公的介護保険制度は、さまざまな介護サービスを利用するために必要な制度
40歳以上は加入義務があり、特別な手続きなく自動的に被保険者となります。
公的介護保険の介護サービスを受けられる方は次のとおりです。
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第1号被保険者:65歳以上で要支援・要介護状態になった方
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第2号被保険者:40~64歳で医療保険に加入しており、特定疾病により要支援・要介護状態になった方
・末期がん
・後縦靭帯骨化症
・慢性関節リウマチ
・脊柱管狭窄症
・早老症
・骨折をともなう骨粗しょう症
・初老期における認知症
・糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症
・脳血管疾患
・閉塞性動脈硬化症
・慢性閉塞性肺疾患
・両側の膝関節または股関節に著しい変形をともなう変形性関節症
・筋萎縮性側索硬化症
・多系統萎縮症
・脊髄小脳変性症
・進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病
第2号被保険者は特定疾病に該当しないと要支援・要介護状態でも介護サービスを受けられない点に注意が必要です。
介護サービスを利用するための条件
要介護認定は要支援1・2、要介護1~5に区分され、要介護度に応じた介護サービスを受けることが可能です。
各区分における心身状態の目安は次のとおりです。
要介護度 |
心身状態の目安 |
要支援1 |
食事や排泄などの基本的な日常生活はできるが、立ち上がりなどに助けが必要なことがある。 |
要支援2 |
基本的な日常生活はできるが、立ち上がりや歩行などに助けが必要なことがある。 |
要介護1 |
買い物や金銭管理などに支障があり、立ち上がりに助けが必要である。認知機能や理解力の低下もみられる。 |
要介護2 |
立ち上がりや歩行が難しいことが多い。基本的な日常生活も助けが必要なことがある。 |
要介護3 |
立ち上がりや歩行が自力で難しく、杖や車いすが必要である。基本的な日常生活も全面的な助けが必要である。 |
要介護4 |
助けがないと基本的な日常生活ができない。理解力も著しく低下し、問題行動もみられる。 |
要介護5 |
寝たきりのことが多く、日常生活全般に助けが必要である。コミュニケーションも困難な状態である。 |
日本では高齢化にともない要介護認定者数は年々増加傾向です。2030年には65歳以上の約5人に1人※1になることが見込まれています。
※1厚生労働省「第92回社会保障審議会介護保険部会資料」および「介護保険事業状況報告の概要(令和5年10月暫定版)」より当社推計(第1号被保険者に対する65歳以上の認定者数の割合を使用)
※2厚生労働省「令和3年度介護保険事業状況報告(年報)」
※3厚生労働省「令和3年度介護保険事業状況報告(年報)」および「第55回社会保障審議会介護保険部会資料」より当社推計
公的介護保険で利用できるサービスはおもに5種類
居宅サービス
訪問サービスは利用者の自宅を訪問してサービスを提供します。
具体的には、ホームヘルパーによる食事や入浴の介護、理学療法士などによる心身機能維持・改善のためのリハビリ、看護師による医療行為などがあります。
また、簡易的な入浴槽が設置されている入浴車が訪問し、入浴の手助けをすることも可能です。
通所サービスは利用者が日中、施設に通いサービスを受けます。
食事や排泄などの介護、リハビリなどを受けられるデイケアやデイサービスがあります。
短期入所サービスは、利用者が施設で短期的に宿泊できるサービスです。
食事や排泄などの日常生活の支援、リハビリ、レクリエーションを受けられるショートスステイが代表的です。医療機関や介護老人保健施設に短期間滞在し、医療ケアを受ける医療型のショートステイもあります。
自宅での介護は体力的・精神的にも負担が大きいものです。短期入所サービスは介護者の休息のためにも利用できるため、家族の負担軽減になるでしょう。冠婚葬祭や急用で介護ができないときにも便利なサービスです。
施設サービス
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)で食事などの介護やリハビリを受けたり、介護医療院で医療ケアや介護を受けたりできます。期間はサービスにより異なるため事前に確認しましょう。
ただし、施設サービスは要介護状態でないと利用できない点に注意が必要です。
地域密着型サービス
グループホームなどで日常生活の支援を受けられるサービス、「施設通所」と「自宅訪問」、「短期宿泊」を組み合わせることで自立した生活と支援を受けられるサービスなどがあります。
また、要介護状態の場合、看護・介護一体で24時間体制で自宅巡回などを行う定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間限定で定期的な巡回や緊急時の訪問対応を行う夜間対応型訪問介護なども利用可能です。
福祉用具関連サービス
手すりやスロープなどの福祉用具のレンタルや、レンタルが適さない腰かけ便座や簡易浴槽などの購入費を保険給付の対象としています。
いずれの場合も自己負担はかかった費用の1~3割であり、購入での支給限度基準額は年間10万円です。
住宅改修サービス
手すりの設置や段差の解消、洋式便器への変更などの改修工事費用が保険給付の対象となります。自己負担は1~3割です。
基本的に、支給限度基準額は生涯20万円です。
介護サービスを利用するまでの流れ
要介護認定の申請をする
本人が思うように動けない、入院中などで申請できない場合は家族やケアマネジャーが代理で申請することも可能です。
申請に必要な書類は次のとおりです。
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申請書
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介護保険証
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診察券などかかりつけ医のわかるもの
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マイナンバーが確認できる書類
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健康保険証(64歳以下の場合)
認定調査が行われる
訪問調査後、市町村が主治医に意見書の作成を依頼します。主治医がいない場合は市町村が指定した医師の診察を受け、意見書を作成してもらう必要があります。
審査判定が行われる
一次判定は訪問調査や主治医意見書の一部の内容をもとにコンピュータが判定します。全国一律の基準であり、市町村によって異なることはありません。
そして一次判定の結果や主治医意見書をもとに、介護認定審査会で最終的な要介護度の審査判定が行われます。これを二次判定といいます。
結果通知
認定は要支援1・2、要介護1~5までの7段階および非該当のいずれかです。
申請から原則30日以内に認定通知が届きますが、2ヵ月程度かかる市町村もあります。
通知が遅い場合は市町村に確認してみると良いでしょう。