介護と介助の違いとは?
仕事内容や介助の際の注意点


「介護と介助は何が違うのだろうか」と、疑問に思ったことがある方も少なくないのではないでしょうか。

介護は、身体が不自由な方など、サポートが必要な方への支援行為全般を指します。一方、介助は日常生活における「具体的な支援行為」を意味し、介助は介護を実現するための一つの手段です。

当記事では、介護と介助の違い、具体的な内容や種類について詳しく解説し、介助の基準となる4段階や、実際に介助をする際の注意点も取り上げます。加えて、介護の現状とその対策に関しても触れますので、今後の備えにぜひお役立てください。

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「介護」と「介助」の違い

「介護」と「介助」、これらにはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの行為が何を意味し、いかなる目的で行われるのかを解説します。

「介護」とは

介護とは、高齢者や障害のある方、身体が不自由な方など、日常生活を送るためにサポートが必要な方に対する支援行為全般を指します。

介護は、単に日常生活において行動を手助けする身体的なサポートにはとどまりません。身体をうまく使えない状態や、介護者に迷惑をかけたくない気持ちから、精神的に不安定になってしまっている方への精神的なサポートや、社会生活の向上を目指す支援も含まれます。

介護の目的は、介護を受ける方が自立した生活をできるようにすることや、身体機能の低下を防ぎ、現状を維持することにあります。

「介助」とは

介助とは、歩行などの基本動作や、食事・排泄・入浴といった日常的な動作に対してサポートをする「行為」のことを指します。

介助では、それを受ける方の生活全般をサポートするわけではありません。あくまでもその時々の「できないこと」を手助けします。

介助は、必要な動作(行為)を補助することで目的を達成しますが、介護は、生活全体を通して介助を組み合わせることにより目的を達成します。したがって、介助は介護を実現するための一つの手段といえるでしょう。

介護の種類と内容

介護は、身体介護、生活援助、その他の支援という3つのサポートに分けられます。以下ではそれぞれの内容を詳しく紹介します。

身体介護

身体介護では起き上がりや寝返り、立ち上がり、歩行といった基本動作に加え、入浴や食事、排泄などの日常生活における動作をサポートします。身体介護では、介護を受ける方に直接触れながら支援を行います。

身体介護の目的は、「できることは自分で行う」という自立を支援することです。介護をしていると、つい手を貸してしまいそうになることもありますが、必要以上に介助するのではなく、あえて見守ることも重要です。

介護を受ける方のできることまで奪ってしまわないよう注意し、「どこまでなら自分でできるか」を見極めながら、適切なサポートを行うことが求められます。

生活援助

生活援助では、掃除や料理、洗濯といった家事や買い物など、日常生活に必要な家事を代行します。介護スタッフが訪問し、介護を受ける方やご家族ができないことをサポートする点が特徴です。身体介護とは異なり、日常生活の支援を行うため、生活援助では身体に触れるサポートは行いません。

「介護を受ける方の自立を支援する」という目的は、生活援助も同じです。そのため、必要以上には手を出さず、「できないことのみ」支援するよう心がけることが大切です。

その他の支援

介護の支援には、レクリエーションの提供も含まれます。レクリエーションを通じて、他の利用者や介護スタッフと交流する機会が生まれ、孤独感を和らげることが可能です。また、レクリエーションを通じて「楽しい」と感じることで、生きがいを見つけるきっかけにもなるでしょう。

さらに、介護の支援では精神面のケアも重要です。悩みを聞いたりストレスケアを行ったりすることで、介護を受ける方の心の安定を図ります。

介助の種類と内容

介助には6つの種類があります。ここからは、それぞれの特徴や内容について詳しく解説していきます。

歩行介助

歩行介助では、歩行に不安がある方をサポートし、転倒を未然に防ぐことで、安全に歩行できるよう支援します。

歩行介助には、介助を受ける方の状況に応じたさまざまな方法があります。以下は、それぞれの対象者と特徴です。

見守り歩行介助

対象者:自力歩行が少し不安定な方、杖などを利用すると自力歩行が可能な方。
特徴 :バランスを崩したり、つまずいたりしたとき、すぐ支えられるように近くで見守る。

寄り添い歩行介助

対象者:見守り歩行介助だけでは少し不安な方。
特徴 :介助者が対象者の側面に立ち、歩行をともにする。特に長距離移動の際に適している。

手引き歩行介助

対象者:介助なしで歩行すると転倒リスクが高い方。
特徴 :介助者が向かい合い、介助を受ける方の両手をとって歩行する。前後への転倒防止の効果は高いが、介助者の視界が制限されるため、長距離の移動には不向き。

階段昇降時の歩行介助

対象者:階段の昇降が困難な方。
特徴 :杖を使用していない場合、必ず片手で手すりをつかんでもらう。介助者は、上るときには斜め後ろ、降りるときには斜め前に立ち、バランスを崩した際に支えられるようにする。

歩行器具の歩行介助

対象者:歩行器具を使用している方。
特徴 :移動時には上半身を支え、安定した歩行をサポートする。介助を受ける方に麻痺などがある場合に向く。

移乗・移動介助

「移乗」とは、ベッドから車いす、車いすからトイレの便座や浴槽などへ乗り移る際の動作をサポートすることです。身体が不自由な方は自力での移乗が困難な場合があり、その際には介助が必要になります。

移乗介助では、介助者側の身体的負担も大きくなるため、正しい姿勢と適切な介助方法を理解し、安全に行うことが重要です。

一方、「移動」は、歩行や車いすにより、寝室からリビング、リビングからトイレなどへ動くことを指します。

更衣介助

更衣介助は、自分自身で着替えをすることが困難な方に対し、衣服の着脱をサポートする介助です。脱ぎ着しやすい洋服を選ぶことや、着替え時の室温調整など、快適に着替えられる環境を整えることが大事です。

また、できるだけ自分自身で着替えられるように、手順を示すなどのサポートも重要です。着替えの際には、すべて手助けするのではなく、必要に応じて手を支えるといった最低限の介助にとどめることがポイントになります。

食事介助

食事介助は、自力でうまく食事をとれない方に対し、食事のサポートをする介助です。介助を受ける方の状態に応じて、適切な食器や補助具を用意するほか、正しい姿勢で食事ができるように座る姿勢を調整することも重要です。

また、水分補給を促すことや、どれだけ水分を摂取したのか把握することも食事介助に含まれます。

排泄介助

排泄介助は、介助を受ける方の状況によって4つの種類に分けられます。以下、排泄介助の種類とそれぞれの特徴を示します。

トイレ介助

トイレへの誘導と排泄前後のサポートを行う。介助を受ける方の状況により、トイレまでの歩行介助、車いすから便器への移乗補助など、すべてを介助するケースと、一部のみ介助するケースがある。

ポータブルトイレ介助

トイレまで移動することが困難な場合に、ベッドサイドなどでポータブルトイレを利用する際の介助。ポータブルトイレは、本体と便座、排泄物用のバケツ、ふたが一体となっている簡易トイレを指す。

オムツ介助

便意や尿意を感じにくい状態、あるいは排泄のコントロールが困難な場合に利用する。オムツの種類はさまざまで、排泄後には交換し、清潔を保つ必要がある。

ベッド上の差込便器・尿器の介助

ベッドから起き上がれない方を対象とする、ベッドに寝たままの姿勢で排泄物を受けられる容器を利用した介助。使用後は容器を洗浄・消毒し、清潔を保つ必要がある。

入浴介助

入浴介助とは、介助を受ける方が、自力で入浴しにくい場合にサポートすることです。おもな目的は、身体を清潔に保ち感染症を予防すること、身体を温めてリラックス効果を得ることの2つです。

介助を受ける方の状態に合わせ、シャワー浴、湯船に浸かる「一般浴」、蒸しタオルでのふき取りなどの方法を選びます。また、「自分で洗いたい」などの希望がある場合はなるべく尊重し、洗いにくそうな部位のみ、さりげなくサポートするよう心がけましょう。

介助の必要度で4段階に分けられる

介助は、支援を要する度合いによって「自立」「一部介助」「半介助」「全介助」の4つの段階に分けられます。

自立は、基本的に自分で行動ができるため、介助の必要がない状態のことを指します。

自立に近い状態ではあるものの、転倒などの不安も残っている状態は、一部介助にあたります。この場合は見守りを要し、状況に応じて誘導やサポートをすることが必要です。

また、一部介助より多くのサポートを必要とする状態が半介助です。例えば「支えてもらえれば、ゆっくり歩ける」といった状況です。自分で行えることもあるものの、より多くのサポートが求められます。

そして、特定の行動が自力では行えず、全面的な介助が必要となる状態が全介助です。

介助の段階によって、本人ができる範囲は異なります。介助を受ける方が自分でできるところまでサポートしてしまうと、残っている力まで奪ってしまうことになりかねません。

介助を受ける方が必要とする支援の度合いを把握し、適切な介助を行うことが大切です。

介助する際に注意したいポイント

介助する際は、相手の気持ちや状況への配慮が大切です。ここからは、介助する際に気を付けたいポイントを解説します。

段階に合わせたサポートを行う

介助には段階があり、その段階によっては自分で行えることがまだ残っています。日々のトレーニングやリハビリによって、症状の進行を緩やかにしたり、現状維持を図ったりすることも可能です。

しかし、介助を受ける方の「できること」まで介助者が行ってしまうと、次第に自分で行えなくなり、結果として介助の必要性を高めるおそれがあります。

介助を行う際は、できることまで奪ってしまわないよう注意が必要です。「できることがある」「できることが増えた」ということは、身体機能の低下を防ぐだけでなく、自立した生活を送れる喜びや満足感、生きる意欲にもつながります。

介助を受ける方に寄り添い、できないことのみをサポートするという姿勢を大切にしましょう。

介助を受ける方のペースに合わせる

介助を受ける方は、見た目以上に体力が低下していたり、動けなくなっていたりすることがあります。そのため、介助を行う際は自分のペースではなく、相手のペースに合わせることが重要です。急いで行動すると、相手の身体に大きな負担をかけるだけではなく、思わぬ事故に発展する可能性もあります。

介助者の行動一つで、介助を受ける方が不安や恐怖を感じてしまうことも少なくありません。安心してもらうためには、ゆっくりとした動作を心がけ、「次に腕を支えますね」などと具体的に声をかけることが大切です。相手のペースに合わせ、思いやりのある介助を心がけましょう。

日本の介護の現状

日本の要介護認定者数は年々増加傾向にあり、今後も増え続けることが予測されています。

厚生労働省「令和3年度介護保険事業状況報告(年報)」および「第55回社会保障審議会介護保険部会資料」をもとに当社が推計したデータでは、2030年の要支援・要介護認定者数は以下のとおりです。
 要支援・要介護認定者数グラフ

※1厚生労働省「令和3年度 介護保険事業状況報告(年報)」

※2厚生労働省「令和3年度 介護保険事業状況報告(年報)」および「第55回社会保障審議会介護保険部会資料」より当社推計

介助の段階によっては、介助を受ける方へ常についていなければならないこともあるため、介護者が介護に費やす時間も増えて精神的、肉体的な負担が大きくなります。
介護者の負担を減らせるよう、長期的な介護には無理のない介護プランを立てることも大切です。

(公財)生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」のデータによると、要介護者の介護期間は平均で55.0カ月(4年7カ月)、4~10年未満の介護期間が最多で全体の27.9%を占めています。
なにより、予防介護という観点からも、介護者・介助者は自立支援に努め、介助や介護を受ける方の残っている力(できること)を引き出せるようなサポートを行うとよいでしょう。

介護と介助の違い・内容を理解し、自立支援へのサポートをしよう


介護とは、身体が不自由な方に対する支援行為全般を指します。それに対し、介助は日常生活を送るうえで必要とされる動作をサポートする「行為」をいいます。介助は介護を実現するための一つの手段です。

介護では、「身体介護」「生活援助」「その他の支援」の3つの形でサポートが行われます。介助には「歩行介助」や「更衣介助」、「食事介助」など6つの種類があり、受ける方が必要としている支援の度合いにより、サポートの程度が4つの段階に分けられます。必要とする介助の段階を把握し、適切に支援することが大切です。

ほかにも、相手のペースに合わせてサポートを行うなど、介助する際にはさまざまな注意が必要になります。適切な介助を行うことで、受ける方の自立を促し、生活の質を向上させられます。例えば、必要以上の手助けをせず、できる動作を見守ることも自立支援の一環です。

要介護認定者数は年々増加しており、今後も増え続けることが予測されます。介助の段階が上がれば、その分介護時間も増え、介助者の精神的・肉体的な負担が大きくなります。そのため、長期的な介護を見据え、無理のない介護プランを立てることが重要です。

 
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年3月10日

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