公的介護保険で利用できる「買い物同行」とは?
適用される範囲や利用の流れ


公的介護保険で利用できる「買い物同行」サービスは、日常生活に不便を感じる高齢者にとって心強い支援の一つです。しかし、具体的な支援内容などがわからず、利用をためらう方も少なくありません。

買い物同行には、公的介護保険で利用できる範囲や条件があらかじめ定められています。内容を理解しておくことで、安心してサービスを活用できるでしょう。

この記事では、公的介護保険における買い物同行サービスの概要をはじめ、利用できる範囲や注意点、利用までの流れなどをわかりやすく解説します。

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介護保険の「買い物同行」と「買い物代行」とは

「買い物同行」とは、ヘルパー(介護職員)が利用者に付き添い、買い物をサポートするサービスです。似たサービスとして、利用者本人の代わりにヘルパーが買い物を行う「買い物代行」があります。

どちらも公的介護保険の範囲内で利用できるサービスですが、内容や目的には違いがあります。利用を検討する前に、それぞれの特徴を確認しましょう。

「身体介護」扱いになるサービスが買い物同行

買い物同行は、1人では外出が難しい利用者に対して、見守りや移動の支援などを行う「身体介護」に分類されるサービスです。

例えば、買い物に行きたいけれど歩行や車いす操作に介助が必要な場合、ヘルパーが付き添ってお店まで同行します。移動の補助だけでなく、商品選びや会計のサポートなどの支援も行うのが特徴です。

買い物同行は、生活に必要なものを購入するだけでなく、利用者の心身機能の維持・向上といった「自立支援」の側面もあります。

「生活援助」扱いになるサービスが買い物代行

買い物代行は、利用者の代わりにヘルパーが買い物を行う「生活援助」に分類されるサービスです。身体介護をともなわず、利用者の生活環境を整えることを目的としています。

基本的には、利用者から必要な物品のリストやメモを受け取り、ヘルパーが1人で買い物に行きます。

生活援助に分類されるサービスには、掃除・洗濯・調理など、日常生活の家事支援が含まれます。買い物代行もその一部として位置付けられているのです。

なお、どちらのサービスでも公的介護保険で購入できるものは「日常生活に必要な最低限の物品」に限られます。嗜好品や家族用の品物は対象外となるため注意が必要です。

買い物同行を利用するメリット

 
「買い物同行」サービスには、利用者や家族にとってさまざまなメリットがあります。ここでは、3つのおもなメリットを紹介します。

安心して買い物できる

介護職員が付き添うことで、歩行中の転倒や段差でのつまずきといった事故のリスクを抑えながら、安心して外出できます。

また、商品選びやレジでの支払い時などにもサポートを受けられるため、買い物の一連の流れをスムーズに行えることも大きな利点です。

さらに、自分の意志で商品を選び、買い物を続けられることは、自立支援の観点からも非常に重要です。

買い物を通じて社会参加や交流機会ができる

買い物の際には、スーパーや商店でのやり取りを通じて人と触れ合う機会が自然に生まれます。

店員や周囲の人との会話は、利用者にとって心の刺激となり、心身の活性化や認知症予防にも役立つといわれています。

また、地域社会とのつながりを保つことで孤立感をやわらげ、安心感を得られるなど、日常生活の質の維持・向上にもつながります。

家族の負担軽減と介護継続性の確保につながる

介護職員が買い物をサポートすることで、家族の精神的・身体的な負担を大きく減らせます。

遠方に住んでいたり、仕事があったりで買い物に付き添うことが難しい家庭でも、買い物同行サービスによってヘルパーが被介護者の外出を支援してくれるので、安心感を得られるでしょう。

また、介護に専念している家族にとっては、介護疲れを防ぎ、無理のない形で介護を長く続けられるという効果も期待できます。

買い物同行のルールと制限事項

買い物同行サービスを利用する前に、あらかじめ基本的なルールや制限事項を理解しておきましょう。

生活圏内での買い物に限定される

買い物同行は、自宅周辺などの生活圏内の日常的な買い物を対象としています。そのため、遠方のショッピングモールや観光地など、日常生活の範囲を超える外出先での利用は認められていません。

また、通院や趣味目的の外出と組み合わせた買い物も公的介護保険の対象外です。食料品や日用品など、あくまで生活の維持に必要な範囲でのみ利用できます。

複数店舗の利用や過度な重量物は不可

買い物同行では、複数の店舗を巡る行為や比較目的での買い回りなどは原則として認められていません。ただし、一つの店舗で必要なものが揃わない場合など、やむを得ない事情があるときは、別の店舗での購入が認められることもあります。

また、大きな家具や重量物の購入など、移動や運搬に危険をともなう買い物も範囲外です。サービスは限られた時間内で安全に行うことが前提であり、ヘルパーが同行しても無理のない内容にとどめる必要があります。

利用者本人のための買い物のみ対応

買い物同行で支援できるのは、利用者本人の生活維持に必要な買い物に限られます。公的介護保険の制度上、同居家族など他者のための買い物は対象外です。

購入内容が本人の生活に直接かかわるかどうかは、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づいて判断されます。

嗜好品や贈答品の購入は対象外であり、本人の暮らしを支えることがサービスの目的である点を意識しましょう。

買い物同行サービスで買えるもの・買えないもの

 
買い物同行では、購入できるものと購入できないものが定められています。その内容について、具体的に解説します。

買える|食品・日用品・薬など

買い物同行で購入できるものは、おもに以下になります。

食料品

米、パン、野菜、調味料など

日用品

洗剤、トイレットペーパー、ティッシュなど

その他

医師の処方が不要な市販薬、衛生用品など

これらは、日常生活を安全かつ衛生的に送るために欠かせない範囲のものとして認められています。

買えない|嗜好品・贈答品・家族分など

買い物同行で購入できないものは、おもに以下になります。

嗜好品や娯楽目的のもの

酒類、たばこ、雑誌、菓子類など

贈答品

家族や友人へのプレゼント、お中元など

利用者本人以外が利用するもの

同居家族の生活用品など

これらは、本人の生活維持に直接必要ではないと判断されるため、支援の範囲に含まれません。

買い物同行を利用するときの流れ

公的介護保険を利用して「買い物同行」サービスを受けるには、まず要介護認定を受けていることが前提となります。

要介護または要支援いずれかの認定を取得したうえで、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)に身体介助や買い物同行を希望する旨を伝えましょう。

ケアマネジャーが作成するケアプラン(介護サービス計画)のなかに「買い物同行」が位置付けられると、公的介護保険の対象としてサービスを利用できるようになります。

その後、利用者は訪問介護事業所と契約を結び、サービスの提供日・時間・利用回数・支援内容を具体的に決定します。契約後は、事業所のヘルパーが付き添い、買い物を支援します。

ただし、自治体や事業所によって運用ルールが異なる場合があるため、利用前に詳細を確認しておくことが大切です。

要介護認定を申請する方法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
要介護認定を受けるには?認定の基準や申請までの流れ・受けられるサービスとは

公的介護保険の買い物同行を利用できない場合の選択肢

買い物同行は要介護認定を受けていても、ケアプラン上で「必要性が低い」と判断された場合や対象範囲外の内容とみなされた場合には利用できないことがあります。

そのようなときには、公的介護保険外の自費サービスの利用も一つの方法です。

例えば、民間の家事代行サービスやシルバー人材センターなどでは、買い物の同行・代行を含む生活支援を自費で依頼できます。これらは、時間や依頼内容の自由度が高く、公的介護保険よりも柔軟に利用できる点が特徴です。

また、ネットスーパーや宅配サービスを利用すれば、重い荷物を持たずに日用品や食料品を自宅まで届けてもらえます。インターネットでの注文が難しい場合は、電話注文に対応しているサービスを利用するとよいでしょう。

さらに、自治体によっては高齢者生活支援事業として、地域ボランティアや委託事業者が買い物支援を行っているケースもあります。

ただし、公的介護保険以外のサービスは原則として全額自己負担となるため、利用にあたっては費用面の備えも必要です。

公的介護保険の買い物同行サービスは
自立支援と家族負担軽減の両立に貢献


「買い物同行」とは、身体介護に分類されるサービスの一つです。あくまでも自立支援や生活維持を目的としており、利用には一定の制限が設けられています。

その上で、安心して買い物できることや社会参加の機会が得られること、介護にあたる家族の負担が軽減されることなど、多くのメリットがあります。快適に利用するためにも、事前にサービスの内容やルールなどを確認しておくと安心です。

また、公的介護保険の買い物同行以外にも、自費で利用できる付き添いサービスという選択肢もあります。その場合は費用がかかるため、事前に費用の備えをしておきましょう。

 
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年11月12日

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