公的介護保険の通院介助とは?
適用される条件や注意点


要介護者自身が高齢になり通院が難しい状況になった際には、公的介護保険の「通院介助」というサービスを利用できます。実際に利用した場合、どのようなサポートを受けられるのでしょうか。

公的介護保険のサービスを利用するためには、適用条件を満たしていなければなりません。また、適用されない条件などもあるため、制度への理解を深めたうえで利用を検討することが大切です。

当記事では、公的介護保険の通院介助で受けられるサポート内容や公的介護保険が適用される条件、どれくらいの費用負担があるのかなどを解説します。

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「通院介助」とは?

「通院介助」とは、訪問介護員(ホームヘルパー)に通院へのサポートを依頼できる介護サービスのことです。通院を必要とする高齢者が医療機関を受診する際、サポートが必要なときに介助を受けられます。

依頼できるおもな内容は、目的地(病院など)に向かうための準備や自宅から病院までの移動、交通機関を利用する際の乗降介助などです。移動中は利用者の体調確認を行うなど、利用者への配慮もなされます。また、医療機関の受診手続きなども依頼することが可能です。

なお、病院に向かうときだけでなく、帰宅時の付き添いも該当します。そのため、一人では通院が難しいものの、毎回ご家族に付き添ってもらうのも難しいといった状況などで大きく貢献するサービスといえるでしょう。

公的介護保険の通院介助を利用するには?

公的介護保険の通院介助を利用するには、適用される条件を満たしていなければなりません。ここでは、通院介助を受けられる条件や対象外となる通院介助を確認しておきましょう。

適用される条件

通院介助が適用されるのは、要介護の1から5に該当する方です。さらに、ケアマネジャーによって通院介助が必要と判断されてケアプランに追加されていることも条件になっています。

具体的な介助内容は、自宅から病院への送迎や公共交通機関を利用した際の乗降サポート、医療機関の受診手続きのサポートなどです。

また、令和3年に制度の見直しがされ、これまでは認められなかった複数の病院を同時に受診することが可能になりました(同一の事業所による実施が条件)。

なお、要介護度の判定基準には次のような基準があります。

判定区分

状態

要支援1

基本的な日常生活はできるものの、生活の一部で手助けを必要としている。

要支援2

基本的な日常生活はできるものの、歩行や起立時に何らかの支えが必要な状態。

要介護1

歩行不安定や下肢筋力低下などが原因で日常生活の一部に介助が必要な状態。また、心身の状態が安定していなかったり認知症などの症状があったりする状態。

要介護2

食事や排せつなど、日常生活の動作にも介助が必要になりつつある状態。一人での歩行が困難なケースもある。

要介護3

食事や排せつなど、日常生活全般において介助が必要な状態。一人での歩行が難しい状態。

要介護4

介助がなければ日常生活が行えない状態。移動には車いすが必要など、多くの場面で介助を必要とするものの会話は可能な状態。

要介護5

ほとんど寝たきりの状態で、日常生活全般において介護はほぼ不可欠な状態。コミュニケーションが困難な場合が多い。

外出のためのサポートを要する要支援1~2の方は、市区町村の「介護予防・日常生活支援総合事業」での支援として、外出支援を受けることになります。

対象外となる通院介助は?

通院介助には、対象外となるサポートもあります。例えば、病院内でのサポートは公的介護保険ではなく医療保険の対象という考えから、病院での待ち時間や診療時間の介助は適用されません。

病院のスタッフが介助できない場合など、例外的にヘルパーがサポートしても良いケースもあります。ただし、あくまでも例外のため、介助の依頼を検討する際にはどこまでお願いできるのかを事前に確認しておくことが大切です。

通院介助に公的介護保険が適用された場合の費用

公的介護保険のサービスを受ける場合、利用者には1~3割の自己負担が生じます。原則は1割負担ですが、所得が一定以上ある場合には2~3割負担になることに注意が必要です。

ここでは、通院介助に公的介護保険が適用された場合の料金について解説します。

介護タクシーの利用

通院時に介護タクシーを利用する場合、公的介護保険の通院等乗降介助に該当します。

介護タクシー利用の際にかかる料金の内訳は、以下のように分けられています。

・乗降時の介助料
・タクシーの運賃
・介護器具のレンタル料(使用した場合)

このうち公的介護保険の対象は乗降時の介助料のみです。自己負担額が1割の場合、タクシー乗降時の介助料における利用者負担は、1回につき97円となっています。

タクシーの運賃は一般的なタクシーと同等です。例えば、初乗り約1kmは500円、その後は255mごとに100円が加算されていく仕組みになっています。

参照:日本交通株式会社「料金について」

※  距離制運賃

※  タクシーの運賃は地域、各タクシー会社によって異なるため上記は一例です

また、介助器具のレンタルについても、各タクシー会社の規定によります。

公共交通機関の利用や徒歩

公共交通機関を利用する、車いすを押してもらう、徒歩で転倒防止などの見守りをしてもらうなどの介助を受ける場合も、通院介助に該当します。料金は利用時間に応じて設定されており、具体的な利用時間および料金は以下のとおりです。
  • 20分未満……163円
  • 20分以上30分未満……244円
  • 30分以上1時間未満……387円
  • 1時間以上……567円
  • その後……30分ごとに82円追加
これらの費用負担について理解しておくことで、必要な通院介助サービスを適切に利用できるようになります。公的介護保険の適用範囲や料金体系を把握し、安心してサービスを利用しましょう。

公的介護保険の通院介助を利用する手順

公的介護保険の通院介助を利用するには、いくつかの手順を踏む必要があります。具体的な手順は、以下のとおりです。
  1. 要介護認定を受けるための申請をする
  2. 認定調査の実施や主治医意見書の作成を依頼する
  3. 認定の結果を確認する
  4. ケアプランを作成する
  5. サービスの利用を開始する
まずは要介護認定を受けるため、申請書や身分証などの必要な書類を用意し市区町村の窓口で申請を行います。

申請後、調査員が申請者を訪問し、認定調査を実施します。また、申請者の主治医に対し、意見書の作成を依頼します。意見書の作成依頼は市区町村が行いますが、かかりつけ医がいない場合は、市区町村が指定した医師の診察を受けなければなりません。

調査結果と主治医意見書による判定を経て、最終的に市区町村が要介護度を認定します。申請から認定までは、30日ほどかかることを覚えておきましょう。認定結果が郵送で届いたら、内容を確認します。

要介護認定を受けた後は、ケアマネジャーが要介護度に適したケアプランを作成します。このプランには、通院介助を含む具体的なサービス内容が記載されます。

ケアプランが完成したら、サービスの利用を開始します。通院介助に加えて、必要に応じて福祉用具のレンタルや自宅環境の整備も検討するとよいでしょう。

なお、各ステップで必要な準備や手続きが異なるため、計画的に進めることが重要です。

公的介護保険の利用については、以下の記事もご覧ください。

公的介護保険の通院介助を利用する際の注意点

公的介護保険の通院介助を利用するときは、いくつか注意しておかなければならないこともあります。トラブルに発展させないためにも、事前に確認しておきましょう。

市区町村によって適用範囲が異なる

通院介助を利用するには条件が設けられていますが、その適用範囲は市区町村によって異なるケースがあります。例えば、前述した病院内での介助も、市区町村によって対応に違いが生じることもあります。

また、通院帰りの処方薬の受け取りなども、市区町村の判断で対応は異なります。そのため、通院介助の利用を検討する際は、ヘルパーだけでなくケアマネジャーにも事前に確認することが大切です。

ヘルパーの交通費は利用者負担

公的介護保険の通院介助を利用する際には、ヘルパーの交通費が基本的に利用者の負担となる点に注意が必要です。

この交通費の取り扱いは介護保険制度に規定がなく、各サービス事業者によって異なります。そのため、事前に各サービス事業者に確認するとよいでしょう。

利用者が負担する交通費の額や支払い方法について事前に確認しておくことで、予期せぬ費用の発生を防ぐことが可能です。

通院介助の仕組みを理解して、安心して通院できる環境を整えよう


公的介護保険の「通院介助」を利用するためには、適用となる条件を満たしていなければならないことや、受けられるサービス内容が詳細に定められていることがわかりました。また、市区町村によってその範囲も異なるため、事前に確認しておくことが大切です。

状況によっては、公的介護保険のみでカバーすることが厳しい可能性もあり得ます。万が一の備えとして、民間介護保険への加入も検討してみてはいかがでしょうか。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年8月6日

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