のⅠの割合が減少し、Ⅳ・M の割合が増加します。
 【要介護度別認知症高齢者の日常生活自立度の内訳】



続いて、日常生活自立度と介護サービスの利用状況についても詳しく見ていきましょう。

サービス系列別受給率に占める認知症高齢者のうち、日常生活自立度Ⅱa~M の方は、居宅系サービスが約5割、居住系サービスで約8割、施設系サービスで約9割の利用があります。
 【サービス系列別受給率】

(介護予防サービスを含む)

正確な判定に向けて

適切な介護認定や介護サービスの利用のためには、日常生活自立度の正確な判定が大切です。正しい判定に向け、上記の留意点や対応方法をおさえておきましょう。

村上友太〔医師〕

医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事。現在、東京予防クリニックで勤務。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医、抗加齢医学会専門医。
日本内科学会、日本認知症学会などの各会員。

公開日:2023年2月1日

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