従来、死に差し掛かった際には医療機器を体につなぐことで、胃に直接栄養を流し込む「胃ろう」を使うなどの延命治療が行われてきました。しかし延命治療の段階では、寝たきりで意思疎通を取れないことも多く、人間の尊厳という観点で疑問が残るでしょう。
看取り介護は延命治療をせず、生活の質(QOL=クオリティー・オブ・ライフ)を重視します。食事や排泄を介助し、床ずれの防止など日常生活のケアを行い、残された時間を家族や友人とより穏やかに過ごせるようサポートを行います。延命治療だけでなく、医療や看護の観点におけるケアも行われません。
ターミナルケア・緩和ケアとの違い
ターミナルケア
余命に対して生活の質を向上することが目的である点は、看取り介護と同じです。しかし、看取り介護が食事や排泄の介助など「介護」をメインとしているのに対し、ターミナルケアは医療・看護的ケアを行います。治療での回復が見込めないと判断されたタイミングで始めることが多く、開始時期の選択は慎重に行われます。
緩和ケア
緩和ケアの特徴は、病気の診断や治療開始からほぼ同時期にケアを始めることです。最期の時期に特化したターミナルケアや看取り介護とは異なり、時期を限定せずに行われます。
看取り介護の流れ
適応期
本人にとっては、生活リズムや介護スタッフなどとの人間関係に適応するため、ストレスが溜まりやすくなる時期です。人によっては「自宅に帰りたい」と吐露することもあるでしょう。
安定期
この時期は、入浴や会話など今までどおりの生活を大切にしましょう。少量でも好きなものを食べるのもおすすめです。
不安定低下期
不安定低下期には本人の精神状態も悪化し、看取りケアの方針の見直しについて相談することも多い時期です。また、本人の状態によっては今後の状況や提供できるサービスについて説明がなされます。不安なことがある場合は医師やケアマネージャーなど身近なスタッフに相談するとよいでしょう。
看取り期
看取り期には、最期をどのように迎えるか具体的に決定します。急変時に延命治療を行うかなどの対応を決定して、医師や介護スタッフ、家族間で共有しておきましょう。
この段階で、最期のときに立ち会えるように家族や会わせたい人などに連絡を取ります。