一人っ子が親の介護に備える方法
不安を減らすために知っておきたいこと


一人っ子のなかには、近い将来に親の介護が必要となった際、「自分一人で担わないといけないのではないか」と不安を抱く方も多いのではないでしょうか。何から準備すればよいのかわからず、悩むこともあるでしょう。

しかし、一人っ子であっても公的制度や介護サービスを活用すれば、負担を分散しながら無理なく介護に向き合えます。

本記事では、一人っ子の介護でよくある不安、具体的に取るべき行動や相談先、活用できる支援制度について詳しく解説します。

一人っ子の介護でよくある不安と現実

 
一人っ子は、兄弟姉妹がいる場合と比べて、介護に関する負担や不安を一人で抱えがちです。ここでは、一人っ子の介護でよくある不安と現実を見ていきましょう。

介護にともなう身体的な負担

一人っ子の場合、親の介護を一人で担う時間が多くなりやすいため、身体的な負担が大きくなる傾向があります。日常生活を送ることが難しくなった親を在宅で介護する場合、食事や排せつ、入浴などの介助を日常的に行う場面も増えるでしょう。

さらに、介護期間が長引けば親の身体能力は低下し、介助の負担も大きくなりがちです。仕事や家事と並行して対応しなければならず、介護者側の疲れも溜まりやすくなります。自身の健康管理にも配慮し、無理のない範囲で介護を続けることが大切です。

介護による精神的な負担

介護は日常生活のなかで継続的な対応が必要となるため、身体的な負担だけでなく精神的な負担も生じます。

特に一人っ子の場合は悩みを共有できる兄弟姉妹がおらず、孤独になりがちです。在宅介護か施設介護かといった重要な選択をしなくてはならない場面もあると、責任やプレッシャーを感じやすくなります。

「自分の判断は間違っていないか」「今後どのように対応したらよいか」などの迷いや、介護の先が見えないことへの不安が、ストレスにつながることもあるでしょう。

このような負担を軽減するためには、一人で抱え込まず家族や友人、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談することが重要です。専門家の意見を聞いたり、誰かに話を聞いてもらったりすることで、負担や迷いを軽減できる場合もあります。

併せて、自分自身の時間を作ることも大切です。趣味や休息の時間を意識的に取り入れ、心身のバランスを保つよう心がけましょう。

仕事との両立への不安

親の介護では、日常的なサポートに加え、通院の付き添いや緊急時の対応なども求められます。そのため時間的な制約が増えて仕事との両立が難しくなり、心身の負担が大きくなりがちです。

介護を理由に、働き方の見直しや離転職を検討せざるを得ないケースも少なくありません。2022年に介護・看護を理由に転職・離職した方は10.6万人です。
働く時間の減少や転職などによる収入の変化は、将来的な生活不安につながる可能性があります。こうした状況に備え、介護休業制度や時短勤務など、利用できる制度を事前に把握して活用することが重要です。長期的な負担を軽減するためにも、無理なく仕事と介護を両立できる環境を整えることは欠かせません。

介護にかかる費用への不安

介護には介護食やオムツなど日常的な出費に加え、介護用道具の購入など一時的な出費もあるでしょう。さらに、住宅のバリアフリー化やリフォームをする場合には、高額な出費が発生する可能性もあります。

また、介護サービスを利用する場合、原則として費用の1~3割が自己負担となります。ただし、公的介護保険制度の支給限度額を超えた分や、制度の対象外となるサービスは全額自己負担となるため注意が必要です。
「公的介護保険制度」を支給限度額まで利用した場合の1年間の自己負担額(1割負担の場合)は以下になります。

 

厚生労働省老健局老人保健課「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する件の公布について」(平成31年3月28日)より当社で試算

介護サービスを支給限度額まで利用した場合の自己負担額(自己負担割合が1割の場合)は全国平均であり、地域によって異なる場合があります。介護サービスの支給限度額を超えたサービス利用分は全額自己負担になります。

一定以上の所得がある65歳以上の方は2~3割負担となります。

施設介護を利用する場合、民間の介護施設への入居費用は約710万円が相場とされています。

株式会社LIFULL senior 老人ホーム検索サイト「LIFULL介護」に掲載された全国の有料老人ホームの個室タイプの料金プランデータから、中央値を算出して相場としています。(2025年9月30日時点)

費用は目安であり、地域・施設により異なります。

これらの費用を親の貯蓄で賄うことが難しい場合、介護費用を自分で負担しなければならない可能性もあります。

費用負担を軽減するためには、公的介護保険制度や低所得者向けの介護費用助成制度など、各種の公的支援を活用することが大切です。経済的な不安を減らすためにも、事前に利用できる制度を確認しておくとよいでしょう。

介護期間の長期化による負担

近年、医療技術の進歩により平均寿命が延びており、それにともない介護期間も長期化傾向にあります。介護経験者によると、要介護者の介護期間は平均55.0カ月であり、4年以上の介護が必要となるケースも少なくありません。
「いつまで続くのだろう」「将来の見通しが立たない」といった不安は、精神的な負担につながります。

こうした負担を軽くするためには、早い段階からの情報収集や準備が大切です。介護は長期的な視点で向き合う必要があるため、一人で抱え込まず、周囲の支援を受けながら進めておくとよいでしょう。

負担の蓄積によるリスク

介護が長期間にわたると、精神的にも体力的にも負担が蓄積しやすくなります。十分な睡眠がとれず、強いストレスを感じる状況が続くと、心身のバランスを崩す可能性があります。また、疲労やストレスの蓄積により感情を抑えられなくなることもあるでしょう。

その結果、暴言や暴力などの不適切な対応につながるおそれもあります。

このような状況に陥るのを防ぐためには、早い段階で周囲に相談し、適切な支援を受けることが大切です。介護サービスやレスパイトケア(介護者の休息支援)を取り入れて、心身の負担を軽減するとよいでしょう。定期的な休息を確保し、自分の体調へ配慮することも重要です。

親に介護が必要になったとき|知っておきたい最初の行動

ここでは、親に介護が必要になった際にスムーズに対応できるよう、最初に取るべき行動を紹介します。

地域包括支援センターへ相談する

最初の相談先となるのは「地域包括支援センター」です。各市区町村に設置されており、介護に関する相談窓口の役割を担っています。介護に関するさまざまな情報を提供し、専門的なサービスの利用につなげるなど、状況に応じたサポートを受けられます。

また、地域包括支援センターは、介護が始まる前の段階でも活用できるのが特徴です。将来の介護に不安がある場合は、早めに相談しておくとよいでしょう。

要介護認定を受ける

介護サービスを利用するには、要介護認定を受ける必要があります。まずは、対象となる家族が、公的介護保険のどちらの区分に該当するか確認しましょう。

65歳以上は第1号被保険者、40歳から64歳までの医療保険加入者は第2号被保険者となり、公的介護保険を利用したサービスを受けられる条件は、それぞれで異なります。

第1号被保険者は、「要介護・要支援の状態である」に対して、第2号被保険者では、「要介護・要支援状態になる起因が特定疾病である」場合に限られます。

介護サービスの利用を希望する場合、市区町村の窓口に申請し、認定結果に応じて利用できるサービスや限度額が決まります。

家族・親戚と話し合う

いとこや近くに住む親戚など、いざというときに頼れる人がいるかどうか確認しておくことで、精神的負担の軽減につながります。

また、元気なうちに本人の意思を確認しておくことも重要です。判断が必要となった際に迷いが少なくなり、本人の希望に沿った対応がしやすくなります。

一人っ子が親の介護をするときに活用できる介護サービス

 
一人っ子の状況で親の介護をする場合、身体・精神・経済とさまざまな面で負担が大きくなるため、介護サービスを利用して負担を分散することが大切です。一人で抱え込まず、以下に示すような介護サービスを活用しましょう。
  • 居宅サービス
    訪問介護や訪問看護、訪問リハビリ、訪問入浴など、自宅で受けられるサービスです。住み慣れた環境で生活を続けながら支援を受けられるため、在宅介護に適しています。

  • 通所サービス
    デイサービスやデイケアなど、日中に施設へ通い、レクリエーションやリハビリテーションを受けられるサービスです。本人の社会的な交流の機会になるだけでなく、介護者の休息時間を確保できる点でのメリットもあります。

  • 短期入所サービス
    ショートステイなど、介護施設に短期間だけ宿泊し、介護や生活支援を受けられるサービスです。介護者の不在時や休息時、在宅介護をできない場合などに一時的な利用ができ、介護者の精神的な負担の軽減にもつながります。

  • 福祉用具貸与・住宅改修
    手すりの設置や段差の解消、介護ベッドのレンタルなど、生活環境を整えるためのサービスです。転倒リスクや介護負担の軽減につながります。

介護悩みの相談先5つ

 
介護していくなかで発生する悩みや疑問は、どこに相談したらよいのでしょうか。以下では、代表的な相談先を5つ紹介します。

地域包括支援センター

高齢者の生活を総合的に支援する公的機関です。保健師、社会福祉士、ケアマネジャーなどの専門職による対応を受けられます。「どのような介護サービスを利用したらよいかわからない」といった初期段階での相談も可能なため、どこに相談すべきか迷った場合の窓口として利用しやすいでしょう。

また、介護予防や権利擁護、ケアマネジメント、総合相談などにも幅広く対応しています。このほかに地域の医療機関や介護サービス事業者とも連携し、適切な支援につなげます。

ケアマネジャー

介護サービスを利用する際に、ケアプラン(介護サービスの利用計画)を作成する専門職です。本人や家族の状況と希望に応じて適切なサービスの組み合わせを提案してくれます。

また、介護サービス事業者との連絡や調整を行い、利用者がスムーズにサービスを利用できるよう支援します。介護開始後も継続的に相談できるため、具体的にサービス利用を検討する段階で相談するケースが多い相談先です。

自治体の介護相談窓口

各市区町村には、介護全般(公的介護保険やサービスの利用など)に関して相談できる窓口が設けられています。「介護保険課」「保健福祉課」など、名称は自治体によって異なります。

要介護認定の申請手続きや制度の利用方法についての案内を受けられるほか、費用負担の軽減制度など、公的支援に関する情報も得られます。制度や手続きについて詳しく知りたい場合に適した相談先です。

民生委員

厚生労働大臣により委嘱された非常勤の地方公務員で、地域住民の立場から生活や福祉全般に関する相談受付、援助活動などを行っています。また、必要に応じて行政機関や専門職へつなぐ役割も担います。

介護に関する相談に乗るほか、必要なサービスの情報提供や調整も行います。地域の身近な相談先として、初期の不安を感じた段階でも相談しやすい点が特徴です。

かかりつけの病院や主治医

健康状態の変化や症状の悪化など、医療に関する悩みを相談する際は、かかりつけの病院や主治医が適しています。体調や持病などを踏まえたうえで、今後必要となるケアについて助言を受けられるだけでなく、適切な医療やサービスにもつなげてもらえます。

体調の変化や介護の必要性を感じたとき、まず相談しやすい相談先の一つです。

仕事と介護を両立するために役立つ制度

仕事と介護を両立させるためには、支援制度をうまく活用することが重要です。勤務先の就業規則を確認し、どのような制度があるのかを把握しておきましょう。また、勤務先に支援制度の規定がなかったとしても、育児・介護休業法に定めのある制度が利用できます。併せて確認しておくと安心です。

仕事と介護の両立を支援するおもな制度には、次のようなものがあります。
  • 介護休業:要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に取得できる
  • 介護休暇:対象家族が1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年に10日まで、1日または時間単位で取得できる
  • 所定外労働の制限(残業免除):介護が終了するまで、必要なときに所定外労働の制限を請求できる
  • 時間外労働の制限:介護が終了するまで、必要なときに1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働の制限を請求できる
  • 深夜業の制限:介護が終了するまで、必要なときに午後10時から午前5時までの深夜業の制限を請求できる
  • 所定労働時間の短縮等の措置:対象家族1人につき、次のいずれかの制度を利用開始から3年以上の期間で2回以上利用できる
    ■ 時短勤務制度(短日勤務、隔日勤務なども含む)
    ■ 時差出勤制度
    ■ フレックスタイム制度
    ■ 介護費用の費用助成
  • 介護休業給付:雇用保険の被保険者は一定の要件を満たすと、賃金の67%の給付を受けられる

一人っ子の介護で負担を軽減するためのポイント

一人っ子で介護を担う場合、「自分がやらなければならない」と、すべてを一人で抱え込んでしまいがちです。介護は長期間におよぶことも多く、無理を続けると心身ともに大きな負担になりやすいため、負担軽減に向けた工夫や考え方を知っておきましょう。

まず意識したいのは「一人で頑張りすぎない」ということです。介護サービスや自治体の支援を活用することで、身体的・精神的な負担を軽減できます。
正しい情報を早めに収集しておくことも大切です。公的介護保険制度や利用できるサービスを理解しておくと、必要なタイミングで適切な支援を受けやすくなります。

さらには、地域の相談窓口とつながりを持っておくことも重要なポイントです。介護に関する判断や対応に迷った場合でも、専門職へ相談することで適切な方向性を見つけやすくなるでしょう。

最後に、介護費用のおもな軽減制度を紹介します。
介護サービスを利用する際も一定の自己負担が発生するため、上手く活用して無理のない介護をしましょう。
  • 施設の食費・居住費(滞在費)の軽減
    低所得者を対象に、施設入所または短期入所したときの居住費(滞在費)や食費の負担を軽減する制度

  • 高額介護(介護予防)サービス費の支給
    1カ月に支払った介護サービスの自己負担額が一定の上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度

  • 高額医療・高額介護合算療養費制度
    医療保険と公的介護保険の自己負担額を合算し、1年間の合計が上限額を超えた場合に、その超過分が支給される制度

  • 社会福祉法人等による利用者負担軽減
    低所得者を対象に、社会福祉法人が提供する介護サービスの自己負担額を軽減する制度

  • 医療費控除
    1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告することで所得税の一部が還付される制度(介護に関する費用の一部も対象となる場合あり)

いずれの制度にも利用条件があり、事前に確認しておくと安心です。

一人っ子が介護で困らないために、今からできる備えと対策を万全にしよう


一人っ子の介護は、身体的・精神的・経済的な負担を一人で抱え込みやすく、不安を感じる状況に陥りがちです。しかし、すべてを一人で抱え込む必要はありません。早い段階で地域包括支援センターやケアマネジャーへ相談し、介護サービスなどを活用することで負担は分散できます。

また、介護が必要になった際は、要介護認定の申請や家族・親戚での話し合いを早めに行うことが重要です。仕事との両立に向けた制度や、介護費用の軽減制度についても事前に把握しておきましょう。

周囲の支援や制度を上手に活用しながら、無理のない介護体制を整えることが大切です。

 
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小玉 有紀[介護福祉士]

1986年生まれ。福祉系専門学校にて介護福祉士・介護事務士を取得。介護業務を経験。その後、生活相談員・ケアマネジャーとしても勤務。全国展開する有料老人ホームにてアセスメントツールの開発事業に携わる。また系列施設で社員研修の講師となる。現在も、ケアマネジャーとして勤務するかたわら、ライターとして活動中。

資格:介護福祉士・介護事務士・介護支援専門員

公開日:2026年5月22日

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