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介護で家族崩壊が起こる理由とは?
崩壊を防ぐための対処法


現在、または将来的な家族の介護について考えている方のなかには、介護が家族崩壊につながる恐れがあると聞き、不安を感じている方もいるかもしれません。

家族の関係が悪くなったり、何らかの問題が発生したりといった事態を避けるためには、あらかじめ対策方法を把握しておくことがおすすめです。

この記事では、「家族崩壊」とはどのような状態を指すのかを解説しつつ、介護が原因で家族崩壊が起こる理由、家族崩壊を防ぐための対処法についても解説します。

「家族崩壊」とはどのような状況を指す?

「家族崩壊」とは、一般家庭に存在する団らんや支え合い、地域社会とのかかわりなどが十分に機能しなくなる状況を指します。こうした家族は「機能不全家族」とも呼ばれます。

上記のような状態に陥る原因は、「虐待やDV」、「家族内での対立」「アルコール・ギャンブル依存症」「不倫や浮気などの不貞行為」「経済的困窮」などが挙げられます。これらは一例であり、原因は家庭によってさまざまで、小さなすれ違いがきっかけとなるケースもあります。

介護による家族崩壊は、「家庭内の対立」や「経済的困窮」が原因で起こると考えられます。

機能不全に陥っている家庭は、日常的な不仲や家庭内暴力、さらなる精神的・身体的虐待などのリスクが高まるため注意すべきといえるでしょう。

介護が原因で家族崩壊が起こる3つの理由

介護によって起こる家族崩壊には、どのような理由が挙げられるのでしょうか。その理由として考えられる3つを解説します。

経済的に不安定になる

介護は、経済面において不安定な状況を招くケースも少なくありません。

例えば、親や祖父母など、家族の介護ために仕事を辞める「介護離職」では介護者の収入が減ってしまいます。介護が長期間になった場合は、費用が予想以上にかさみ、困窮する事態も珍しくありません。

さらに、介護離職者の再就職は難しいという現実もあり、介護をしながら働くのが困難なケースもあるでしょう。

経済的な困窮が起こると、心の余裕がなくなってしまいます。その結果、家族崩壊へとつながる恐れがあるのです。

家族内での介護負担が偏っている

家族のなかで1人だけが介護をしている場合や、仕事や育児を理由にほかの親族から支援や金銭面の援助がない場合など、家族内での介護負担の偏りにも注意すべきです。

介護者に過度な負担がかかると不満を抱えやすくなり、介護者が孤立してしまうことで家庭内の不和やトラブルのリスクが高まります。

介護の重圧や孤立に加え、介護を受ける家族の症状や状態によってはさらにストレスが蓄積されてしまうでしょう。その結果、家族に対して虐待が起こる可能性もゼロではありません。

介護によって心身が疲弊している

日々の介護で心身が疲弊していくと、家庭内に不和が生じやすくなります。また、「いつまで介護が続くかわからない」といった不安やストレスにより、「介護うつ」を発症するケースも少なくありません。

介護うつとは、介護に携わる本人やその周囲が、疲労やストレスによってうつ病を発症することを指します。介護うつの症状としては、何をしていても憂鬱な気分が続くこと、疲労感が強いこと、食欲の低下や睡眠障害(寝つきが悪いなど)が挙げられます。

家族崩壊を防ぐための5つの予防・対処法

ここでは、介護による家族崩壊を防ぐための予防法や対処法を5つ紹介します。

あらかじめ家族内で介護の方針を決めておく

本格的な介護が始まる前に、一度家族で介護に関する方針や心構えを話し合い、共有をしておくとよいでしょう。

例えば、「介護は在宅・施設のどちらにすべきか」「費用は誰が・どこから出すのか」について決めておくと安心です。ほかにも「介護を中心的に担う人(主体者)は誰にするのか(夫・妻、子ども)」も話し合い決めておくとよいでしょう。

家族・親族間で話し合い適切な役割分担を決める

介護方針や心構えが決まったら、より具体的な役割分担も話し合っておきましょう。

すでに介護の中心人物(主体者)が決まっている場合、ほかの家族や親族との間で適切な役割分担を決めおくと、介護の中心人物(主体者)の負担軽減につながります。

例えば、「金銭面の援助」や「週末や一定期間に介護を交代・補助」など、それぞれ誰が何を担当するのかを話し合います。負担が誰かに偏り過ぎないようにすることが大切です。

介護費用の減免制度を活用する

介護離職による収入減や、ほかの家族から援助が受けられないことで家族崩壊に陥るケースでは、介護費用の減免制度を活用していない場合もあります。減免制度の活用は、経済的負担を軽減し家庭内で問題が起こるのを未然に防ぐ効果も期待できます。

介護費用の負担を抑えるのに役立つ減免制度としては、以下が挙げられます。

・医療費控除
・高額介護サービス費
・特定入所者介護サービス費
・高額医療・高額介護合算療養費制度
・社会福祉法人などによる利用者負担軽減制度 など

また、経済的に不安を感じている場合は、民間の介護保険に加入し備えておくのも、介護費用の負担を軽減する手段の一つです。

介護サービスを活用する

介護サービスの利用も、有効な手段の一つです。介護サービスの種類は複数あるため、家庭の状況や要介護者の状態、本人の希望に合ったサービスを選んで利用しましょう。介護サービスの利用は、本人の生活支援だけでなく、介護者の負担軽減にもつながるでしょう。

以下に介護サービスの一例を紹介します。

・訪問介護
・通所介護(デイサービス)
・介護老人福祉施設
・保険外のホームヘルパーによる生活援助サービス など

自治体によっては、紙おむつの助成や高額医療費の一部負担など、経済的負担が軽減できる制度があります。公的介護サービスを活用する場合には、要介護認定を受ける必要があり、その結果の区分で支給限度額が異なるため注意しましょう。

専門的な悩みを相談できる場所や相手を見つける

家庭内で介護の相談ができない場合は、専門的な悩みを相談できる機関や相手を見つけることが大切です。介護にともなう孤独感やストレスの軽減につながります。

相談先としては、ケアマネージャーや「介護家族の会」、地域包括支援センターなどがおすすめです。また、要介護者が認知症の治療をしている場合は、本人だけでなく介護者自身も認知症の専門医に相談してみるとよいでしょう。

専門医は患者の家族の悩みについても理解しています。患者に対して家族はどう対応すべきか、介護疲れを解消するにはどうしたらよいかなど、適切な助言を受けられるでしょう。

介護が原因の家族崩壊が解決できない場合

予防法や対処法を実施しても、介護や経済的負担の偏りが解消できず、解決困難なケースもゼロではありません。

話し合いなどを経ても解決ができなければ、法的に対処することが手段の一つとなるでしょう。その場合は、「家庭裁判所での手続き」が必要です。

家庭裁判所で「扶養請求調停」を申し立てると、調停委員が介護に必要な人的負担や家族の経済状況を確認します。併せて聞き取り調査も実施し、客観的な情報をもとに解決策を提示してくれるのです。

解決例としては、「介護を担わないほかの兄弟が介護者、もしくは要介護者に対して月々○万円の資金援助を行なう」などです。解決策に双方が合意すれば、調停成立となります。

もし合意後に解決策の内容や義務の不履行があれば、財産の差し押さえといった強制執行も可能です。また、提案された解決策に合意しない場合は、裁判所での「審判」の手続きに移行し、裁判官の決定に従う形となります。

介護で家族崩壊を起こさないためには、予防や適切な対処が重要


これまで家族関係が良好だったとしても、介護による収入の減少や負担の偏りなどから家族崩壊が起きてしまうことがあります。こうした家族を「機能不全家族」とも呼びます。

介護によって起こる家族崩壊の原因は、「経済的に不安定」「誰かに負担が集中しすぎる」「介護による心身の疲弊」といった理由が挙げられます。

家族崩壊を防ぐには、紹介した5つの予防法・対処法を実施することが大切です。また、将来の介護への経済的不安がある方は、民間の介護保険への加入もおすすめです。

 

朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

赤上 直紀

元銀行員。住宅ローンを通じて、多くのお客様のライフプランニングに携わる。住宅ローンは人生で一番の買い物と言われているため、慎重に契約すべきだと考える。現在は、編集者として金融機関を中心に、ウェブコンテンツの編集・執筆業務を行う。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士

公開日:2023年8月10日

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