8種類の扶助からなる生活保護
生活保護はあくまでも最低限度の生活を維持できるよう支援する制度です。したがって、換金できる資産を持っていれば売却して現金化し、労働する能力があるなら可能な方法で働き、ほかの制度で受けた給付をしっかりと活用することが前提とされています。
また、親族や周囲の方から援助を受けられるのなら、援助を受ける必要があります。
つまり、厚生労働大臣の規定する最低基準を満たしていないと判断された場合にのみ支援の対象となるのです。
生活保護は、生活を送るにあたって必要な費用の種類ごとに8種類の扶助に分けられています。扶助の種類と内容は次のとおりです。
扶助の種類 |
扶助の内容 |
生活扶助 |
食費・光熱費など生活で必要となる費用を基準額に応じて支給 |
住宅扶助 |
住居にかかる家賃について規定の範囲内で実費支給 |
教育扶助 |
義務教育で必要な学用品にかかる費用を基準額に応じて支給 |
医療扶助 |
医療サービスにかかる費用を直接医療機関へ支払い(本人負担はなし) |
介護扶助 |
介護サービスにかかる費用を直接介護事業者へ支払い(本人負担はなし) |
出産扶助 |
出産にかかる費用を規定の範囲内で実費支給 |
生業扶助 |
働くのに必要な技能習得などにかかる費用を規定の範囲内で実費支給 |
葬祭扶助 |
葬祭にかかる費用を規定の範囲内で実費支給 |
介護との関わりが深い生活扶助・医療扶助・介護扶助
なかでも介護扶助は介護サービスの費用に対して支給されるもので、生活保護を受給する要支援者・要介護者がサービスを受けるうえで欠かせないものです。
生活保護受給者は介護保険料負担が実質ゼロ
40歳以上65歳未満の生活保護受給者のケース
ただ、生活保護を受けている方は基本的に公的医療保険へは加入しておらず、第2号被保険者にはなりません。介護保険料は公的医療保険の保険料の一部として納付する仕組みであるため、公的医療保険に加入していない方はそもそも保険料を納付できないのです。
65歳以上の生活保護受給者のケース
生活保護を受けていても介護保険料の支払い義務はあるものの、その全額が生活扶助で賄われるため、本人の実質負担額はゼロとなります。
介護保険料の納付方法は「代理納付」が一般的です。福祉事務所が生活保護費から保険料を天引きすることで、受給者本人は特に手続きすることなく納付が可能です。ただし、受給開始直後など特定のタイミングでは、別途現金での納付が必要となるケースもあります。
生活保護非受給者への救済措置「境界層措置制度」
そのような場合に活用を検討したいのが「境界層措置制度」です。これは本来よりも低い所得基準の保険料や負担額を適用すれば生活保護の支給基準に該当しないものの、規程どおりの介護関連費用を支払うと生活保護水準に抵触してしまう「境界層」にあたる方を対象にした制度です。
具体的には、当制度が適用された方は、介護サービスの負担限度額や介護保険料の所得段階などが段階的に低い水準へと軽減されます。
介護関連の負担を軽減できれば生活保護を受ける必要がなくなるという方は、境界層措置制度を活用すると問題を解決できるかもしれません。
境界層措置制度を利用したい場合、まずはお住まいの自治体にある福祉事務所へ相談して境界層措置に該当するかを確認しましょう。
該当すると認められたあと、福祉事務所より発行される証明書を自治体の役所窓口に提出すれば手続きは完了です。