公的介護保険制度におけるデイサービス(通所介護)とは?
サービス内容やメリット・デメリット


デイサービスを利用したいが、どのようなサービスを受けられるのか気になるという方もいるでしょう。

デイサービスは、日帰りで日常生活のサポートを受けられます。利用者の健康維持や介護者の負担軽減などが期待できますが、費用負担などの注意点もあります。

本記事では、デイサービスの概要と種類、サービスの内容とかかる費用、メリット・デメリットを解説します。

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「デイサービス」とは?

まずは、デイサービスの概要を解説します。デイケアとの違いも併せて確認しましょう。

デイサービスは自立した生活を手助けする介護サービス

デイサービスは通いで介護サービスを提供する施設のことで、「通所介護」とも呼ばれます。

利用者は、食事や入浴のサポートや、レクリエーションのサービスを日帰りで受けられます。利用者の自宅から施設までの送迎もあります。

デイサービスは要介護状態になっても、住み慣れた自宅で自立した日常生活を送ることを目的に実施されるものです。

利用者の精神機能・身体機能の維持・改善だけでなく、社会的孤独感の解消や、介護者の体力的・精神的な負担軽減につながる重要な役割を担っているといえるでしょう。

デイケアとの違いは?

「デイサービス」と「デイケア」はどちらも通いながら介護サービスを受けられますが、デイサービスでは医師が常駐していません。

一方、デイケアは医師が常駐し、医師の指示に基づき理学療法士などの専門職がリハビリテーションを行います。

デイケアは「通所リハビリテーション」とも呼ばれ、運動機能や認知機能などの維持・改善に特化したサービスを提供しています。

公的介護保険におけるデイサービスの対象者と種類

デイサービスは、誰でも受けられるわけではありません。ここでは、デイサービスの対象者と種類を解説します。

デイサービスの対象者

デイサービスは、公的介護保険制度に加入しており、要介護1~5と認定された次の人が対象です。
  • 第1号被保険者(65歳以上)の人
  • 第2号被保険者(40歳以上65歳未満)で要介護状態が特定疾病に起因する人
介護が必要な状態でも、要支援1・2ではデイサービスは利用できません。要支援1・2の場合は介護予防を目的とした「介護予防通所介護」の利用を検討するとよいでしょう。

また、デイサービスは家族が施設に送迎することも可能ですが、基本的には施設の職員が送迎してくれます。そのため、送迎可能なエリアに居住していることも必要です。

デイサービスの種類

デイサービスは、施設の規模により大きく以下3つの種類があります。

大規模デイサービス

1ヵ月当たりの延べ利用者数が750人を超える施設です。
大規模デイサービスはさらにⅠ型とⅡ型に分けられ、1ヵ月当たりの延べ利用者数が750人超900人以内ではⅠ型、900人超がⅡ型となります。

大規模デイサービスは利用者やスタッフが多く、レクリエーションも豊富なため、コミュニケーションの機会が多いのが特徴です。

にぎやかな場所が好きな人や社交的な人に向いているでしょう。

通常規模デイサービス

1ヵ月当たりの延べ利用者数が750人以内の施設です。

多くのデイサービスが通常規模なため、利用者の性格や好みに合った施設を探しやすいメリットがあります。

小規模デイサービス(地域密着型通所介護)

利用定員数が18人以下の施設です。

規模が大きくないため、利用者一人ひとりに配慮したきめ細やかなサポートを行えます。静かで落ち着いた場所が好きな人、穏やかに過ごしたい人に向いているでしょう。

そのほか、通所介護施設には認知症の方を対象にした認知症対応型通所介護、難病等の重度要介護者や末期がん患者を対象にした療養通所介護などもあります。

デイサービスで受けられるサービスの内容

デイサービスでは、さまざまなサービスを受けられます。具体的なサービス内容を5つ紹介します。

食事

デイサービスでの食事の栄養面や食べやすさは、気になるところでしょう。

食事は健康維持のために欠かせません。しかし、加齢にともない食事量や回数が低下したり、食べやすいものばかり食べることで栄養が偏ったりしやすくなります。

そのため、食事を工夫・準備するのは介護者にとっても負担が大きくなりがちです。

デイサービスでは、利用者の健康状態や食事制限に配慮した栄養管理を行い、口腔機能に適した食事形態で食事を提供してくれます。

自分で食べるのが難しい場合は、必要に応じて介助もしてくれるので安心です。

ほかの人とコミュニケーションを取りながら食事をすることも、楽しみにつながります。

機能訓練

機能訓練とは、自立した生活の継続を目的として、日常生活に必要な認知機能・身体機能の維持・改善を行うことです。

具体的には、歩行訓練やラジオ体操、階段の上り下り、脳トレなどを利用者の要介護度に合わせて実施します。

なお、リハビリは医師の指示が必要ですが、機能訓練は医師の指示に基づくものではなく、医師の指示は必要ありません。
機能訓練指導員(理学療法士や作業療法士などの有資格者)の指導のもとで行われます。

レクリエーション

デイサービスのレクリエーションは娯楽としてだけではなく、機能訓練の一環として認知機能・身体機能の維持・改善を目的に行われます。

利用者同士のコミュニケーションも増え、明るく前向きな気持ちになり、生きがいにもつながるでしょう。

具体的には、リズム体操やバトンリレー、連想ゲームなど施設によって内容は異なりますが、障害のある人にも配慮されており、安心して楽しめます。

入浴

自宅での入浴は高温多湿かつ滑りやすい状況下で要介護者の体を支えるため、転倒事故などケガにつながる可能性があります。

また、冬場は入浴前後の急激な温度差でヒートショックが起きやすくなります。
配慮すべきことも多く、介護者にとって入浴介護は、体力的にも精神的にも負担が大きくなります。

デイサービスでは、施設で介護スタッフに入浴の介助をしてもらうことが可能です。

入浴前後の体調確認やヒートショックを防ぐための脱衣所・浴室の温度調整、手すりや滑り止めなどの福祉用具の使用など、入浴時の事故のリスクを軽減してくれます。そのため、安心して入浴できるでしょう。

送迎

デイサービスでは、利用者の送迎もサービスに含まれています。そのため、送迎範囲内であれば家族が送り迎えしなくても通えます。

また、送迎は自宅玄関まで送るだけではなく「自宅の安全な場所に送り届けるまで」がサービスです。玄関からリビングに移動するときに転倒してしまうといった事故も防げるでしょう。

ただし、送迎距離や時間は施設によって異なるため、検討している施設が不便なく利用できるかは事前に確認が必要です。

デイサービスで対応できないことは?

デイサービスは医師が常駐していないため、痰の吸引や胃ろうなど医師の指示が必要となる医療行為は行えません

また、身体機能維持・回復のためにリハビリが必要と医師が判断した場合は、医師が常駐するデイケアを選ぶ必要があります。リハビリに特化したサービスを提供しており、専門のスタッフが医師の指示に基づきサポートしてくれるでしょう。

デイサービスの費用はどのくらい?

デイサービスは、施設の規模や所要時間ごとに利用料が設定されています。

例えば、通常規模の施設における要介護度別の利用料は次のとおりです。
 

サービス費用の設定

1回当たりの利用者負担(1割)

通常規模の事業所の場合

7時間以上8時間未満)

要介護1

658

要介護2

777

要介護3

900

要介護4

1,023

要介護5

1,148

1割負担の場合、要介護度が最も高い人(要介護5)でも1回当たりの自己負担は1,200円程度です。

ただし、利用者の状態によりサービスを追加で利用する場合に発生する費用もあります。具体的には次のようなケースです。
  • 入浴介助技術向上のための研修を受けたスタッフが入浴中の観察・介助を行う場合
  • 低栄養状態改善のために栄養ケア計画を作成し、栄養相談・管理を行う場合 など
また、食費や日用品(おむつや歯ブラシなど)は別途費用が必要です。施設により異なりますが、食費は数百円程度となります。

公的介護保険のデイサービスを利用する4つのメリット

デイサービスではさまざまなサービスを受けられます。ここでは、デイサービスにおけるメリットを4つ解説します。

健康維持につながる

デイサービスでは歩行訓練やラジオ体操、脳トレなどの機能訓練を受けられます。認知機能・身体機能を維持・改善できるのは大きなメリットでしょう。

また、高齢になると嚥下機能の低下などから食事内容が偏り、栄養バランスが崩れてしまうこともあります。健康な状態で生活を送るうえで、バランスの良い食事は欠かせません。

デイサービスでは、かみ砕きやすい工夫や栄養バランスを考慮した食事を提供しているため、栄養面も安心です。

なお、デイサービスは介護記録を残します。健康状態や介護内容を看護・介護の知識を持つスタッフが管理・共有するため、利用者の体調変化にも気付きやすくなるでしょう。

入浴や排せつなど日常生活のケアもしてもらえる

加齢にともない身体機能が低下すると、日常生活に支障が出ます。今まで通りリラックスして入浴ができなくなったり、一人で排せつが難しくなったりすることもあるでしょう。デイサービスでは、そのような日常生活のサポートをしてもらえます。

特に入浴は転倒事故やヒートショックのリスクもあるため、一人暮らしや在宅介護の場合は不安も大きいものです。

デイサービスでは入浴前後の温度調節だけでなく、手すりなどの福祉用具や段差のないフラットなつくりで入浴しやすい環境を整えています。スタッフのサポートもあるので安心して入浴できるでしょう。

万が一に備えて、緊急通報ボタンを設置している施設も多いです。

コミュニケーションの機会となる

デイサービスの利用は、ほかの利用者やスタッフとのコミュニケーションの機会となります。

一人自宅で過ごすと塞ぎ込みがちになる懸念がありますが、社会とのかかわりを持つことで孤立感を軽減できるでしょう。

また、利用者同士の会話やレクリエーションを楽しむなかで、新しい出会いや趣味が見つかることもあります。楽しみや生きがいにつながることもあるでしょう。

介護者の負担を軽減できる

いつまで続くか分からない介護は体力的・精神的にも負担が大きいものです。

仕事しながらの介護や、一日中介護を続けることで介護疲れにつながる可能性もあります。

デイサービスでは日常生活のサポートをしてもらえるので、介護者の負担を軽減できるでしょう。休息の時間を作ることもでき、心の余裕につながります。

公的介護保険のデイサービスを利用する2つのデメリット

メリットの多いデイサービスですが、デメリットもあります。確認しておきたいデメリットを2つ解説します。

費用負担がある

デイサービスは毎月の費用負担が生じます。公的介護保険により自己負担は1~3割に軽減されますが、無料ではない点に注意しましょう。

なお、費用は要介護度やケアプランによって異なりますが、基本的に利用頻度が多くなるほど費用は高くなります。

また、日用品は保険適用外なので全額自己負担となることも覚えておきましょう。

デイサービスがストレスになることもある

デイサービスでは日常生活のサポートや送迎などのサービスを受けられますが、サービスを受けることに抵抗のある人もいます。

また、施設の雰囲気や、ほかの人と気が合わないなどでストレスを感じることがあるかもしれません。

事前に施設を見学して雰囲気を確認する、スタッフと話し合うことで防げるでしょう。

デイサービスの種類とサービス内容を理解して
本人に合った施設を選ぼう


デイサービスは食事や入浴などの日常生活のサポート、機能訓練、レクリエーションなどさまざまなサービスを受けられます。利用者の認知機能・身体機能維持だけでなく、社会とつながりを持てるため、生きがいや楽しみにつながることもあるでしょう。

しかし、デイサービスは施設により規模や雰囲気が異なります。また、医療行為はできないため、利用者の性格や状態に合った施設を選ぶことが重要です。

現時点でデイサービスがまだ必要ではない場合も、将来の介護に備えてサービス内容や費用を参考にしてください。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年8月5日

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