介護リフォームの補助金とは?支給要件や対象工事と申請方法を詳しく解説


「家族に介護が必要になったのでリフォームしたい」と考えた時、予算が限られる中で何を優先すべきだろうかと迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

介護リフォームには、一定の条件を満たせば利用できる、公的介護保険による住宅改修費の支給という制度があります。

今回は、公的介護保険による住宅改修費の支給について、支給要件や支給額、対象となる工事を紹介します。また、公的介護保険による制度以外の補助金制度や、介護リフォームで注意したいポイントについても解説するので、参考にしてください。

介護リフォームの補助金とは

介護リフォームとは、介護や支援が必要な高齢者の暮らしをより安全なものにするためのリフォームです。

ここでは、介護リフォームの補助金や介護リフォームを要するタイミングについて解説します。

介護リフォームには公的介護保険が適用される

要介護認定で要支援1以上に認定された場合、介護リフォームに公的介護保険を適用させることができます。

国は在宅介護を重視しており、高齢者の自立をサポートするという考えから、介護に必要なリフォームを公的介護保険の給付対象としています。

公的介護保険における介護リフォームの正式な呼び方は「居宅介護住宅改修及び介護予防住宅改修」です。一定の条件を満たせば、改修費の一部が支給されることを覚えておきましょう。

介護リフォームが必要なタイミングはおもに2つ

介護リフォームの検討が必要なタイミングは、おもに以下の2つです。
  1. 被介護者が生活しやすい家にしたいと思ったとき
  2. 介護する側の負担を軽減したいと思ったとき
介護や介護予防が必要になった際、本人の日常的な動作を安全かつスムーズに行えるようにするために、介護リフォームを検討するとよいでしょう。

また、この先に被介護者の要介護度の区分が重くなっても、介護する側の負担が大きくならないよう環境を整える必要があります。

介護リフォームの補助金の支給要件

公的介護保険における住宅改修費(介護リフォームの補助金)が支給される要件は、以下の5つです。
  1. 制度の利用者が、要介護認定で要支援1・2、要介護1~5のどれかに認定されていること
  2. 制度の利用者が、介護保険被保険者証に記された住所に住んでいること
  3. 介護リフォームを行なう住宅の住所と、利用者の介護保険被保険者証の住所が同じであること
  4. 現在、制度の利用者が介護施設や病院などに入所・入院していないこと
  5. 原則として、過去に上限額まで住宅改修の補助金の支給を受けていないこと
公的介護保険の住宅改修制度は、利用者が要介護認定を受けていない場合は適用されないため注意が必要です。

住宅改修費は、ほかの介護サービスで決められている区分支給限度額とは別に支給されます。

また、利用者が介護施設や病院などに入所・入院していても、すでに退所・退院が決定しているときには、例外的に制度の申請を行える場合もあることを把握しておきましょう。

介護リフォームの補助金の支給額

ここからは、介護タクシーを利用する際の手続きと、必要な料金について解説します。公的介護保険における住宅改修費(介護リフォームの補助金)の支給額や、分割しての利用・再度の利用が可能かどうかを解説します。

最大18万円が支給される

支給の対象となる介護リフォームの工事費は、最大で20万円です。20万円の支給限度基準額のうち、所得に応じて1~3割は自己負担となります。

例えば、自己負担割合が1割の利用者が20万円の介護リフォームを行なった場合、2万円は本人の自己負担となり、18万円が公的介護保険から支給されるということです。

分割して利用できる

前述のとおり、公的介護保険における住宅改修費の支給限度基準額は、利用者1人につき20万円です。しかし、1回のリフォームで使い切らなくても構いません。

例えば、1回目の介護リフォームで5万円の工事を行なって支給を受けた場合、別の機会に15万円の工事を行なって支給を受けることができます。

再度の利用が可能な場合もある

上限の20万円まで住宅改修費の支給を受けられるのは、原則として利用者1人につき1回までです。

ただし、要介護認定において要介護度が3段階以上重くなった場合や、転居して住宅が変更になった場合には、制度を再度利用できます。

介護リフォームの補助金の対象工事は?

公的介護保険における住宅改修費(介護リフォームの補助金)が支給される工事は、あらかじめ定められています。

支給の対象となる住宅改修工事の種類を詳しく紹介するので、参考にしてください。

手すりを取り付ける工事

利用者の転倒を防いだり、移動の手助けになったりする手すりを取り付ける工事は、住宅改修費の支給対象です。

具体的には、以下のような生活に必要なところに手すりを設置した場合です。

● 玄関
● 廊下
● 階段
● トイレ
● 浴室

なお、手すりの形には指定がありません。本人が使いやすい形の手すりを、適切な高さで取り付けることが大切です。

段差を解消する工事

各部屋や外回りのアプローチなどの段差をなくす工事も支給対象となります。具体的な工事内容は、スロープの設置や床のかさ上げ、敷居を低くするといった方法で、住宅内の段差を解消するものです。

例えば、玄関の土間からフローリングに上がる段差を低くすれば、車いすのまま通ることができるようになります。

床材や通路面の材料を変更する工事

転倒の防止などを目的として、既存の床材や通路面の材料よりも滑りにくい材質のものに変更する工事を行なった場合も補助金が支給されます。また、車いすでは走行しにくい畳の床を、フローリングに変更する工事も同様です。

ただし、極端に滑りが悪い状態になると、かえってつまずき・転倒を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。

扉を引き戸などに取り換える工事

握力の低下からドアノブを回すことが難しくなったケースや、開き戸が障害となり車いすでの移動がしにくいケースに対応して、扉を引き戸などに変更するリフォームでも補助金を受け取れます。

重く開けにくい引き戸を、軽量で開けやすい引き戸に取り換える工事なども対象です。

便器を洋式便器などに取り換える工事

和式便器から洋式便器への交換、暖房便座や洗浄機能がついた便器への交換も住宅改修費支給の対象です。

また、もとの洋式便器を本人の使い勝手に合わせて、立ち上がりやすい高さにかさ上げしたり、向きを変えたりする場合も支給対象に含まれます。

上記のリフォームにともない必要になる工事

上記5つのリフォームに付帯する工事も制度の対象となっています。

例えば、以下のような工事です。

● 手すりを取り付けるための下地工事
● 浴室の床のかさ上げにともなう給排水設備工事
● 床材変更のための下地の補強
● スロープ設置にともなう転落・脱輪防止のための柵などの設置

介護リフォームの補助金の申請方法

実際に公的介護保険の住宅改修費(介護リフォームの補助金)の制度を利用するには、どのように申請すればよいのでしょうか。

制度の申請の流れと、補助金の支給方法の種類について解説します。

申請の流れ

要介護認定で支援や介護が必要であると認定された方が、公的介護保険での住宅改修費の支給を申請する際の一般的な流れは以下のとおりです。
  1. ケアマネジャーに相談する
  2. 施工業者と契約する
  3. 自治体に書類の一部を提出する
  4. 介護リフォームが実施される
  5. 施工業者に工事費を支払う
  6. 自治体に住宅改修費の支給を申請する
  7. 住宅改修費が支給される
自治体によって申請の流れや必要書類の種類・書式は異なるため、ケアマネジャーや施工業者に相談しながら申請を行なうとよいでしょう。

支給方法の種類

公的介護保険における住宅改修費の一般的な支給方法は、制度の利用者が施工業者に工事費を全額支払ったあと、自治体から補助金が支給される「償還払い」です。償還払いでは工事費を一時的に自分で用意しなければならないため、注意する必要があります。

ただし、自治体によっては、事前申請すれば「受領委任払い」への変更が可能です。

ここでの受領委任払いとは、利用者は公的介護保険の自己負担分のみを施工業者に支払い、残額は自治体から直接業者に支払われるという方式です。

受領委任払いの方法を希望する場合は、制度を申請する前に自治体に詳しく確認しておくとよいでしょう。

公的介護保険の住宅改修以外の介護リフォーム関連制度

公的介護保険における住宅改修のほかにも介護リフォームに関する制度があることを把握しておくと、いざというときに役立ちます。

自治体によっては、公的介護保険とは別に介護リフォームに関する補助金制度を設置していることがあるため、チェックしておきましょう。補助金の支給条件や支給額、対象工事は、自治体や制度によって異なります。

また、自治体や制度によっては、公的介護保険における住宅改修費の支給と併用できないケースもある点には注意しましょう。公的介護保険の住宅改修に適用されない部分を、自治体の補助金制度でカバーするという考え方が一般的です。

なお、地域の経済活性化のために、補助金制度を利用できる介護リフォームの施工業者が指定されていることもあります。

自治体の窓口やホームページなどで、制度の有無や概要を調べておくとよいでしょう。

介護リフォームの注意点

介護リフォームを実施する際に、注意したいおもなポイントは以下のとおりです。

● 状況にマッチしたリフォームを行なう
● 施工業者は慎重に選ぶ

一口に介護リフォームといっても、介護の内容や介護者・被介護者の体の大きさ、介護技術などは異なります。そのため、それぞれの状況に合わせたリフォームを行なうことが大切です。

また、施工業者を選ぶ際は、介護リフォームの豊富な実績のある業者に依頼すると安心できるでしょう。実際、介護やバリアフリーに関する知識や経験が不足している業者に施工を依頼し、介護リフォームが成功しなかったケースもあります。

施工業者を選ぶときには、ケアマネジャーに相談したり、数社の施工業者から相見積もりを取ったりするとよいでしょう。

介護リフォームの補助金制度を利用して生活環境をより安全に整えよう


介護や支援が必要な高齢者の生活をより安全なものにするためには、介護リフォームを検討するのも一つの方法です。

要介護認定で要支援1以上の判定が出ると、介護リフォームに公的介護保険を適用できます。一定の条件を満たせば補助金が支給されて経済的な負担を軽減できるため、身近な人の暮らしを安全に整えたいと考えている場合は、制度の利用を検討しましょう。

 
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2023年11月22日

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