近年、夫や息子など男性が介護を担うケースもみられます。男性の介護者が増えてきた背景としては、晩婚化や未婚率の上昇、核家族化などによって、家族のなかで介護を担える人が限られてきていることが挙げられます。
こうした社会背景から、「息子が母親を介護する」という形は特別なものではなくなりつつあるといえるでしょう。今後も家族構成や社会構造の変化にともない、息子が介護を担う場面が増えると考えられます。
息子が母親の介護を担う場合、介護そのものの負担だけでなく、異性介護ならではの悩みや、生活環境にストレスを抱えることがあります。ここでは、介護で息子が抱えやすい悩みを解説します。
母親の介護では、異性の介護に抵抗感を抱くことがあります。特に、着替えや排泄・入浴介助など身体に触れるケアでは、介護する側・される側の双方が戸惑いや気まずさを感じやすいでしょう。
母親側も、「息子には頼みにくい」「恥ずかしい」という思いから、必要な介助をためらってしまうケースも少なくありません。
また、下着や衣類、スキンケア用品など、自身になじみのないものの選び方に悩むこともあるでしょう。
母親の介護を担う息子は、働き盛りの年代であることも少なくありません。これまで仕事中心の生活を送り、家事経験が少ないまま介護に直面することもあるでしょう。
介護が始まると、食事の準備や洗濯、掃除といった家事に加え、通院の付き添いや服薬管理なども必要になります。
仕事を続けながら、慣れない家事と介護を同時にこなす必要があり、戸惑いやストレス、不安を感じる方もいます。
仕事と介護の両立には、心身ともに大きな負担がかかりがちです。
通院の付き添いや急な呼び出しなどで、仕事を中断しなければならない場面もあるかもしれません。時間に追われる生活が続くと、慢性的な疲労が蓄積し、心身への負担も大きくなるでしょう。
また、残業や出張を断らざるを得なくなり、仕事のパフォーマンス低下や昇進機会に影響がおよぶ可能性もあります。こうした両立の負担による介護離職は、社会的な問題にもなっています。
加えて、介護サービスや通院費などの費用もかかります。十分な貯蓄がなかったり、民間の介護保険に加入していなかったりすると、経済的な不安を感じやすくなるでしょう。
「母親の介護は自分がやらなければ」と強い責任感を抱き、一人で抱え込んでしまう方もいます。特に、頼れる家族が少ない場合は、負担が集中しやすくなるでしょう。
また、介護は短期間で終わるとは限りません。年単位で継続するケースも多いため、完璧を目指して無理を続けると、心身ともに疲れ切ってしまい、介護そのものが続けられなくなる可能性もあります。
慣れない介護や家事を、仕事と両立しながら続けることは、身体的にも精神的にも大きな負担です。無理を重ねることで、介護する側・される側の双方が疲弊し、共倒れになる可能性もあります。
また、介護疲れやストレスが限界を超えると、虐待につながる恐れも否定できません。厚生労働省の調査※によると、高齢者虐待を行う人の続柄で最も多いのは38.9%の「息子」で、「夫」23.0%、「娘」19.3%がこれに続きます。虐待の発生要因には、「認知症の症状」や「介護疲れ・介護ストレス」などが挙げられています。
介護は一人で抱え込まず、限界まで耐える前に周囲や介護サービスを頼ることが大切です。
介護は、長期化することも考えられます。そのため、一人で頑張りすぎずに早い段階から周囲の支援や利用できる制度を取り入れ、無理なく続けられる環境を整えることが大切です。
ここでは、負担を軽減するための対処法を紹介します。
仕事を続けながら介護を行う場合は、まず勤務先で利用できる制度を確認してみましょう。
介護休暇は、介護が必要な家族がいる場合に取得できる休暇制度です。対象家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日まで取得できます。1日単位だけでなく半日単位でも取得できるため、介護サービスの手続きや通院の付き添いなどにも利用しやすいでしょう。
また、
介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、最大3回に分けて取得できます。休業中は
一定の条件を満たせば、雇用保険から介護休業給付金を受給でき、賃金の67%相当が支給されます。
介護が始まったばかりの時期は、今後の介護方針や必要なサービスの利用を検討するタイミングです。こうした制度を理解し、仕事と介護を両立しやすい体制を整えましょう。
介護休暇や介護休業については、以下の記事で解説しています。併せてご覧ください。
介護で活用すべき制度とは?介護休業と介護休暇