認知症の周辺症状とは?
代表的な種類や段階ごとの特徴を理解しよう

認知症には、中核症状のほかにも「周辺症状」が見られることがあります。

周辺症状にはさまざまな種類があり、症状のあらわれ方は人それぞれです。症状が出る原因を知り、自身で行なえる対策を理解しておくことで、認知機能の低下を感じても不安が軽減される可能性があります。

この記事では、周辺症状の種類や発症の時期によって確認される症状、周辺症状に効果が期待される対策などを解説します。ご自身の状態に不安を感じている方は、ぜひ今後の参考にしてみてください。

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認知症の周辺症状とは?

周辺症状を理解するためには、中核症状との関係性や症状があらわれる原因を知ることが大切です。
ここでは、症状が発生する状況や原因を具体的に解説します。

周辺症状は中核症状に付随して発生するもの

認知症の症状は「中核症状」と「周辺症状」に大きく分けられます。周辺症状は、中核症状が要因となって二次的に起こる症状で、行動・心理症状(BPSD)と呼ばれることもあります。

中核症状は認知症のほとんどの人に見られるのに対し、周辺症状はすべての症例に出るわけではありません。また、生活環境や性格、心理状態なども影響しているため、症状があらわれた際の程度やあらわれ方の個人差は大きい傾向にあります。

周辺症状が出現する原因

周辺症状の原因の一つとして、中核症状に対する本人の知覚および周囲からの反応が影響していると考えられています。

例えば、記憶障害によって物を置いた場所がわからなくなり、そこにあるはずの物がなくなっているとしましょう。それが中核症状によるものだと周囲の人に理解されず、否定や無視、疑いといった反応を示されることで本人は不安を感じ、精神状態がより不安定になります。結果、「ものを盗られた」「だれかがやった」というような発言に至るのです。

前述したこと以外にも、中核症状が原因でできなくなることは多数あるでしょう。このような状況でも、周囲が適切に対応したり、環境を整えたりすることで症状が改善するケースがあります。そのため、周囲の人にも認知症に対する理解を深めてもらうことが大切です。

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認知症のおもな周辺症状

ここでは、周辺症状で見られる代表的な症状を紹介します。

抑うつ・不安

認知機能の低下により、これまではできていたことが徐々にできなくなると、不安を感じて、気分が落ち込んでしまうなどの抑うつ状態になることがあります。

周辺症状によるうつ状態では、意欲が低下して物事へ無関心になったり、ふさぎ込んで家から出る機会が減ったりします。食欲が減退したり意欲的でなくなったりすることもあり、うつ病と誤解され、認知症と診断される前にうつ病と診断される方も多くおられます

介護拒否

介護が必要な状況において、本人が介護を拒否するケースもあります。その理由としては、認知機能の低下によって介護の意味が理解できていないことや、自宅でない場所に移ることで習慣や環境が変わってしまうのを避けたい気持ちがあることなどが挙げられるでしょう。

また、介護を受ける側としては気持ちを伝えるための意思表示として行なったことでも、介護する側には拒否として伝わってしまうことがあります

大切なのは、お互いに相手の気持ちへ寄り添って理解し合うことです。自身が感じていることは、介護者など相手へ伝えるようにするとよいでしょう。

暴言・暴力

脳の機能が低下すると、自身の思うように表現することが難しくなったり、感情を抑えられなくなったりして、周囲の人への暴言・暴力が発生することがあります。

感情の高ぶりは脳の機能の低下によって引き起こされるため、自分の意思で抑制するのは困難です。ただし、周囲の人が症状について理解をしていれば、できる限り感情を高ぶらせないように対応することで、症状の軽減につなげられる可能性があるでしょう。

幻覚・幻視

幻覚とは、実在しないものが実在しているかのような体験をする症状です。症例のなかには、幻視や幻聴、幻臭などを体験するケースも見られます。本人には現実に見えたり聞こえたりしていても、周囲の人にとっては実在しない知覚情報のため、理解が難しい症状といえるでしょう。

睡眠不足や水分不足など、幻覚が起こる原因はさまざまです。また、幻覚が睡眠障害や異食、ろう便などにつながる可能性もあります

認知症の周辺症状は時期によって異なる

周辺症状は、認知症の初期から末期まで、すべての時期で確認される可能性がある症状です。ここでは、それぞれの時期に確認される症状を具体的に解説します。

前兆期

前兆期は認知症になる一歩手前の時期であり、軽度認知障害(MCI)の状態です。前兆期には意欲減退や不安、めまいなどの症状が確認されますが、日常生活への支障はありません。

この時期に認知症を早期発見できれば、進行を緩やかにできたり改善が見込めたりする可能性があります。体調や精神状況などに違和感を覚えた場合は、それを見過ごさずに、病院を受診するなどの対策を講じましょう。

初期

個人差はありますが、認知症が発症してから約1~3年の時期は初期(軽度)の段階です。おもな症状として、妄想や無気力が確認されます。

この時期になると、中核症状である認知機能や判断力の低下、見当識障害をともなうため、日常生活に支障をきたすことが増えるでしょう。直前の出来事を忘れる症状もあらわれ始めることから、これまで以上に注意しながら生活することが大切な時期といえます。

中期

認知症を発症してから約2~10年経過すると中期(中度)段階に入りますが、進行の程度は症例によって異なります。

この時期には、認知機能の低下や失語、失認、失行なども出ている可能性が高いため、食事や着替え、トイレなどを自力で行なうのが難しくなるでしょう

周辺症状には、妄想や不安、幻視、幻聴、無関心などが確認されます。
出てくる症状が多い時期であり、介護を受ける準備しておくことが大切です。

末期

認知症を発症してから約8~12年で、末期(重度)段階に入ります。座位や歩行が困難になり寝たきり状態となるため、嚥下障害などにも注意しなければならない時期です。

この段階になると意思疎通が困難となり、ろう便や失禁、異食などの症状があらわれるケースがあります。末期では、免疫力が低下して感染症にかかるリスクが上昇するため、介護者は体調の異変などが生じていないかを慎重に見守る必要があるでしょう。

認知症の周辺症状に効果が期待される対策

認知症の発症原因のなかには生活習慣病が影響しているものもあるため、生活習慣の改善が認知症の予防につながります。また、友人や家族とのコミュニケーションを充実させることで精神状態が良好になり、脳の活性化が期待できるかもしれません。

他にも、定期的に検診を受けたり、日頃から認知機能をチェックしたりしておけば、早期発見によって症状を軽減できる可能性があります。

ただし、症状や気持ちの変化は人それぞれ異なります。無理に対処しようとするのではなく、実現可能な範囲で認知症と上手に付き合っていくことが大切です。

生活習慣・環境の改善や医療機関の受診で周辺症状を和らげよう

認知症における周辺症状とは、中核症状が原因となって二次的に起こるものです。本人の性格や環境などの影響も受けるため、認知症のすべての人にあらわれる症状ではなく、症状の個人差も大きい傾向にあります。

認知症は早期発見ができれば、症状の軽減や改善が期待できます。早期発見のためにも、生活習慣を改善したり定期的な受診を検討したりして、自身の体調・精神状態の変化に敏感でいるように心がけましょう。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年6月30日

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