家族のなかで1人だけが介護をしている場合や、仕事や育児を理由にほかの親族から支援や金銭面の援助がない場合など、家族内での介護負担の偏りにも注意すべきです。
介護者に過度な負担がかかると不満を抱えやすくなり、介護者が孤立してしまうことで家庭内の不和やトラブルのリスクが高まります。
介護の重圧や孤立に加え、介護を受ける家族の症状や状態によってはさらにストレスが蓄積されてしまうでしょう。その結果、家族に対して虐待が起こる可能性もゼロではありません。
日々の介護で心身が疲弊していくと、家庭内に不和が生じやすくなります。また、「いつまで介護が続くかわからない」といった不安やストレスにより、「介護うつ」を発症するケースも少なくありません。
介護うつとは、介護に携わる本人やその周囲が、疲労やストレスによってうつ病を発症することを指します。介護うつの症状としては、何をしていても憂鬱な気分が続くこと、疲労感が強いこと、食欲の低下や睡眠障害(寝つきが悪いなど)が挙げられます。
ここでは、介護による家族崩壊を防ぐための予防法や対処法を5つ紹介します。
本格的な介護が始まる前に、一度家族で介護に関する方針や心構えを話し合い、共有をしておくとよいでしょう。
例えば、「介護は在宅・施設のどちらにすべきか」「費用は誰が・どこから出すのか」について決めておくと安心です。ほかにも「介護を中心的に担う人(主体者)は誰にするのか(夫・妻、子ども)」も話し合い決めておくとよいでしょう。
介護方針や心構えが決まったら、より具体的な役割分担も話し合っておきましょう。
すでに介護の中心人物(主体者)が決まっている場合、ほかの家族や親族との間で適切な役割分担を決めおくと、介護の中心人物(主体者)の負担軽減につながります。
例えば、「金銭面の援助」や「週末や一定期間に介護を交代・補助」など、それぞれ誰が何を担当するのかを話し合います。負担が誰かに偏り過ぎないようにすることが大切です。
介護離職による収入減や、ほかの家族から援助が受けられないことで家族崩壊に陥るケースでは、介護費用の減免制度を活用していない場合もあります。減免制度の活用は、経済的負担を軽減し家庭内で問題が起こるのを未然に防ぐ効果も期待できます。
介護費用の負担を抑えるのに役立つ減免制度としては、以下が挙げられます。
・医療費控除
・高額介護サービス費
・特定入所者介護サービス費
・高額医療・高額介護合算療養費制度
・社会福祉法人などによる利用者負担軽減制度 など
また、経済的に不安を感じている場合は、民間の介護保険に加入し備えておくのも、介護費用の負担を軽減する手段の一つです。
介護サービスの利用も、有効な手段の一つです。介護サービスの種類は複数あるため、家庭の状況や要介護者の状態、本人の希望に合ったサービスを選んで利用しましょう。介護サービスの利用は、本人の生活支援だけでなく、介護者の負担軽減にもつながるでしょう。
以下に介護サービスの一例を紹介します。
・訪問介護
・通所介護(デイサービス)
・介護老人福祉施設
・保険外のホームヘルパーによる生活援助サービス など
自治体によっては、紙おむつの助成や高額医療費の一部負担など、経済的負担が軽減できる制度があります。公的介護サービスを活用する場合には、要介護認定を受ける必要があり、その結果の区分で支給限度額が異なるため注意しましょう。
家庭内で介護の相談ができない場合は、専門的な悩みを相談できる機関や相手を見つけることが大切です。介護にともなう孤独感やストレスの軽減につながります。
相談先としては、ケアマネージャーや「介護家族の会」、地域包括支援センターなどがおすすめです。また、要介護者が認知症の治療をしている場合は、本人だけでなく介護者自身も認知症の専門医に相談してみるとよいでしょう。
専門医は患者の家族の悩みについても理解しています。患者に対して家族はどう対応すべきか、介護疲れを解消するにはどうしたらよいかなど、適切な助言を受けられるでしょう。