介護保険料は確定申告の控除対象になる?
申請のために必要な基礎知識


40歳以上の方が全員加入する公的介護保険ですが、支払った保険料は確定申告の控除対象となるのでしょうか。結論からお伝えすると、控除の対象となり、税金の負担を減らすことが可能です。

本記事では、介護保険料控除のために必要な手続きや、支払った介護保険料の調べ方について紹介します。また、介護サービスの利用料や民間の介護保険の保険料が確定申告の控除対象になるか、解説します。

介護保険料は確定申告の所得控除対象になる

公的介護保険で支払った保険料は、所得控除の対象となります。

所得控除とは、税負担を減らせる制度のことです。所得税は、所得から所得控除分を差し引いて残った金額(課税所得)をもとに計算します。つまり、所得控除で差し引かれた分は税金の計算対象にならないということです。したがって、所得控除が多いほど、税負担を軽くできます。

所得控除は、基礎控除、配偶者控除、寡婦控除など15種類に分けられていますが、介護保険料はそのうちの社会保険料控除の対象となります。

なお、民間の介護保険で支払った保険料も所得控除の対象です。民間の場合は15種類のうちの生命保険料控除に分類されます。詳しくは、のちの見出しで解説します。

控除を受けるために知っておきたい基礎知識

ここでは、控除される範囲や手続きなど、介護保険料控除を受けるために知っておきたい基礎知識を紹介します。

介護保険料の控除の範囲

介護保険料控除の範囲には上限がなく、基本的に1月1日から12月31日までの一年間で支払った全額を社会保険料控除の対象とすることができます

ただし、対象と認められるのは、あくまでも自分で支払った分のみです。家族に納付してもらっている場合は、ご自身ではなく、納付した家族の社会保険料控除となります。反対に、家族の分もまとめて納付している場合、支払った金額すべてをご自身の社会保険料控除とすることができます。

例えば、年金からの天引きで介護保険料を納めている場合、年金を受給している本人が控除対象となります。銀行口座からの引き落としであれば、その口座の名義人が対象です。納付書で支払った場合は、納付書を銀行などの窓口やコンビニエンスストアに持参して納付した本人に控除が適用されます。

介護保険料の控除に必要な手続き

年金を受給している方や自営業の方が介護保険料の控除を受けるには、確定申告を行う必要があります。確定申告書の「社会保険料控除」の欄に、一年間で支払った介護保険料の金額を記入または入力してください。

なお、会社員など勤め先から給与を受け取っている方は、確定申告を行う必要がありません。勤務先に年末調整の書類を提出すれば、あとは会社が手続きを行います。

介護保険料の控除に必要な書類

公的介護保険料の控除を受ける際、納付した金額を証明するための書類などは特に必要ありません。
民間の介護保険に加入している場合は、生命保険料控除証明書が必要となります。

一年間に支払った介護保険料の金額を調べる方法

公的介護保険料の控除を受けるために、納付を証明する書類を提出する必要はありません。ただし、確定申告書には正確な介護保険料の金額を記入する必要があります。

ここからは、一年間に支払った介護保険料の金額を確認する方法について、年齢や介護保険料の納め方ごとに解説します。

65歳以上で介護保険料が年金から天引きされている場合

65歳以上で年金を受け取っており、介護保険料を年金からの天引きで支払っている方は、「公的年金等の源泉徴収票」で納付した介護保険料を確認できます。

公的年金等の源泉徴収票は、日本年金機構から毎年1月に発送されます。

65歳以上で介護保険料を自分で納めている場合

65歳以上で介護保険料を天引き以外の方法で納めている方は、別の方法で保険料の金額を確認しなければなりません。

納付書を持参して窓口で納めた場合は「介護保険料納付書(領収証書)」、口座振替で納付した場合は「介護保険料口座振替済通知書」で確認しましょう。市区町村によって名称や発送時期は異なりますが、12月下旬から翌年の1月頃に一年間で支払った保険料の金額が記載されたお知らせが発送されます。

また、市区町村によっては、電話で保険料の照会ができる場合もあります。詳しくは、住んでいる自治体のホームページを確認し、不明点があれば問い合わせてみてください。

40歳以上65歳未満で会社員の場合

40歳以上65歳未満で会社員の方は、「保険料納付証明書」にて支払った介護保険料の確認が可能です。保険料納付証明書は、勤め先が加入している協会けんぽや健康保険組合などから送付されます。

40歳以上65歳未満で会社員ではない場合

40歳以上65歳未満で会社員ではない場合、ほとんどが国民健康保険に加入しています。介護保険料は国民健康保険料に含まれるため、国民健康保険料控除の手続きを行えば、介護保険料控除の手続きは不要です。

民間の保険の所得控除について

これまで、公的介護保険の所得控除について解説してきました。
ここからは、民間の介護保険の所得控除について、公的介護保険と異なる点を中心に解説します。民間の介護保険は一般的に生命保険料控除のうちの「介護医療保険」に該当し、所得税、住民税の負担が軽減されます 。

生命保険料控除の対象となる

公的介護保険の保険料は社会保険料控除の対象ですが、民間の介護保険料は生命保険料控除の対象となり、一定の金額の所得控除を受けることができます 。

控除できる金額には上限がある

公的介護保険は、納めた保険料の全額が控除の対象です。一方、民間の介護保険の場合は、控除の対象となる金額の上限が定められています

生命保険料控除は、2012年1月以降に結んだ契約を対象とする新制度と、それ以前の契約を対象とする旧制度があります。

新制度は一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つに分けられ、所得税はそれぞれ4万円(合計12万円)まで、住民税はそれぞれ2.8万円(合計7万円)まで控除できます。

支払った介護保険料と控除される金額の関係は、下記のとおりです。
新制度での生命保険料控除額

 

所得税

住民税

区分

年間払込保険料額

控除される金額

年間払込保険料額

控除される金額

一般生命保険料

介護医療保険料

個人年金保険料

(税制適格特約付加)

20,000円以下

払込保険料全額

12,000円以下

払込保険料全額

20,000円超 40,000円以下

払込保険料×1/2+10,000

12,000円超

32,000円以下

払込保険料×1/26,000

40,000円超 80,000円以下

払込保険料×1/4+20,000

32,000円超

56,000円以下

払込保険料×1/414,000

80,000円超

一律40,000

56,000円超

一律28,000


生命保険料控除証明書が必要

公的介護保険の保険料控除手続きでは、保険料を支払ったことを示す証明書類の提出は不要です。一方で民間の介護保険の場合、控除を受けるには保険会社から送付される「生命保険料控除証明書」が必要となります。

「生命保険料控除証明書」は、保険会社から毎年10月~11月頃に送付されます。会社員で年末調整をする場合や、自営業などで確定申告をする場合も、この「生命保険料控除証明書」を添えて手続きを行ってください。

「介護サービス」は医療費控除の対象

介護保険料が社会保険料控除の対象となることを説明しましたが、実際に介護が必要になり介護サービスを利用した場合、その利用料も所得控除の対象となります。介護サービスの利用料は、15種類ある所得控除のうち、医療費控除に該当します。

医療費控除とは、1月1日から12月31日の一年間に支払った医療費が10万円または年収の5%のどちらか少ない方の金額を超えた際に、その超えた分を控除できる制度です。家族の医療費を支払った場合は、支払った人がまとめて控除の手続きを行えます。家族が介護サービスを受けた場合、その利用料は実際に支払った人の医療費控除対象となるのです。

医療費控除で控除できる金額

公的介護保険の加入者が要支援・要介護状態になると、1~3割の自己負担で介護サービスを利用できます(40歳以上65歳未満の方は特定疾病により要支援・要介護状態になった場合)。医療費控除の対象となるのは、看護や医療系に該当する介護サービスで自己負担した分の金額のみです。

計算式で表すと以下のようになります。

医療費控除の対象額=対象の介護サービスの自己負担額-保険金などで補填される金額-10万円(総所得金額等が200万円未満の場合は10万円ではなく総所得金額の5%)

なお、医療費控除の上限額は200万円です。200万円までであれば、上記の計算式で算出した全額が控除対象となります。

控除対象額は、多くの場合介護サービス利用時に受け取る領収書に記載されていますので、必ず確認し、保存しておきましょう。

医療費控除に必要な書類

医療費控除を受けるには、「医療費控除の明細書」の作成が必要です。医療費控除の明細書に、介護サービスを受けた人の名前や支払先、支払った医療費などを記入し、確定申告書と一緒に提出しましょう。

医療費控除の対象となる介護サービスの種類

医療費控除の対象となる介護サービスはさまざまですが、大きく分けて「医療系サービス」と「施設入所」があります。

前者の例として挙げられるのは、訪問看護、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導などです。後者の例には、介護老人保健施設(老健)や介護療養型医療施設、介護医療院などでの費用が該当します。なお、特別養護老人ホームは、支払った費用の半分のみが控除の対象として認められています。

そのほか、通院でかかる交通費や、6ヵ月以上寝たきりの方のおむつ代も、医療費控除の対象です。ただし、おむつ代は「おむつ使用証明書」を医師に発行してもらう必要があります。

どの介護サービスが医療費控除の対象となるのかは、国税庁のホームページで確認できるほか、サービス事業者の発行する領収書から対象額を確認できることもあります。

控除を活用し、経済的負担の軽減につなげよう


公的介護保険の保険料は所得控除の対象であると解説してきました。控除を受けることで課税所得が減り、その結果税負担を減らすことができます。

民間の介護保険や介護サービスを利用した際も所得控除がされます。さまざまな控除を活用し、経済的負担の軽減につなげましょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

CFP 齋藤 彩

急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2024年7月1日

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