介護におけるコミュニケーションの効果は?
ポイントや事例別の対処方法


信頼関係を築くうえでコミュニケーションは必要不可欠です。
「親が介護状態になり、どのように接するべきか分からない」「うまくコミュニケーションが取れなくなった」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

介護では、高齢者や身体に不自由がある方と接する際に、一人ひとりの状態に配慮した適切なコミュニケーションが求められます。信頼関係を築くだけでなく、認知機能の維持・向上やトラブル防止のためにも、接し方を工夫することが重要です。

本記事では、介護におけるコミュニケーションの効果と重要性、言語・非言語の違い、スムーズな対話のポイント、認知症の方など事例別の対処法を中心に解説します。

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介護におけるコミュニケーションの効果と重要性

介護では、コミュニケーションは単なる会話ではなく、信頼関係を築き、不安を和らげ、認知機能を維持し、トラブルを防ぐための重要な手段です。

一般的に、介護を必要とするのは高齢者や身体に不自由のある方です。環境の変化による不安、入浴や排泄といった介助への羞恥心など、精神的な負担を抱えていることもあるでしょう。こうした不安を和らげるためには、相手の気持ちに寄り添った形でのコミュニケーションが欠かせません。

また、退職を機に社会とのかかわりが減った方もいるかもしれません。会話が減ると脳への刺激が少なくなりがちです。日常的に会話を交わすことで、脳が活性化し、認知機能の維持・向上が期待できます。

さらに、こうしたコミュニケーションにより介護を受ける方の体調・心境の変化に気付きやすくなり、誤解や誤ったケアによるトラブルを防げるでしょう。

このように、認知機能の維持やトラブル防止の観点からも、介護では豊かなコミュニケーションが求められます。

介護におけるコミュニケーションの種類

介護では、相手の状態に応じて適切なコミュニケーションをとることが重要です。コミュニケーションには次の2種類があります。

言語的コミュニケーション
非言語的コミュニケーション

介護を受ける方のなかには、発語が難しい方や難聴の方もいます。そのため、それぞれのコミュニケーションの特徴を理解し、相手の状態に合わせて使い分けることが重要です。

言語的コミュニケーション

文字や言葉を用いたコミュニケーションで、会話や電話、メール、手紙などが該当します。

聞く力や話す力、理解力・判断力が低下している方にとっては、スムーズなコミュニケーションが難しくなる場合もあります。特に、高齢者は加齢により聴力が低下しやすいため、早口や長い説明では伝わりにくくなりがちです。

そこで、話すスピードや言葉遣い、間の取り方などに配慮と工夫が必要になります。ゆっくり、簡潔に、相手の反応を確かめながら話すことを心がけましょう。

非言語的コミュニケーション

言葉に頼らないコミュニケーションで、ジェスチャーや表情、身ぶり手ぶり、絵などを用いて意思疎通を図ります。

コミュニケーションというと、言葉を用いたものを想像するかもしれません。

しかし、人が受け取る情報の大部分は「非言語的な要素」から成り立っています。言語情報が相手に与える影響はわずか7%で、93%が非言語情報(聴覚情報が38%、視覚情報が55%)であり、これをメラビアンの法則といいます。

つまり、非言語的情報は言語的情報よりも相手に与える影響が大きく、コミュニケーションにおいて非常に有用なのです。

特に介護では、相手の理解度や体調に応じて、視覚的・触覚的な伝え方を工夫することが大切です。

コミュニケーションのポイント7つ

介護では、一人ひとりの状況やニーズに合わせたコミュニケーションが求められます。適切なコミュニケーションは、相手の安心感を高め、信頼関係を築くために欠かせません。ここでは、介護現場でのコミュニケーションで押さえておきたい7つのポイントを解説します。

相手の求めていることを把握する

まずは、相手が何を求めているかを把握しましょう。

相手がただ話をしたいのであれば、遮らずに、じっくり聞いてあげてください。そうすることで、相手は安心して話せます。

また、アドバイスを求めているときもあります。この場合は、相手の悩みを明確にしなければなりません。具体的な問題を一緒に整理し、適切な解決策をともに考えることが大切です。

相手の意図に反するような対応をすると、信頼関係を築きにくくなってしまいます。相手の表情や言葉を観察し、その意図を汲み取る力が重要です。

簡潔に伝える

伝えたいことがあるときは、話す順番を考え、短くシンプルに伝えることがポイントです。

長い説明や複雑な話は、混乱を招く可能性があります。特に、認知機能が低下している方や難聴の方に対しては、簡潔に伝えるのが効果的です。平易な言葉で、区切りながら話すと相手も理解しやすくなります。質問や要求も、一度に複数伝えることは避け、1つずつ伝えていきましょう。

また、話すペースも意識するとよいでしょう。早口は避け、ゆっくり、はっきり話すと伝わりやすくなります。

相手に寄り添う

信頼関係を築くには、相手に寄り添う姿勢が大切です。介護のコミュニケーションでは、以下の3つの技術が効果的とされます。
  • 傾聴:相手の話に耳を傾け、関心を寄せること
  • 受容:相手の話を否定せず、受け入れること
  • 共感:相手の状況を理解し、感情に寄り添うこと
特に傾聴は、コミュニケーションで最初に求められることです。
相づちを打つことや、相手の言葉を繰り返すことで、話を聞いていることが相手に伝わりやすくなります。関心を寄せてもらえることがわかれば、相手も心を開きやすくなり、話しやすい雰囲気が生まれるでしょう。
日々のささいな会話からでも実践できるため、ぜひ意識して取り入れてみてください。

話題を選ぶ

育った環境や、どのような仕事をしてきたのかなど、人生の背景は一人ひとり異なります。なかには辛い経験や、思い出したくない話題があるかもしれません。

会話を弾ませるためには、相手が楽しく感じる話題を選ぶことが大切です。趣味のことや家族のことなど、相手が好む話題を選ぶと気持ちも明るくなるでしょう。

一方で、ネガティブな話題や、過去の辛い出来事には触れないほうが無難です。特に、家族の不仲、病気、戦争体験などには注意しなければなりません。
ただし、相手から辛い話を切り出してきたときはじっと傾聴し、受け止めるようにしましょう。話すことや共感を示されることで気持ちが軽くなることもあります。

非言語的コミュニケーションを取り入れる

高齢にともなう聴力や視力の低下、認知症による失語などで、言葉でのコミュニケーションが難しい方もいます。

そのような方とのやりとりでは、積極的に非言語的コミュニケーションを活用してみましょう。

非言語的コミュニケーションは、言葉が通じにくい方とも意思疎通を図れるため、介護現場では重要な役割を果たしています。前項で取り上げたメラビアンの法則でも、相手に影響をおよぼす非言語的情報は93%を占めていました。特に、表情やジェスチャーは、相手に安心感を与える重要なツールになるため、積極的に取り入れてみましょう。

質問の仕方を工夫する

相手から情報を適切に引き出すためには、質問の仕方が重要です。質問には2つの方法があります。
  • クローズドクエスチョン
    「はい」「いいえ」で答えられる質問です。回答しやすいメリットがある一方、話が広がりにくい欠点もあります。
    例:「トイレに行きたいですか?」、「暑いですか?」など

  • オープンクエスチョン
    「はい」「いいえ」で答えられない質問です。クローズドクエスチョンよりも話が広がりやすいですが、回答に時間を要する方もいます。
    例:「何がしたいですか?」、「どのような痛みですか?」など
身体が不自由な方や高齢者の場合、うまく質問に答えられないこともあります。回答を急かさず、相手の状態などに配慮しながら質問を使い分け、ときには選択肢を示してあげると、円滑にコミュニケーションができるでしょう。

座る位置を工夫する

相手がリラックスして話せる雰囲気を作るためには、座る位置も重要です。

真正面に座ると相手はプレッシャーを感じ、緊張してしまう可能性があります。そこで、少し横にずれて座るようにしましょう。

相手の斜め45度の位置に座ると、リラックスでき、安心して会話ができるとされています。これは、視線を合わせたりそらしたりを自然にできるためです。

また、距離感も大切です。介護では身体介助をするため、介護者は相手との距離感を測り損ねてしまうことがあります。

パーソナルスペースに配慮し、近すぎず、遠すぎない距離感で、心地良くコミュニケーションをとれるように意識してみましょう。

【認知症・興奮状態・帰宅願望】事例別の対応方法

コミュニケーションのポイントを理解していても、相手の状態によっては対応に苦慮することもあるでしょう。ここでは、認知症・興奮状態・帰宅願望の3つのケースについて、適切な対処方法を解説します。

認知症の方の場合

認知症の方は、症状による妄想や認知機能の低下から、事実と異なる発言をすることがあり、会話がかみ合わないケースもあります。

たとえ事実と異なる内容でも、否定したり責めたりせず、受け入れる姿勢を示しましょう。

≪例≫
  • 「昨日食べたのはカレーでなくて煮物ですよ」と無理に訂正しない
  • 「(故郷などに)帰るのは無理ですよ、わかりますよね」と否定しない、責めない
認知症の状態を理解し、受け止めることで相手の自尊心を傷付けず、安心感を与えられ、信頼関係を築けます。

また、認知症では聴力の低下も見られることがあります。はっきり、ゆっくり、平易な言葉で簡潔に伝えるようにしましょう。

認知症の方とのコミュニケーションのポイントは、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

興奮状態の方の場合

興奮状態の方や、介護を嫌がる方の場合、無理に距離を縮めようとするとさらに拒絶されてしまう可能性があります。

相手が見える距離で見守る、安全な場所で少しの間ひとりにするなど、相手が落ち着くまで、適度な距離で見守ることが重要です。

会話だけがコミュニケーションではありません。沈黙や適切な距離を取るのも一つの方法です。相手が落ち着いてから、徐々に距離を縮めていきましょう。

帰宅願望がある場合

帰宅願望がある方や、「自分はここにいても良いのだろうか」と不安を覚える方もいます。

そのような場合は、否定や、「もうすぐ帰れますよ」などその場しのぎの対応はせず、帰りたい気持ちを受け止めてください。

環境の変化からくる不安や、住み慣れた故郷を離れた寂しさなど、帰宅願望には理由があります。話に耳を傾け、帰りたい理由に対して理解・共感を示すことで、相手の不安を解消できるようにしましょう。

介護では相手を理解し、寄り添ったコミュニケーションをこころがけよう


介護におけるコミュニケーションは、相手との信頼関係を築くだけでなく、認知機能の維持やトラブルの防止でも重要な役割を果たします。

傾聴・共感・受容のスキルを意識すると、相手も心を開きやすくなり、安心感を与えられるでしょう。言葉だけでなく、表情やジェスチャーも交えると効果的です。

相手の状態に応じてコミュニケーション方法も使い分けましょう。例えば、認知症の方に対しては簡潔で明瞭な言葉を使い、興奮状態の方には無理に近づかず、適切な距離を保つといった対応が有効です。

 
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年3月10日

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