軽度認知障害(MCI)とは?
初期の認知症の症状・受診のサイン


最近、もの忘れが増えた、同じ話を繰り返すようになったなど、ご自身やご家族の変化に気付いて不安を感じている方も少なくないでしょう。日常生活に大きな支障はなくても、「もしかして認知症なのでは?」と心配になっている方も多いかもしれません。

そのような場合、認知症の一歩手前の状態である「軽度認知障害(MCI)」の可能性があります。

本記事では、軽度認知障害(MCI)の定義や初期症状、認知症との違い、受診のサインについて詳しく見ていきましょう。

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「認知症」とは

 
認知症とは、さまざまな原因で脳細胞の働きが悪くなったり壊死したりすることで、記憶力や判断力などに障害が生じ、対人関係や社会生活に支障をきたしている状態です。
およそ6カ月以上、この状態が続く場合に認知症と診断される可能性があります。

認知症は複数の型がありますが、最も多い型が「アルツハイマー型認知症」です。

「軽度認知障害(MCI)」とは

認知症になる一歩手前の状態を「軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)」と呼びます。
認知症への入り口となる初期の認知障害のことで、基本的な日常生活には支障がなく、認知症の病的水準まではいかない”グレーゾーン”であるといえます。

軽度認知障害(MCI)の定義

軽度認知障害(MCI)は、記憶力や注意力などに低下がみられている一方で、日常生活に支障をきたさない状態です。
厚生労働省では、以下のように定義しています。
  •  正常と認知症の中間の状態
  •  物忘れはあるが日常生活に支障がない
  •  年間10~30%が認知症に進行する
  •  正常なレベルに回復する方もいる

軽度認知障害(MCI)の原因

軽度認知障害(MCI)の主な原因として挙げられるのがアルツハイマー病です。「アミロイドβ」というタンパク質が脳に蓄積することで神経細胞が損傷し、認知機能の低下が進行するとされています。

また、脳梗塞や脳出血、慢性硬膜下血腫などの脳血管障害も軽度認知障害(MCI)の原因の一つです。このほか、レビー小体型認知症、正常圧水頭症、うつ病、ビタミンB群・甲状腺ホルモンの不足、薬の副作用なども原因となることがあります。

軽度認知障害(MCI)の進行と回復の可能性

軽度認知障害(MCI)と診断された方すべてが、認知症に進行するわけではありません。

また、軽度認知障害(MCI)の段階で適切な認知症予防策を講じることで、健常な状態へ回復したり、認知症への移行を遅らせたりすることが期待できます。早期発見・早期対応が重要といえるでしょう。

軽度認知障害(MCI)と認知症・加齢の違い

軽度認知障害(MCI)と認知症、そして加齢による物忘れには、それぞれ異なる特徴があります。ここでは、それらの違いについて詳しく見ていきましょう。

軽度認知障害(MCI)と認知症の違い

軽度認知障害(MCI)と認知症の違いの一つは、「日常生活への支障の有無」です。

軽度認知障害(MCI)は、「認知機能の低下はみられるものの、日常生活は問題なく送れている状態」を指します。基本的に、食事の準備や金銭管理、買い物、移動といった日常的な活動に問題はみられません。

一方、認知症は「日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態」で、金銭や服薬の管理など、生活のさまざまな場面で他者の支援が必要となります。

認知症による物忘れと加齢による物忘れの違い

物忘れは、加齢が原因で起きる場合もあります。そのため、認知症と加齢の物忘れは混同されがちですが、両者には違いがあります。

加齢による物忘れは、体験の一部を忘れてしまう状態です。例えば、「朝食を済ませたことは覚えているが、何を食べたかは思い出せない」といった症状が表れます。一方、認知症による物忘れは、朝食を食べたこと自体を忘れてしまうという特徴があります。

認知症による物忘れと加齢による物忘れの違いについて、以下の表で確認しておきましょう。
認知症による物忘れ 加齢による物忘れ
体験したこと 体験したこと自体を忘れる 体験の一部を忘れる
学習能力 新しいことを覚えるのが難しい 変化はない
もの忘れの自覚 ない ある
症状の進行 進行する 極めて徐々に進行する

認知症の初期症状

認知症の初期症状には、物忘れや気分の落ち込み、集中力の低下などがあります。
症状について、詳しく見ていきましょう。

物忘れ

物忘れは誰にでもあるものです。しかし、頻度が高くなってきた場合は認知症の初期症状の可能性があります。
次のような場合は注意した方がよいでしょう。
  •  何度も同じことを聞いてくる、話してくる
  •  ゴミの回収日を忘れてゴミを出す日を間違える
  •  同じものを何度も買ってくる
  •  料理の味付けが変わる
  •  置き忘れや忘れ物が増える

気分の落ち込み・混乱

認知機能が低下すると、精神的に落ち込んだり混乱したりする頻度が高くなります。
次のような症状に注意しましょう。
  •  少しのことで怒るようになった
  •  財布を置いた場所がわからなくなり人に盗まれたと思い込む
  •  活力がなくなってきた
  •  趣味や日々の習慣への興味がなくなってきた
  •  生活がだらしなくなった

集中力の低下

認知症を発症すると、集中力が低下する場合があります。
次のような症状がみられた際は注意しましょう。
  •  計算や運転のミスが増えた
  •  本やドラマのストーリーの流れを追えなくなる
  •  手芸や家事など集中力が必要なものを投げ出すようになった
  •  約束を守らなくなった

時間や場所の感覚が乱れる

今いる場所、時間などの感覚が乱れることで、普段の生活習慣が行えなくなる場合があります。
認知症がある程度進行してから起きる症状ではありますが、初期段階でも起きる可能性があるため確認しておきましょう。
  •  今の日付がわからない
  •  さっきまで電話していた人の名前がわからない
  •  近所でも道に迷ってしまうことがある

身だしなみの変化

認知症を発症すると、これまで気を遣えていた身だしなみに変化が表れることがあります。具体的には、次のような症状に注意しましょう。
  •  同じ服ばかり着るようになった
  •  清潔感が失われてきた
  •  女性の場合、化粧をしなくなった
  •  男性の場合、ひげを剃らなくなった
  •  髪形を整えなくなった
  •  服装の組み合わせがおかしくなった

<チェックリスト>たとえば日常生活で、こんな症状が現れたら認知障害のサインかも

  • 家電(電子レンジ、洗濯機、電動髭剃り、血圧計)など、いつも使っていたものが使えなくなる
  • 買い物のたびに同じもの(トイレットペーパー、ティッシュ、調味料、食材、電池 etc)を買ってくる
  • 混乱しているような様子でイライラすることが増える
  • 道に迷う
  • 部屋が散らかっている。タンスや押し入れ、水回りがぐちゃぐちゃになっている
  • 周囲の人とのトラブルが増える
  • 「バカになったみたい」「もうダメね」「死んじゃった方が楽」といった発言をする
  • 確認することが増える
  • 人とのかかわりを断るようになる。会話を終わらせようとする
  • 引きこもりがちになる
  • 薬を正確に飲めていない。薬がたくさん余っている。残薬の数が合わない
  • お金について心配したり、執着したりするようになる
  • 病院の通院日を忘れる。予約日や時間を間違える
  • 小銭が増える(計算しにくくなったり、計算が面倒になったりしていつもお札で支払うため)

認知症が進行すると現れる症状

 
認知症の症状には、「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD:Behavioral and psychological symptoms of dementia)」があります。
それぞれ、どのような症状なのか詳しく見ていきましょう。

中核症状

記憶障害

新しいことを記憶できなくなったり、直近で起きたことを思い出せなくなったりします。

症状が進行すると、以前から記憶していたことも思い出せなくなります。

見当識障害

時間や場所、季節感などの感覚が薄れていき、迷子になったり遠くに行こうとしたりするようになります。

さらに進行すると、自分の年齢や家族の存在などの記憶も薄れていきます。

理解・判断力の障害

思考にかかる時間が長くなり、同時に2つ以上の事象が重なった状態では理解することが難しくなります。
また、小さな変化や普段と異なる出来事が起きた際に混乱することが増えます。

実行機能障害

同じものを購入したり、複数の行動を同時に進められなくなったりします。

例えば、同じ調味料を複数購入してしまう、電子レンジで温めている間にフライパンで料理をすることができない、計画通りに物事を進められないなどです。また、予想外の出来事が起きたときに対処できなくなります。

感情表現の変化

自分が置かれている状況を正しく認識できなくなるため、その場にそぐわない感情表現をするようになります。

例えば、「そのようなばかなことはあるか」と言われた場合、自分そのもののことを「ばか」と言われたと思って怒るような場合があります。

行動・心理症状(BPSD)

行動・心理症状(BPSD)は、本人の性格や生活環境、人間関係などの要因が関連している行動や心理面の症状です。
例えば、次のような症状が表れます。
  •  認知能力の低下を自覚して元気がなくなる
  •  できなくなることが増えて自信を失って何もかも面倒になる
  •  人にものを盗られたと思い込む
  •  妄想で自分が誰かに狙われているなどと言う

軽度認知障害(MCI)を疑ったら心がけたい3つのこと

 
軽度認知障害(MCI)と診断された場合や、その疑いがある場合でも、日常生活での心がけ次第で、認知症への進行を遅らせられる可能性があります。以下では、MCIの段階で取り組みたい対策について紹介します。

生活習慣病の予防・治療

高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、血管障害のリスクを高め、認知機能の低下につながります。

定期的に医療機関を受診し、適切な治療を続けることが大切です。特に、中年期(40~64歳)からの生活習慣病の管理が、将来の認知症予防において重要な役割を果たします。

運動習慣の継続

ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動は、脳の血流を改善し、認知機能の維持に役立ちます。

実際に、定期的な運動(週3回、週2時間以上)を行っていた方は、認知症になる危険性が低いことがわかっています。これは、1日30分程度のウォーキングを週4回以上行うことで達成できる運動量です。

医療機関の早期受診

早期に診断を受けることで、適切な治療や対応につながりやすくなります。軽度認知障害(MCI)の段階で医療機関を受診し、医師の指導のもと、食生活の改善や運動習慣を身に付けるなどの対応を行うことで、認知症に進行するリスクを軽減できる可能性があります。

軽度認知障害(MCI)を疑ったら何科を受診すべき?

軽度認知障害(MCI)が疑われる場合は、以下の医療機関を受診しましょう。

 物忘れ外来
 神経内科
 精神科
 脳神経外科

これらの科は、かかりつけ医からの紹介で受診することも可能です。まずはかかりつけ医を受診し、相談するとよいでしょう。どの医療機関を受診すべきか迷う場合は、自治体の地域包括支援センターに相談すると案内してもらえます。

少しでも認知症のような症状が表れたら、早めに医療機関を受診することが大切です。とはいえ、ご本人が受診したがらないこともあるかもしれません。そのような場合は、まずご家族から医師に相談してみましょう。

MCI・認知症の特徴を知り、ご自身やご家族の認知症へ備えよう


認知症は進行性の病気です。少しでも認知症が疑われる場合は早めに医師に相談することをおすすめします。
最初はご本人が受診を拒否することもあるかもしれません。そのような場合も、まずはご家族から医師に相談するとよいでしょう。

ご自身やご家族の方の、将来の認知症発症やそれに伴う介護が不安な方は、サインを見逃さないように気を付けながら、認知症を発症した場合に備え認知症保険へのご加入もぜひご検討されてはいかがでしょうか。

    
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

菊池 大和[医師]

医療法人ONEきくち総合診療クリニック理事長・院長。地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、活動が評価され2024年11月にTIMEアジア版に掲載される。

資格:日本慢性期医療協会総合診療認定医・日本医師会認定健康スポーツ医・認知症サポート医・身体障害者福祉法指定医(呼吸器)・厚生労働省初期臨床研修指導医・神奈川県難病指定医 など

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