公的介護保険の福祉用具購入・レンタルとは?
利用の流れや選び方のポイント


公的介護保険を利用して福祉用具を借りたり購入したりするには、どのような手続きをすればよいのでしょうか。

福祉用具とは、介護を必要とする方の日常生活をサポートするための用具のことで、車いすや介護ベッドなどさまざまな種類があります。

この記事では、公的介護保険での利用が可能な福祉用具の種類や、具体的な利用の流れについて解説します。また、適切な福祉用具選びのポイントもいくつか紹介するため、ぜひ参考にしてください。

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公的介護保険における福祉用具とは?

福祉用具とは、介護が必要な高齢者の日常生活をサポートし、身体機能の維持・向上を助ける用具を指します。

車いすや介護ベッドなどのさまざまな福祉用具は、レンタル費用や購入費用が公的介護保険の給付対象です。

このような福祉用具を適切に活用することで、高齢者の生活の質を向上させ、介護者の負担軽減も期待できます。

公的介護保険で福祉用具を利用する方法

公的介護保険を通じて福祉用具を利用する方法には、「貸与」「購入」の2つがあります。それぞれの特徴や違いについて詳しく説明します。

貸与

公的介護保険の対象となる福祉用具は、指定事業者から公的介護保険を使ってレンタルできます。これを「福祉用具貸与」と呼びます。

ただし、要介護度によってレンタルできる品目は異なるため、事前の確認が必要です。

公的介護保険を利用すると、原則としてレンタルにかかる利用者の負担は1割となりますが、所得に応じて2割または3割負担になる場合もあります。

購入

福祉用具は、利用者の状態と要介護度の変化に応じて適切なものを提供するため、原則として貸与が優先されます。

しかし、再利用が難しいものや心理的抵抗感があるものは「特定福祉用具販売」の対象となり、販売されます。この場合、購入費用は公的介護保険の給付の対象です。

給付を受けるには、指定事業者から購入する必要があります。そのため、購入を検討する際は、必ずケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談しましょう。

また、購入費用の支払い方法には「受領委任払い」「償還払い」の2種類があります。

受領委任払い

受領委任払いでは、購入者は販売事業者に自己負担分のみを支払います。その後、自治体から販売事業者に公的介護保険の給付分が直接支給されます。

限度額以内であれば購入費用の9割が事業者に支給され、利用者の自己負担額は原則1割となります。ただし、所得によっては2割または3割負担になる場合もあります。

償還払い

償還払いの場合、購入者はまず全額を自己負担で支払います。その後、自治体へ申請を行い、払い戻しを受けるという流れです。

限度額以内であれば購入費用の9割が払い戻されるため、実質的な自己負担額は1割となります。ただし、所得によっては2割または3割負担になる場合もあります。

福祉用具の種類

前章では、公的介護保険を通じて福祉用具を利用する方法には「福祉用具貸与」と「特定福祉用具販売」の2種類があることを解説しました。

以下では、それぞれの対象となる福祉用具について紹介します。

福祉用具貸与

公的介護保険制度を使ってレンタルできる福祉用具は、全13種類あります。
  • 車いす
  • 車いす付属品
  • 介護ベッド(特殊寝台)
  • 介護ベッド(特殊寝台)付属品
  • 床ずれ防止用具
  • 体位変換器
  • 手すり
  • スロープ
  • 歩行器
  • 歩行補助つえ
  • 認知症老人徘徊感知機器
  • 移動用リフト(つり具の部分を除く)
  • 自動排泄処理装置
要介護度により、保険範囲内でレンタルできる品目は異なります。

手すりやスロープ、歩行器、歩行補助つえは要支援の方からレンタル可能です。そのほかの用具については、原則として要介護2~5の方が対象となっています。自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引するものは除く) は、要介護2・3の方も原則として給付の対象外です。

ただし、身体の状態などにより、給付の対象となる場合もあります。これは、要介護認定での基本調査結果に基づく判断や市町村への申請を通じて決定されます。

特定福祉用具販売

特定福祉用具販売には、同一年度で10万円(税込)までの支給限度額があります。公的介護保険が適用される特定福祉用具には、以下のものが該当します。
  • 腰掛便座(ポータブルトイレなど)
  • 自動排泄処理装置の交換可能部品
  • 排泄予測支援機器
  • 入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト)
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトのつり具の部分
これらの福祉用具は、要支援1から要介護5までの要介護認定を受けた方が、幅広く公的介護保険の対象として利用できます。

公的介護保険で福祉用具を購入・レンタルする流れ

公的介護保険を利用して福祉用具を使う際の流れは、次のようになります。
  1. ケアマネジャーまたは地域包括支援センターに相談する
  2. ケアプランを作成してもらい福祉用具事業者を選定する
  3. 福祉用具専門相談員が利用者宅を訪れ、用具の選定・提案を行う
  4. 福祉用具事業者と契約を結ぶ
  5. 福祉用具を利用する
福祉用具の貸与・販売にあたり、事業者は利用者の自立促進や介護者の負担軽減を考慮し、適切な福祉用具を選ぶことが必要です。そのため、福祉用具の貸与・販売の前に、各利用者に対して個別サービス計画(福祉用具サービス計画)を作成します。この計画では、利用者の希望や心身の状況、生活環境などが総合的に考慮されます。

福祉用具事業者に在籍している福祉用具の専門家が、「福祉用具専門相談員」です。この相談員が利用者宅を訪問し、身体状況や自宅環境を確認したうえで、利用者に適した福祉用具を提案します。

専門的なアドバイスにより、利用者一人ひとりのニーズに合った福祉用具を選択することが可能です。

福祉用具を選ぶための3つのポイント

福祉用具を選ぶ際には、次の3つのポイントを考慮することが重要です。

利用者の身体状況に合わせて選ぶ

福祉用具は、利用者の身体状況に適したものを選ぶことが大切です。

例えば歩行が困難な場合には、車いすや歩行器に加えて、起き上がりを補助する介助バー付きのベッドを選択することも考えられるでしょう。

適切な用具を選ぶことで、利用者の身体への負担を減らし、安全で快適な生活を実現できます。

利用者の自立をサポートするものを選ぶ

福祉用具の利用目的は、できなかった動作の実現や現在の機能の維持にあります。

ただ、身体に問題がないのに「安全のため」と用具を使用すると、逆に身体機能が低下する可能性があります。そのため、利用者する方の状態に合わせて適切な福祉用具を選択することが重要です。

介護者の負担軽減につながるものを選ぶ

在宅介護は介護者に大きな負担がかかります。特に要介護度が高い場合、介護者の負担を軽くする工夫が欠かせません。

そのため、福祉用具の選択時には、介護者の負担軽減という視点も重要です。日々の介護で感じる手間や辛さも、適切な福祉用具の活用により改善できる可能性があります。

福祉用具を活用して介護の負担を軽減しよう


公的介護保険による福祉用具の利用は、要介護者の自立を助けるとともに、介護者の負担を減らす大きな助けとなります。福祉用具の種類や利用方法を理解し、適切な選択を行うことが重要です。

福祉用具を選ぶ際は、利用者の身体状況、自立支援、介護者の負担軽減という3つのポイントを考慮しましょう。専門家のアドバイスを受けながら個々のニーズに合った福祉用具を選択することで、より良い介護環境を整えられます。

 
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年9月9日

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