介護保険の「高額介護サービス費」とは?
自己負担上限額や申請方法を確認


介護サービスの利用が続くと、想定以上に出費がかさむことがあります。そこで、利用できる公的支援制度について知りたいと考えている方もいるのではないでしょうか。また、高額介護サービス費という名称は聞いたことがあっても、詳しい内容まではわからないという方もいるかもしれません。

高額介護サービス費は、公的介護サービスの利用によって発生した1カ月の自己負担額が一定額を超えた場合に、超過分の支給を受けられる制度です。

本記事では、高額介護サービス費の概要から申請時のポイントを整理し、制度を利用する際に知っておきたい内容をまとめています。ぜひ参考にしてください。

「高額介護サービス費」とは

高額介護サービス費は、公的介護サービスの利用により1カ月の自己負担額が高額になった場合に、負担を軽減できる公的制度です。まずは制度の概要と、高額療養費制度との違いを確認しておきましょう。

公的介護サービス費の自己負担額を軽減する制度

公的介護サービスを利用した際に利用者の支払った金額が、一定の基準額を上回った場合、超えた分の金額はあとから払い戻されます。この仕組みが高額介護サービス費です。支給額は、所得状況によって定められた利用者ごとの負担上限額をもとに計算されます。

公的介護サービスを継続的に利用すると費用負担が大きくなりやすいため、高額介護サービス費は家計負担の軽減につながる制度として活用できます。

高額療養費制度との違い

高額介護サービス費は、公的介護サービスの自己負担額が高額になった場合の負担軽減です。これに対し、高額療養費制度は病院代や薬代といった医療費の1カ月当たり自己負担額が一定額を超えた場合に、その超過分が払い戻される制度です。

介護と医療は別の保険制度であるため、対象となる費用も異なります。ただし、介護が必要になると通院や入院の機会も増えがちで、状況によっては両方の制度を利用できる場合もあります。

高額介護サービス費の利用者負担上限額

高額介護サービス費で払い戻しを受けられる金額は、すべての利用者が同じではなく、所得水準によって負担の上限額も異なります。まずは上限額の考え方や区分ごとの違いを確認しておきましょう。

利用者負担上限額は所得区分で決まる

利用者負担の上限額を判断する際には、世帯の課税状況や収入額などが考慮されます。一般的に、住民税非課税世帯は負担が軽くなるように配慮される一方、所得が高い世帯ほど上限額も高く設定されています。

所得区分ごとの自己負担上限額一覧

高額介護サービス費の自己負担上限額は、所得区分ごとに設定されています。おもな所得区分と自己負担上限額は以下のとおりです。
設定区分 対象者 負担の上限額(月額)
第1段階 ①生活保護を受給している方等
②15,000円への減額により生活保護の被保護者とならない場合
③市町村民税世帯非課税の老齢福祉年金受給者
①15,000円(個人)
②15,000円(世帯)
③24,600円(世帯)
 15,000円(個人)
第2段階 市町村民税世帯非課税で公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80.9万円以下 24,600円(世帯)
15,000円(個人)
第3段階 市町村民税世帯非課税で第1段階及び第2段階に該当しない方 24,600円(世帯)
第4段階 ①市区町村民税課税世帯~課税所得380万円(年収約770万円)未満
②課税所得380万円(年収約770万円)~690万円(年収約1,160万円)未満
③課税所得690万円(年収約1,160万円)以上
①44,400円(世帯)
②93,000円(世帯)
③140,100円(世帯)
なお、高額介護サービス費は、次に示す条件を満たす場合、同じ世帯内の自己負担額を合算して申請できます。

世帯合算されるケース

同一世帯内で複数人が公的介護サービスを利用している場合は、利用者ごとの負担額ではなく、世帯全体の負担額で判定されます。例えば、夫婦ともに公的介護サービスを利用している場合、個別では対象外であっても、世帯全体で見ると払い戻しの対象になることがあります。

ただし、合算の対象となるのは在宅サービスや施設サービスの利用費に限られ、特定福祉用具購入費や施設での食費・居住費、住宅改修費などは対象外です。

高額介護サービス費の対象となる介護サービス

 
公的介護サービスに関する支出には、高額介護サービス費の算定対象になるものと、対象外になるものがあります。制度を正しく活用するためには、対象範囲を把握しておくことが大切です。

対象になるおもなサービス

払い戻しの対象となるのは、公的介護保険が適用されるサービスの利用費です。例えば、訪問介護やデイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所生活介護)、訪問看護、福祉用具貸与のほか、特別養護老人ホーム(特養)などの施設サービスが該当します。

こうしたサービスを複数、あるいは長期間利用することで自己負担が増え、高額介護サービス費の支給対象となる場合があります。

対象外となる費用

介護に関連する費用であっても、すべてが支給対象として扱われるわけではありません。例えば、介護施設やショートステイ利用時の食費・居住費、福祉用具購入費、住宅改修費などは支給対象から除かれます。

そのため、介護費の負担軽減を考える際には、利用を検討するサービス費用が制度の対象に含まれるのかをあらかじめ確認しておくことが大切です。

高額介護サービス費の申請方法

支給対象となる場合でも、自動的に払い戻しが行われるわけではありません。実際に支給を受けるためには申請手続きが必要です。ここでは、申請の流れや準備しておきたい書類を確認しておきましょう。

申請から支給までの流れ

介護費用の1カ月の自己負担額が利用者負担上限額を超えた場合、自治体から支給対象者へ高額介護サービス費に関する案内や申請書が送付されます。申請書が届いたら、必要事項を記入し、必要書類とともに自治体の窓口へ提出しましょう。

申請が受理されると、後日、上限額を超えた分が指定口座へと払い戻されます。初回は申請しなければ払い戻しを受けられないため、注意が必要です。2回目以降は、利用者負担上限額を超えた際に自動的に払い戻されるようになります。案内が届いた際には早めに内容を確認し、期限内(支給対象である介護保険サービスが提供された月の翌月1日から2年以内)に申請することが大切です。

申請に必要な書類

高額介護サービス費の申請時には、自治体から送付される申請書のほか、介護保険被保険者証や振込先口座がわかるものなどが必要です。自治体によってはマイナンバー関係の書類の提出を求められる場合もあります。

必要書類は自治体によって異なることがあるため、申請前に市区町村の窓口や案内書類で確認しておくと手続きをスムーズに進められるでしょう。

申請時の注意点

支給までに要する期間や申請時の取り扱いは、自治体によって異なる場合があります。また、申請後すぐに振り込まれるわけではなく、実際の支給まで一定期間を要することもあります。

なお、本人による手続きが難しい場合は、家族が代理で申請することもできますが、その際は委任状などの提出を求められるため、必要な書類などを事前に自治体へ確認しておくと安心です。

高額介護サービス費と併用できる制度

 
介護費の負担を軽減する制度は、高額介護サービス費だけではありません。医療費と介護費を合わせて支援を受けられる制度や、施設利用時の食費・居住費を軽減できる制度もあるため、併せて確認しておくとよいでしょう。

例えば「高額医療・高額介護合算療養費制度」は、1年間に支払った医療保険と公的介護保険の自己負担額を合算し、定められた上限額を超えた場合に、超過分の払い戻しを受けられる制度です。公的介護サービスの利用に加え、通院や入院などで医療費の負担が大きくなった場合に活用できる可能性があります。

「介護保険負担限度額認定制度」は、介護やショートステイを利用する際の食費や居住費を軽減する制度です。高額介護サービス費では食費や居住費は対象外ですが、一定の所得要件などを満たす場合には、この制度によって負担を抑えられることがあります。

介護にかかる費用負担を軽減するためには、高額介護サービス費だけでなく、状況に応じて上記のような制度も活用していくとよいでしょう。

高額介護サービス費を活用し、介護費負担を軽減しよう


介護サービスの利用が続き、毎月の自己負担額が想定以上に大きくなったときに活用したい制度が、高額介護サービス費です。所得区分ごとに設定された負担上限額を超えた場合には、支給を受けられる可能性があります。

併せて、高額医療・高額介護合算療養費制度や介護保険負担限度額認定制度などを活用することで、介護費のさらなる負担軽減につながる場合もあります。利用できる制度の内容や対象を正しく理解し、介護にかかる経済的負担に備えましょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

久毛 希[作業療法士]

作業療法士として回復期病院や介護老人保健施設での臨床を経て、リハビリテーション専門学校の専任教員を歴任。現在は特別養護老人ホームにて機能訓練指導員として従事しながら、医療・介護ライターとしての医療・介護系記事執筆・編集・監修を行っている。

資格:作業療法士・福祉用具プランナー・福祉住環境コーディネーター2級・認定心理士・薬機法・医療法規格協会 YMAA個人認証 取得
など

公開日:2026年7月14日

介護について知る

介護を予防する

介護について考える

公的制度・支援サービス

介護の費用

介護が始まったら

認知症について知る

認知症とは

認知症の予防

もの忘れ・認知症の専門家の
特別コンテンツ

生活習慣病について知る

生活習慣病とは

生活習慣病の予防

老後の備え方

年代別アドバイス