不服申立ての手続きを始める前に、現在の状況を整理しましょう。ポイントは、なぜ地方自治体がその結果を出したのかという理由の把握、そして不服申立て以外の手法である「区分変更申請」との比較検討を行うことです。それぞれ解説します。
まずは、地方自治体がなぜその結果を出したのか、根拠となる資料を確認しましょう。介護保険課や福祉担当などの窓口で情報開示を請求すれば、認定調査票や主治医意見書、一次判定の結果などを閲覧できます。
なかでも、主治医による意見書の内容は重要なので、よく確認しましょう。また、訪問調査のデータも、実態と相違がないかチェックすることが必要です。不明点はそのままにせず、窓口で認定処分の経緯について直接説明を受けることをおすすめします。
不服申立て(審査請求)と区分変更申請のどちらかを検討する
現在の認定結果を見直したい場合、可能な手段は大きく分けて、不服申立て(審査請求)と区分変更申請の2つがあります。
不服申立て(審査請求)は、都道府県が設置している介護保険審査会に対し、決定の妥当性を問う手続きです。申立てが認められれば現在の認定を取り消して再審査を行いますが、結論が出るまで数カ月かかることもあります。
一方の区分変更申請は本来、身体の状態の変化にともなう手続きですが、通常の要介護認定の更新前でも申請ができます。1カ月程度で結果が出るため、審査請求よりも迅速です。
なお、介護認定の有効期限が近い場合は、そのまま更新時期を待つほうが手続きの負担は軽くなるでしょう。区分変更申請後の認定の有効期間は3~12カ月と設定されており、すぐに次の更新時期がきます。状況に応じて判断することをおすすめします。
介護認定の結果に納得がいかない場合、不服申立ての手続きとして「審査請求」を行うことになります。
地方自治体が行った要介護認定などの手続きを「行政処分」と呼びます。この行政処分に対して不満がある際に、都道府県に対して見直しを求める手段が「審査請求」です。これは介護保険法第183条に基づいた権利として認められています。
審査請求のおもな目的は、地方自治体が行った行政処分の取り消しを求めることです。請求を受けた都道府県の介護保険審査会は、認定に不当な点がなかったかを審査します。もし審査会が地方自治体の判断に問題があると認めた場合には、処分の全部または一部を取り消します。
ここで注意が必要なのは、処分の取り消しをしたのちに、審査会が独自に要介護度の認定をやり直すわけではないという点です。処分取り消し後は、あくまで地方自治体があらためて認定をやり直す仕組みとなっています。
審査請求は結論が出るまでに時間がかかるうえ、最終的に希望どおりの認定結果につながるとは限りません。この点を理解したうえで、慎重に検討することが必要です。
以下では、不服申立てに必要な審査請求について、請求できる人や手続きを行う場所、申請できる期間について詳しく解説します。
審査請求ができるのは、原則として被保険者本人です。本人が手続きを行えない場合は、本人の委任を受けた代理人(家族やケアマネジャーなど)が行うこともできます。
手続きの窓口は、お住まいの都道府県に設置されている介護保険審査会です。申請可能な期間は、認定結果を受け取った日の翌日から3カ月以内と定められています。
審査の対象となるのは、介護給付に関する個別の処分内容です。認定基準や制度そのものの是非を審査する場ではありません。
審査請求をしたい場合は、ケアマネジャーや地方自治体の窓口に相談し、速やかに必要書類の準備を進めましょう。おもな提出書類は以下のとおりです。
通常、手続きにかかる費用は郵送代などの実費のみです。最近では電子申請を受け付けている地方自治体も増えています。書類の様式や必要部数などは地域によって異なることがあるため、事前に確認しておきましょう。
以下からは、審査請求書を提出してから判断が出るまでの一連の流れをステップごとに詳しく解説します。
まずは審査請求に必要な書類をそろえ、郵送や持ち込みなどで都道府県の介護保険審査会事務局に提出します。窓口は地方自治体によって異なる場合がありますので事前に確認しましょう。
提出後は、介護保険審査会より受理番号や今後のスケジュールの連絡があります。書類の不備に関する補正依頼があった場合は、速やかに対応しましょう。
審査請求書の補正が終わると、介護保険審査会による要件審査が行われます。ここでは、申立人に資格があるか、請求期限が守られているか、申立ての対象が適切か、といった内容が確認されます。
要件を満たしていると判断されれば審査請求が正式に受理され、受理通知書が送付されます。その後、地方自治体にも審査請求があったことが通知され、本格的な審査手続きへと進みます。
審査請求が受理されたのち、地方自治体から介護保険審査会に弁明書が提出されます。記載されている内容は、認定調査の結果や主治医意見書、認定審査会での審議内容など、処分の詳しい根拠です。
弁明書の副本は申立人の元に送付されるため、地方自治体がどのような理由で判定を下したのかを具体的に確認できます。
地方自治体が提出した弁明書の内容に不服があれば、申立人は反論書を介護保険審査会に提出します。どのような異議があるのか、具体的な理由や事実を記載しましょう。
さらに異議が続く場合は、再弁明書や再反論書のやり取りが繰り返されます。このプロセスは双方が主張を出し尽くすまで継続され、審理が深められます。
再弁明書と再反論書のやり取りが終了すると、介護保険審査会による審理が始まります。最終的な判断である裁決には、おもに以下の3つのパターンがあります。
主張が認められた場合には、あらためて地方自治体による介護認定のやり直しへと進むことになります。
審査請求を実行に移す前に、その利点とリスクを理解しておくことが重要です。審査請求のメリットとデメリットを整理して解説しましょう。
最大のメリットは、認定結果が見直される可能性がある点です。地方自治体の判断プロセスに不当な点があったと認められれば、あらためて調査・審査が行われます。
また、審査の過程で新たな事実や情報が考慮されることもあります。認定調査時に伝えきれなかった心身の状態や、主治医意見書に反映されていなかった情報が、審査を通じてあらためて精査されるためです。
さらに、弁明書や反論書をやり取りするなかで、認定結果を算出した根拠を深く知れます。これは、申立人が納得するための一助となるでしょう。
デメリットとしてまず挙げられるのが審査時間です。一般的に、審査請求は区分変更申請に比べ、裁決までに長い時間がかかります。
また、申請書類や反論書の作成など、手続きの負担が大きい点も無視できません。
さらに注意すべきは、再審査のあとに出される認定結果です。現在の認定結果よりも要介護度が低くなる可能性もあります。
審査請求は、このようなメリットとデメリットを踏まえたうえで、担当のケアマネジャーや家族とよく相談しながら検討することをおすすめします。