老人ホームにはさまざまな種類があり、なかでも「サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)」と「有料老人ホーム」は、違いがわかりにくく混同されやすい住まいです。
両者は似ている部分もある一方で、法律上の位置づけや提供されるサービス内容、入居対象者などには明確な違いがあります。
サ高住とは、高齢者が安心して暮らせるよう配慮された賃貸住宅のことです。
「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」第5条に基づき、一定の居室面積やバリアフリー構造などの基準を満たした住宅として登録されています。
サ高住では、必須サービスとして「安否確認」と「生活相談」が提供されますが、介護サービスは住宅の基本サービスには含まれていません。介護が必要になった場合は、原則として訪問介護やデイサービスなどを外部の介護事業者と個別に契約する仕組みです。
ただし、サ高住のなかには、運営に関する基準を定めた厚生労働省令を満たし、都道府県知事から「特定施設」に指定され、定額で介護サービスを受けられるところもあります。
このように、サ高住は自立した生活を基本としながら、見守りがある環境で暮らしたい高齢者をおもな対象としている住まいといえるでしょう。
有料老人ホームは介護や生活支援サービスを提供する高齢者向け施設
有料老人ホームは、高齢者に対して食事・介護・家事・健康管理というサービスのうち1つ以上を提供する施設です。老人福祉法(第29条第1項)に基づいて設置され、設置主体は問わないため基本的に民間事業者が運営しています。
有料老人ホームは、入居者の状態や施設の方針に応じて複数の種類に分けられます。
介護付き有料老人ホームは、介護などのサービスを施設内で受けられるタイプの有料老人ホームです。
24時間体制でスタッフが常駐しており、入浴・排泄・食事などの身体介護を包括的に受けられます。そのため、原則として要介護者を入居対象としており、重度の認知症の方でも入居可能な施設が多く見られます。
ただし、医療的ケアの必要度や認知症の進行状況など、受け入れ可能な範囲は施設によって異なります。入居を検討する際には、対応可能なケア内容を事前に確認しておくことが重要です。
住宅型有料老人ホームは、生活支援サービスが付いた住まいです。食事の提供や見守り、安否確認などが基本サービスとして用意されています。
介護サービスは、サ高住と同様、必要に応じて外部の介護事業所と個別に契約する仕組みです。
そのため、現在は健康で体力的な心配のない方でも、将来的に介護が必要になる可能性を見据えて、早めに入居を検討するケースが多いタイプの施設です。
健康型有料老人ホームは、自立した高齢者を対象とした有料老人ホームです。日常生活において介護を必要としない方が入居し、食事の提供や生活支援サービスを受けながら、比較的自由度の高い生活を送れます。
一方で、要介護状態になった場合は原則として退去を求められるため、将来的に介護が必要になった際の住み替え先はあらかじめ検討しておく必要があるでしょう。
なお、現在では施設数が少なく、入居先の選択肢が限られているため、地域によっては該当する施設が見つかりにくい場合もあります。
ここでは、両者の違いを6つの要素から比較します。ご自身または家族に合った住まいを見つける判断材料の一つとして、確認しておきましょう。
| 比較項目 |
サ高住 |
有料老人ホーム |
| 契約形態 |
・賃貸借契約 |
・利用権方式 |
| 提供サービス |
・安否確認、生活相談のみが必須
・介護サービスは外部事業者と個別契約 |
・食事提供や生活相談などの支援を施設が提供
・介護付き有料老人ホームは介護サービスも包括提供 |
| 費用 |
・家賃、共益費、サービス費が基本
・介護サービス費は利用分のみ別途負担 |
・月額利用料が基本で、入居一時金がかかる場合も
・介護付きの場合は介護費用を含めた定額制が一般的 |
| 入居条件 |
・自立~要介護※まで幅広く対応
※介護型の場合
・認知症の状況や医療ケア内容に応じて制限あり
・60歳以上または要支援か要介護認定を受けていること |
・介護付き有料老人ホームのおもな対象は要介護者
・介護付きは原則65歳以上、住居型は60歳以上が基本
・条件は施設ごとで異なる |
| 設備 |
・バリアフリーの個室、キッチン、浴室付きなど住宅仕様 |
・介護付きでは、機械浴、ナースコールなど介護を前提とした設備が充実
・住宅型は施設ごとに設備の特色がみられる |
| 暮らし方 |
・自宅での生活と似ており、外出や生活リズムの自由度が高い |
・生活スケジュールがあり、見守りやサポートが手厚い |
サ高住と有料老人ホームとでは、入居時に結ぶ契約の種類が異なります。まずは契約形態の違いを確認しましょう。
サ高住は、賃貸借契約を結んで入居する住まいです。一般的な賃貸住宅と同様に、入居者が居住権を持ち、契約期間中は原則として住み続けられます。
なお、安否確認や生活相談などのサービス費用は、家賃とは別に月額で支払う仕組みです。
有料老人ホームでは、利用権方式(利用権契約)を採用しているケースが多く見られます。これは、居室そのものを借りるのではなく、施設の利用権を取得する契約形態です。
次に、日常生活を支えるサービス内容の違いを確認しましょう。サポートの範囲は、施設選びにおける重要な要素の一つです。
サ高住では、法律で定められた「安否確認」と「生活相談」が必須サービスとして提供されます。
安否確認は、定期的な声かけや訪問などを通じて、入居者の体調や生活状況を確認するものです。また、生活相談では、日常生活の困りごとや介護サービスの利用に関する相談ができます。
一方で、介護サービスは住宅の基本サービスに含まれていません。介護が必要になった場合は、訪問介護やデイサービスなどを外部の介護事業所と個別に契約して利用します。
有料老人ホームでは、食事提供や生活相談などの生活支援サービスを受けられます。住宅型でも、必要な方は外部や併設されている介護事業所の介護サービスが利用可能です。
介護付き有料老人ホームでは、介護保険サービスが包括的に提供されるのが特徴です。介護度が高くなった場合でも住み慣れた環境を変えずに生活を続けられる点がメリットといえるでしょう。
費用体系の違いを理解しておくことで、将来サ高住や有料老人ホームを利用する場合の金銭的な負担をイメージしやすくなります。
サ高住の費用は、家賃・共益費・サービス費を基本構成としています。介護サービス費は含まれておらず、利用した分だけ別途負担する仕組みです。
また、初期費用が比較的抑えられている物件も多く、敷金のみで入居できるケースがある点も特徴の一つといえます。
有料老人ホームでは、施設によって入居一時金が必要になる場合があります。
介護付き有料老人ホームでは月額費用はサ高住と比べて高くなる傾向がありますが、その分だけ介護体制や生活支援が充実しているのが特徴です。月額利用料の内訳例としては、居住費・食費・介護サービス費・その他費用が挙げられます。
住宅型有料老人ホームでは、介護サービス費は必要に応じて利用した分だけ支払うため、介護付き有料老人ホームよりも費用を抑えられるでしょう。
介護付き有料老人ホームでは、介護費用も定額で支払わなければなりません。費用の見通しを立てやすい反面、必要な介護が軽度な場合でも一定額の負担が発生する点を理解したうえで利用を検討する必要があります。
高齢者向け住宅を選ぶ際は、「現在の状態で入居できるか」だけでなく、「将来、介護度が上がった場合に住み続けられるか」という視点も重要です。