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認知症クリニック

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認知症? それとも、ただのもの忘れ?
初期の認知症を見つけるポイントはありますか?

初期の認知障害を見つけるポイントは、“普段の言動との違い”にあります。

MCI(Mild Cognitive Impairment)をご存知でしょうか?
MCIとは認知症への入口となる初期の軽度認知障害のことです。基本的な日常生活には支障がなく、認知症の病的水準まではいかないグレーゾーンで、加齢によるもの忘れであるケースも多くあります。

しかし、ほとんどの場合がこのMCIの期間を経て認知症へと進みますので、この時点で気付くことができれば認知症への進行を予防できる可能性もあります。
また、認知症へと進んでいく場合でも、早期に発見することは、その後の生活や治療において、患者様が自分らしい選択をするために大切です。
この初期の認知障害を見つけるポイントは、“普段の言動との違い”にあります。親御さんやご家族の言動に「あれ? いつもと何かが違う?」と思うことがあれば注意深く観察してみてください。診断の際には、その頻度と度合いもポイントになりますので、“いつ”、“どんなこと”があったのかをメモなどで記録しておくのをおすすめします。

また、ご家族のもともとの暮らしぶりを知らなくては、小さな変化に気付くことができません。認知症になるもっと前からの「日頃の交流」が大切です。

しかし、同居していたり毎日顔を合わせる状況の場合、ゆっくりと進行していく症状の変化に気付けないこともあります。ではどうすればよいのか。
その場合も、大切なのはやはり「日頃の交流」です。たまに会う家族やお友達、ご近所の方など第三者からの客観的な意見が発見のきっかけになることがあります。
つまり、認知症を疑われる方との関係だけではなく、家族や親族、ご近所との交流もとても大切なのです。

【認知症のサインかもしれない「変化」】

初期の認知障害のサインと
対応事例

今までは、一人で百貨店に出かけたり、カルチャースクールに通ったりと活動的だったAさん。
数カ月前から、自宅でぼーっとしているようになり、「あれ?」とうつ病を疑った娘さんと来院。
娘さんは「母はおしゃれで、美容院に欠かさず行く人だった」と言うが、来院時には、髪の毛の生え際1cmほどが真っ白の状態だった。

その後、娘さんがAさん宅に定期的に訪問するようになると、不安や混乱はなくなり、娘さんが外出に誘い出すことで美容院通いも再開した。
現在は、電話で「そろそろ美容院に行く時期じゃない?」という声掛けだけでよくなっている。
定年後、パソコン教室に通ってパソコン操作を習得。
しばらくは楽しく活用していたが、あるとき「パソコンが壊れた」と新品を買ってきた。その2週間後にまた「パソコンが壊れたから購入する」と言うので、妻が「あれ?」と思い指摘すると元来温厚なBさんが「おまえは何も知らないくせに!」と激怒。

ときどき帰郷する息子やご近所の方にサポートをしてもらって、しばらくはパソコンを使っていたが、今度は皆を頼って、些細なことで日に何度も連絡してしまうようになった。結局パスワードが思い出せなくなり、その後、パソコンには一切触れなくなった。
パソコンを使わなくなって、一時は引きこもり状態が心配されたが、今度は絵画教室に通い始め、現在まで2年間楽しく通っている。絵の題材を探しに出かけたりして、興味の幅が広がっている。
かつては社長をされていた聡明で博学なCさん。
「あれ?」と思うことが増え、奥様に連れられて通院がスタートした。通院当初は各地での講演会に登壇していて、診察時にもいろいろな知識や経験を教えてくださったが、講演先ではトイレに行っていて新幹線に乗り遅れるなどの事件があり、ご自宅では奥様を怒鳴り散らすことが増えていった。

奥様には、認知症進行後のリスクとして、話している内容を忘れる、同じ話をくり返す、時間感覚が喪失してくる、迷子になるなど、旅先での危険性を説明。
通院が続くと、徐々に診察室でご本人ではなく奥様が話すことが増え、「読書が趣味だからね。おしゃべりは妻に任せているんだよ。最近は」、「やっぱり女性は口から生まれてくるんだね。もう何を言っても女房に言い負かされてしまうから」と話すようになった。

その他、こんなサインも要注意!

  • 家電(電子レンジ、洗濯機、電動髭剃り、血圧計)など、いつも使っていたものが使えなくなる
  • 買い物のたびに同じもの(トイレットペーパー、ティッシュ、調味料、食材、電池 etc)を買ってくる
  • 混乱しているような様子でイライラすることが増える
  • 道に迷う
  • 部屋が散らかっている。タンスや押し入れ、水回りがぐちゃぐちゃになっている
  • 周囲の人とのトラブルが増える
  • 「バカになったみたい」「もうダメね」「死んじゃった方が楽」といった発言をする
  • 確認することが増える
  • 人との関わりを断るようになる。会話を終わらせようとする
  • 引きこもりがちになる
  • 薬を正確に飲めていない。薬がたくさん余っている。残薬の数が合わない
  • お金のことを心配したり、執着するようになる
  • 病院の通院日を忘れる。予約日や時間を間違える
  • 小銭が増える(計算しにくくなったり、計算が面倒でいつもお札で支払うため)

さちはなクリニック
副院長 岡 瑞紀

琉球大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部精神神経科学教室にて研修。国家公務員共済組合連合会立川病院、桜ケ丘記念病院勤務後、慶應義塾大学病院メモリークリニック外来、一般内科医院での認知症診療、各種老人入居施設への訪問診療、保健所の専門医相談、地域研究、家族会など各種講演会での啓発活動を通して、様々なステージや状況下の認知症診療を経験。慶應義塾大学大学院医学研究科にて学位取得。2015年より、さちはなクリニック副院長として、もの忘れ、認知症の診療を担当。
免許・資格:医師/精神保健指定医/精神科専門医/日本老年精神医学会認定専門医/医学博士
所属学会:日本精神神経学会/日本老年精神医学会

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