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寝たきりの方の介護方法は?
必要となる介護や負担を減らすポイント


寝たきりの方には、一人ではできないことが多くあります。そのため、日常のさまざまなことに対して介護が必要です。しかし、具体的にどのような介護が必要なのかわからない方も大勢います。

また、介護は大変だという印象が強くあり、寝たきりの方の介護を不安に感じている人もいるでしょう。

この記事では、寝たきりの方に必要な介護を具体的に紹介したうえで、介護の負担を減らすポイントや介護サービスを利用する手順などを解説します。

寝たきりの方に必要な介護

寝たきりの方には、おもに以下の4つの介護が必要となります。

清拭や洗髪

寝たきりの方は入浴が困難で、衛生面が疎かになりがちです。清潔が保たれていないと体調を崩す原因にもなるため、毎日の全身入浴は無理でも、少なくとも週に1回洗髪をし、本人の体調に合わせて適切な頻度で清拭を行ないましょう。

洗髪は基本的に仰向けの状態で行ないます。本人の好みに合わせた温度のお湯を用意し、シャンプーで頭皮をマッサージしながら洗いましょう。その後お湯ですすぎ、タオルで水分を拭き取り、ドライヤーで乾かすまでが一連の流れです。

洗髪時にはおもに以下の点に気を付けましょう。
  • 寝たきりの高齢者のなかには、温度に鈍感になってしまっている方もいるため、お湯やドライヤーの使用時のやけどに注意する
  • 身体を冷やさないため、室温は24度前後に設定し、さらに衣類を濡らさないようにフェイスタオルを首に巻く
清拭は、お湯で湿らせたタオルを使って身体を拭く行為です。寝たきりの方の場合、上半身、下半身、陰部の順番で全身を拭きます。湿ったタオルで拭いたあとは、乾いたタオルで水分を拭き取りましょう。

清拭時のポイントは以下のとおりです。
  • 事前に排泄を済ませておく
  • 身体の末端から心臓に向かって拭く
  • プライバシーへの配慮や身体の冷えなどを考慮し、服を脱がせたあとはバスタオルで覆うと良い
清拭は血行促進や感染症予防などの効果も期待できるため、できるだけこまめに行ないましょう。

食事の介助

寝たきりの方は嚥下機能が低下しており、食事がうまく飲み込めません。誤嚥性肺炎など命にかかわる事態になる可能性もあるため、適切に介助をしましょう。

食事の際は、上半身を90度に近い状態まで起こすと、誤嚥防止となります。食べ物を口に運ぶ際は、スプーンに乗せる量に気を付けてください。飲み込む力が弱いため、少なめの量にしましょう。

食事を口に運ぶペースは焦らず、しっかりと飲み込んだのを確認しながらゆっくりと進めてください。

食事中にむせることが多い場合、食べ物の形態を変えます。例えば、ごはんをお粥に変えたり、野菜を細かく刻んでとろみを付けたりするとよいでしょう。食事が終わったら口の中をゆすいだり、歯磨きをしたりして、口内を清潔に保ちます。

排泄の介助

寝たきりの方のなかでも、自身でトイレに行ける場合とトイレに行くのが困難な場合があります。

自身でトイレに行ける場合は、自分でできることは可能な限り自身で行なうように促しましょう。そうすることで自尊心の低下を防いだり、筋力の低下を予防したりするメリットがあります。

一方、トイレに行くのが困難な場合は、排泄をルーティン化するとよいでしょう。例えば、食後や寝る前など毎日決まったタイミングでトイレに行くようにすれば、失敗が少なくなります。また、排泄の際はポータブルトイレやおむつを使いましょう。ポータブルトイレはベッドの横に置いておけば、すぐに使えて安心です。

ただし、臭いの問題があるため、使用後は早めに排泄物を処理しなければなりません。おむつの使用は、意思の疎通が難しくなり、尿意や便意が伝えられなくなった場合の最終手段にしてください。

排泄の介助は、介護者と被介護者の身体的・精神的負担が大きいため、プライバシーや自尊心への配慮を踏まえて相談しながら行なうようにしましょう。

床ずれの予防

寝たきりの場合、長時間同じ体勢となり、皮膚の一部が壊死する「床ずれ」になる可能性が高まります。床ずれは敗血症などの重篤な病気の原因にもなるため、適切な対応が必要です。

まず重要なのは、定期的に体位変換を行なうことです。体位変換の際には、シーツや服のシワを伸ばすようにしましょう。細かなシワでも、皮膚を圧迫して床ずれの原因になり得るからです。

また、床ずれ防止のマットレスや、自動で体位変換できる電動ベッドなどを取り入れるのもよいでしょう。公的介護保険でレンタルできる場合もあり、負担も少なくなります。

寝たきり介護の負担を減らす3つの方法

寝たきりの方の介護は、身体的にも精神的にも負担が大きくなります。そのため、事前に介護の負担を減らす方法を把握しておくとよいでしょう。

介護サービスを利用する

専門家が介護の手助けをしてくれる、介護サービスを利用して負担を減らしましょう。介護サービスにはおもに、居宅サービスと施設サービスがあります。

居宅サービスとは自宅で受ける介護サービスのことで、ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事や洗髪、排泄などの介護を行ないます。ほかにも理学療法士が自宅を訪問し、自立を目指すリハビリテーションを行なうのも居宅サービスです。

一方施設サービスとは、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などに入所して受ける介護サービスになります。

以上のような介護サービスを利用するためには、まず要介護認定の調査を受けなければなりません。

要介護認定の調査の結果次第で、利用できる介護サービスの頻度や内容に違いが生じます。要介護認定については、のちの見出しで詳しく解説します。

施設に入居する

寝たきりの方でも受け入れ可能な施設に入居するのも一つの手段です。

施設では、専門家による適切なケアや見守りなどの体制が整っており、安心して介護を任せられます。面会や外出の許可が出る施設もあるため、会えなくなる心配もありません。

寝たきりの方は、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなどへの入居を検討できます。それぞれの施設の違いは、のちほど解説します。

専門家や親戚に相談する

介護で不安なことや困ったことなどがあるときは、一人で抱え込まずにケアマネージャーなどの専門家に相談してください。

また、介護は同居家族だけでなく、別居家族も協力して行なうものです。親戚などに、介護を手助けしてもらえないか相談してみましょう。

介護者が集まる会を定期的に開催している自治体もあり、それに参加するのもおすすめです。誰かに話すことで、精神的な負担が軽減される場合もあります。

介護サービスを利用するための手順

介護サービスを利用するためには、要介護認定が必要です。また、要介護認定の結果によっては、公的介護保険を活用して介護サービスの自己負担額を減らせます。

ここでは、要介護認定の申請から介護サービスが利用できるようになるまでの手続きを確認しましょう。

要介護認定の申請をする

要介護認定とは、必要な介護の程度を要支援1~2、要介護1~5の7段階に分けて判定する仕組みのことです。要支援は、トイレや食事などの日常生活は一人で送れますが、洗濯や掃除などの家事や、機能低下の度合いによっては入浴における支援が必要な状態になります。

一方要介護は、入浴や排泄、食事など日常生活のほぼ全般において介護が必要な状態です。要介護の数値が大きくなるほど、必要な介護の量が増えます。寝たきりの方は、ほとんどの場合が要介護5と認定される傾向です。

要介護認定の調査を受けるには、市区町村に申請してください。本人だけでなく、家族が申請しても問題ありません。申請の際は、申請書や健康保険証、公的介護保険の被保険者証、マイナンバーカードなどが必要です。

認定調査を受ける

ケアマネージャーなどの調査員が自宅を訪ね、認定調査を行ないます。調査は本人だけでなく、家族に対しても行なわれるため、事前に都合の良い日を相談しておきましょう。調査は、5つの基本調査項目に則り行なわれます。

基本調査項目のうちの一つには、視力や聴力、寝返りや起き上がりの可否など身体機能を調べるものがあります。食事や排泄の状況など、生活機能の調査も基本調査項目です。

ほかにも意思の伝達などの認知機能調査や、物忘れなどの精神・行動障害の調査、買い物や調理など社会生活への適応の調査が基本調査項目に含まれています。

基本調査項目以外にも、14日以内に受けた医療や家庭環境なども聞き取り調査の対象です。調査の際は、正直に答えるようにしましょう。

特に本人に認知症がある場合、できないことをできると答えるおそれもあるため、本人に代わって家族が答えられるように準備しておきましょう。

審査判定後ケアプランを作成する

訪問調査の結果をもとに、要介護認定の一次判定が出ます。その後は、主治医の意見書も参考にしながら、保健や医療、福祉の専門家が二次判定を行ないます。申請から結果が出るまでは、30日ほどかかると考えておきましょう。

要支援、または要介護の認定が出たあとは、介護サービスを利用するためのケアプランを作成しなければなりません。

ケアプランとは、介護状態の悪化を防ぎながら自立を促すことを目的とした、介護サービス利用のための計画書のことです。

要介護者の場合、ケアプランを作成するためには、まず居宅介護支援事業所に依頼しましょう。その後、事業所のケアマネージャーが利用者と面談し、一人ひとりに合ったケアプランを作成します。完成したケアプランに利用者が同意すれば、各事業者と契約して介護サービスを利用できるようになります。

詳しくはこちら

寝たきりでも入居可能な施設について

介護施設への入居も、介護の負担を減らす手段の一つですが、どのような施設でも入居できるわけではありません。

寝たきりの方が入居できるのは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院、介護付き有料老人ホームなどです。特別養護老人ホームは、介護度が高い方でも入居しやすい施設で、月額費用が抑えられるのが特徴です。

介護老人保健施設は、3カ月~1年ほどの短期利用の施設であり、原則として終身利用はできません。在宅復帰を目指した医療ケアに力を入れており、月額費用は8~14万円程度です。

介護医療院は長期間の療養を必要とする方が入居する施設で、基本的に医師が常駐しているため、胃ろうや点滴、薬の処方など日常生活を送るための医療行為が受けられます。月額費用は8~14万円程度です。

介護付き有料老人ホームは民間が運営している施設で、月額費用は15~30万円程度が相場です。さらに、初期費用として数百万円が必要となる場合もあります。介護スタッフの常駐に加え、イベントやレクリエーションに力を入れているなど、施設ごとに特徴が異なります。

なお、各施設の費用相場はあくまでも目安です。実際の費用は介護度や負担割合によって変動します。

寝たきりにならないための3つのポイント

寝たきりの方の介護は、介護者と被介護者の両方にとって負担が大きいため、なるべく避けたいと考える方も多いでしょう。そこで最後に、寝たきりにならないためのポイントを3つ紹介します。

運動を心がける

まずは、日頃から運動するようにしてください。負担にならない程度のストレッチや散歩などで構いません。特に、足腰の筋力を衰えさせないことを意識するとよいでしょう。運動が難しい場合や、運動に慣れていない場合などは、寝ている状態から座った状態になることから始めるのがおすすめです。座るための筋力やバランス感覚の向上が期待できます。

人と交流する

長期間脳に刺激がない状態だと、認知症や免疫力の低下につながります。そこから寝たきりになるおそれがあるため、定期的に人とのかかわりを持ち、会話をして脳に刺激を与えるようにしてください。

家族との会話も良いですが、デイサービスなどの介護サービスで知り合った方との交流もおすすめです。誰かと交流することは精神安定につながり、前向きな気持ちになれたり、うつ病の予防になったりします。

食事に気を使う

食事に気を使うのも、寝たきりにならないためには重要です。栄養が足りず免疫力が下がり、そこから感染症になって、最終的に寝たきりになることも少なくありません。また、バランスの悪い食事ばかりを続けている場合も、肥満や高血圧のリスクが懸念されます。

大切なのは、栄養バランスの良い食事を適切な量だけ食べることです。また、食事の際はよく噛んで、脳を活性化させましょう。誤嚥性肺炎などの病気の予防のために、口腔内のケアも欠かさないようにしてください。

無理なく寝たきりの方の介護をしよう


寝たきりの方の介護では、清拭や洗髪、食事の介助、排泄の介助、床ずれの予防などが必要になります。介護者と被介護者の両方の負担が大きいため、介護サービスを利用するのがおすすめです。悩みがあるときは抱え込まず、周囲の人や専門家などに相談してください。

また、施設への入所も選択肢として考えておきましょう。寝たきりにならないために、運動や食事に気を使ったり、人と交流したりするのも重要です。

 
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行なう。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行なっている。

公開日:2023年11月22日

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