認知症の診断にあたっては、さまざまな検査が行われます。一般的な検査の流れとおもな検査の内容を見ていきましょう。
認知症の検査は「問診→身体検査→画像検査→神経心理学検査」の順に行われるのが一般的です。ただし、これらの検査を必ずすべて実施するわけではありません。問診や症状を確認したうえで、必要な検査を行い、認知症か否かを判断します。
認知症検査では、血液検査や尿検査などの身体検査も実施されます。血液や尿からさまざまな物質を検出することにより、認知症そのものに関するチェックだけでなく、脳以外の臓器に異常がないかも確認します。甲状腺機能低下症などの認知症による合併症を発症していないかチェックするのも重要なポイントです。
画像検査は、大きく分けて「形態画像検査」と「機能画像検査」の2種類を実施します。
「形態画像検査」は、CTやMRIなどの機器を用いて、脳の物理的な形を検査するものです。脳の萎縮状況を確認して認知症の診断に役立てるとともに、脳腫瘍、脳出血、脳梗塞といった緊急性の高い疾患がないかどうかもチェックします。
「機能画像検査」は、脳の血流状況を確認するSPECT検査、糖代謝活性や認知症原因物質の沈着状況を確認するPET検査などを行います。脳機能が正常に働いているかどうかをチェックでき、初期のアルツハイマー型認知症も発見しやすいのが特徴です。
検査を受ける方に簡単な作業をしてもらったり、簡単な質問に答えてもらったりすることで、認知症か否かをチェックする検査です。基準となる点数を満たさない場合、認知症の疑いがあると診断されます。いずれの検査も一つの指標に過ぎないため、点数に届かないからといって必ずしも認知症とは限りません。
神経心理学検査の代表的な検査方法には以下のようなものがあります。
記憶力を確かめる9つの簡単な設問に、口頭で答えてもらう形式で実施する認知症テスト。30点満点中、20点以下の場合には認知症の疑いありと判断されます。
簡単に実施できて、かつ信頼性が高いことから、多くの医療機関で採用されています。設問を用意するだけなので、自宅で実施することも可能です。
指定した時間の時計の針の形を正しく描けるかどうかによって、認知症の疑いの有無をチェックするテストです。単に描けるかだけでなく、描いている途中の様子を見ながら、描けない要因なども細かく分析します。
他のテストのような質問形式ではないため、患者本人が抵抗なく実施できるのがメリットです。
「精神状態短時間検査」とも呼ばれ、短時間で多くの質問や計算などに回答してもらうタイプの認知症テストです。一つ目に紹介した長谷川式スケールと形式は似ているものの、質問内容が多岐にわたり、質問の数が多くなっています。質問する分野が幅広いため、本人の得意なこと、苦手なことがわかりやすい検査です。