介護の相談はどこにすれば良い?
介護サービス利用までの手順


介護の必要性を身近に感じている方のなかには、「介護の相談をするタイミングはいつが良い?」「介護の相談はどこにする?」といった悩みを持つ方もいるでしょう。

介護の相談に応じる専門機関を利用すると、介護に関する情報や、適切な支援の提案を受けられます。今から介護に備えるためには、それぞれの機関の特徴やサービス内容を把握しておくことが大切です。

今回は、介護の相談が必要になるタイミングや相談先の種類と特徴、介護の相談から介護サービスを受けるまでの流れを解説します。

介護の相談が必要になるタイミングは?

まずは、介護の相談が必要になるタイミングについて見ていきましょう。

今までと様子が違うとき

親や家族の様子が今までとは異なり、日常生活を送るのに支障が出てきたら、介護の相談を検討しましょう。

例えば、親や家族の認知症が進行し、自己管理能力や判断能力が失われることで、以下のような様子が見られた場合は、介護が必要だと考えられます。

● 時間や、自分のいる場所がわからなくなる
● 物忘れの頻度が多くなる
● 妄想、幻聴、幻視などの症状が見られる

また、加齢により心や身体の衰えが進行した際も、日常生活の手助けが必要になるでしょう。

ケガや病気が原因で今までどおりの生活を送れないとき

突然のケガや病気が原因で今までどおりの生活が送れなくなり、生活スタイルの変更を余儀なくされた場合、介護が必要になることがあります。

例えば、以下のような事故によるケガや病気を患うと、症状の度合いによっては寝たきりになる可能性を考えなくてはなりません。

● 屋外や屋内で転倒して足を骨折した
● 脳血管疾患で後遺症が残った

介護者の精神的・肉体的負担が増えてきたとき

介護者が自宅で家族の介護を行なっている場合、介護の度合いによっては、朝から晩まで食事・入浴・排せつなどの介助をしなくてはなりません。

介護に追われ、家族以外の人とのコミュニケーションをとる機会が少なくなると、孤独感を覚えたり、将来への不安に苛まれたりすることもあるでしょう。

入浴・移動・着替えなど、介護者の身体に負担がかかる介助が必要な場合は、足腰を痛めることも考えられます。介護者の精神的・肉体的負担が限界に達する前に、早めに専門家に相談することをおすすめします。

介護の相談先はどこ?

次に、介護が必要になった際の相談先の種類や特徴について解説します。

地域包括支援センター

地域包括支援センターとは、高齢者が住み慣れた地域でいつまでも快適に暮らせるように、市町村が主体となって設置する総合的施設です。

「住民の健康の保持および生活の安定のために必要な援助を行なうことにより、地域の高齢者の保健医療向上および福祉の増進を包括的に支援すること」を目的としています。

地域包括支援センターは、2022(令和4)年4月末現在、全国に5,404カ所、ブランチ等を含めると7,409カ所存在※し、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などが高齢者に必要な支援や、サービスの提供を行なっています。
地域包括支援センターのおもな4つの業務内容について見ていきましょう。

総合相談支援業務

地域の高齢者に関する幅広い相談に対応する業務です。情報提供のほか、適切な制度・サービス・専門機関を案内し、かつ継続フォローも担うなど、総合的な支援を行ないます。つまり、地域包括支援センターで行うすべてのサービスの窓口といえるでしょう。

権利擁護業務

高齢者が安心して暮らせるよう、尊厳のある暮らし・財産・権利を守るために、情報提供や相談に応じる業務です。高齢者の権利擁護の支援には、以下のようなものが挙げられます。

● 成年後見制度の活用促進(相談・制度説明・手続き支援)
● 高齢者虐待への対応(早期発見・被害防止)
● 消費者被害への対応(悪徳商法や詐欺から守るための取り組みや情報提供)

高齢者の権利を脅かすような問題が発生した際は、関係機関と連携を取りながら問題の解決にあたります。

介護予防ケアマネジメント業務

要支援・要介護状態になる可能性のある高齢者に対し、高齢者本人が主体的に生活できるように「介護予防ケアプラン」の作成を行ないます。介護予防ケアマネジメント業務の対象者は、以下のとおりです。

● 要介護認定の要支援1・要支援2に認定された、介護予防・日常生活支援総合事業の事業対象者の方
● 要介護認定は受けていないものの、基本チェックリストによって事業対象者となった方

包括的・継続的ケアマネジメント支援業務

地域のケアマネジャーへの支援や業務サポートを行ないます。おもな業務内容を見てみましょう。

● 「地域ケア会議」などを通じた自立支援型ケアマネジメントの支援
● ケアマネジャーへの日常的個別指導や相談への対応
● 支援困難事例などへの指導や助言

市区町村の役所の窓口

市区町村の役所の窓口では、保健福祉や公的介護保険に関する総合的な相談を受け付けています。受付窓口の名称は市区町村によって異なりますが、対象地域に居住する方なら誰でも相談可能なため、Webサイトや電話で確認するとよいでしょう。

また、要介護認定の申請や、実際に公的介護保険を利用する際の手続きなども行なっており、必要に応じて地域包括支援センターへの紹介も行います。

居宅介護支援事業所

居宅介護支援事業所とは、デイサービスや訪問介護などの事業を行なっている事業所を指します。居宅介護支援事業所は、ケアマネジャーが常駐し、要介護認定を受けた方のみが利用できることが特徴です。

利用料は、公的介護保険で全額支払われるためかかりません。おもな業務内容を見てみましょう。

● 介護相談
● ケアプランの作成
● 公的介護保険に関する申請の代行
● 介護サービス事業者との連絡調整

社会福祉協議会

社会福祉協議会は、民間の社会福祉活動の推進を目的とする非営利の民間組織を指し、全国社会福祉協議会・都道府県社会福祉協議会・市区町村社会福祉協議会に分けられます。

社会福祉施設・社会福祉法人などの社会福祉関連の団体、保健・医療・教育などの関連機関、民生委員・児童委員などの協力によって、福祉サービスの提供や相談対応など、さまざまな活動が行なわれています。

介護に関する活動の事例は、以下のとおりです。

● ホームヘルプサービス(訪問介護)や配食サービスをはじめとする、福祉サービスの提供
● 高齢者、障害者、子育て中の親子が気軽に集える「サロン活動」 など

医療機関の相談室

医療機関では、医療ソーシャルワーカーが在籍する相談室を設けていることがあります。

医療機関の相談室の役割は、医療ソーシャルワーカーが患者本人や家族の相談に応じ、ともに考え、安心して生活できるようにサポートすることです。おもな相談内容を見てみましょう。

● 外来受診、入院、退院後の心理的・社会的問題について
● 医療費や生活費などの経済的問題について
● 公的介護保険制度やその他の福祉制度について

このように、医療機関の相談室では、入院中の困りごとのほか、退院後の公的介護保険の利用などについても相談できます。

【5ステップ】介護の相談から介護サービス利用までの手順

最後に、介護の相談から介護サービスを利用するまでの手順について解説します。

ステップ1.要介護認定の申請をする

介護サービスを受けるには、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定の申請は、居住する市区町村の窓口で受け付けています。申請は本人や家族のほか、ケアマネジャーによる代行も可能です。

本人または家族が要介護認定の申請をする際は、おもに以下のものを用意します。

● 介護保険要介護認定・要支援認定等申請書
● 個人番号確認書類(マイナンバーカードまたは通知書)
● 窓口で申請を行なう方の本人確認書類
● 健康保険被保険者証(64歳以下の場合)
● 介護保険被保険者証(65歳以上の場合)

なお、必要書類は市区町村によって異なる場合があるため、まず先に確認しておきましょう。

ステップ2.認定調査を受ける

要介護認定を申請すると、市区町村で担当する調査員が家庭を訪ね、本人の日常の様子や精神・身体の状態の調査を実施します。

訪問調査の結果と、かかりつけの医師が医療上の状態を記載した「主治医意見書」をもとに、各市町村の「介護認定審査会」で審査判定が行なわれます。

ステップ3.申請結果を受け取る

要介護認定の申請日から原則30日以内に郵送で送られてくる、要介護の認定区分が記載された「認定通知書」と「介護保険被保険者証」を受け取りましょう。

介護サービスが必要と判断された場合は、要支援1~2・要介護1~5の合計7段階いずれかの認定区分が記載され、介護サービスが必要ないと判断された場合は「非該当(自立)」と記載されます。

ステップ4.ケアプランを立てる

介護サービスを受けるには、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらわなければなりません。ケアプランは、以下のように要介護の認定区分によって依頼先が異なります。

● 要支援1~2:地域包括支援センター
● 要介護1~5:居宅介護支援事業所

ケアプランは、ケアマネジャーが本人や家族からの要望を聞きつつ、本人に必要な介護サービスを提案しながら作成します。なお、作成料は無料です。

ステップ5.介護サービスを利用する

ケアプランが完成したら、介護施設や介護サービス事業者と契約を結び、介護サービスの利用を開始します。

介護の困りごとは専門家に相談しよう


介護相談に応じる専門機関を利用すると、情報提供や適切な支援の提案を受けられます。将来、親や家族に介護が必要になったときに備え、各機関のサービス内容や特徴を把握しておくことが大切です。

また、実際に介護サービスが必要になった際、手続きをスムーズに進めるためにも、介護の相談から介護サービス利用までの流れも把握しておきましょう。

各機関の専門家に早めに介護の相談をすると、適切な介護サービスを受けられるほか、介護者の精神的・肉体的負担が軽減されることが期待できるでしょう。

 

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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

CFP 金子 賢司

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務めるなか、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強をはじめる。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

資格:CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2023年9月7日

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