高額介護サービス費は、公的介護サービスの利用により1カ月の自己負担額が高額になった場合に、負担を軽減できる公的制度です。まずは制度の概要と、高額療養費制度との違いを確認しておきましょう。
公的介護サービスを利用した際に利用者の支払った金額が、一定の基準額を上回った場合、超えた分の金額はあとから払い戻されます。この仕組みが高額介護サービス費です。支給額は、所得状況によって定められた利用者ごとの負担上限額をもとに計算されます。
公的介護サービスを継続的に利用すると費用負担が大きくなりやすいため、高額介護サービス費は家計負担の軽減につながる制度として活用できます。
高額介護サービス費は、公的介護サービスの自己負担額が高額になった場合の負担軽減です。これに対し、高額療養費制度は病院代や薬代といった医療費の1カ月当たり自己負担額が一定額を超えた場合に、その超過分が払い戻される制度です。
介護と医療は別の保険制度であるため、対象となる費用も異なります。ただし、介護が必要になると通院や入院の機会も増えがちで、状況によっては両方の制度を利用できる場合もあります。
高額介護サービス費で払い戻しを受けられる金額は、すべての利用者が同じではなく、所得水準によって負担の上限額も異なります。まずは上限額の考え方や区分ごとの違いを確認しておきましょう。
利用者負担の上限額を判断する際には、世帯の課税状況や収入額などが考慮されます。一般的に、住民税非課税世帯は負担が軽くなるように配慮される一方、所得が高い世帯ほど上限額も高く設定されています。
高額介護サービス費の自己負担上限額は、所得区分ごとに設定されています。おもな所得区分と自己負担上限額は以下のとおりです。
| 設定区分 |
対象者 |
負担の上限額(月額) |
| 第1段階 |
①生活保護を受給している方等
②15,000円への減額により生活保護の被保護者とならない場合
③市町村民税世帯非課税の老齢福祉年金受給者 |
①15,000円(個人)
②15,000円(世帯)
③24,600円(世帯)
15,000円(個人) |
| 第2段階 |
市町村民税世帯非課税で公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80.9万円以下 |
24,600円(世帯)
15,000円(個人) |
| 第3段階 |
市町村民税世帯非課税で第1段階及び第2段階に該当しない方 |
24,600円(世帯) |
| 第4段階 |
①市区町村民税課税世帯~課税所得380万円(年収約770万円)未満
②課税所得380万円(年収約770万円)~690万円(年収約1,160万円)未満
③課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 |
①44,400円(世帯)
②93,000円(世帯)
③140,100円(世帯) |
なお、高額介護サービス費は、次に示す条件を満たす場合、同じ世帯内の自己負担額を合算して申請できます。
同一世帯内で複数人が公的介護サービスを利用している場合は、利用者ごとの負担額ではなく、世帯全体の負担額で判定されます。例えば、夫婦ともに公的介護サービスを利用している場合、個別では対象外であっても、世帯全体で見ると払い戻しの対象になることがあります。
ただし、合算の対象となるのは在宅サービスや施設サービスの利用費に限られ、特定福祉用具購入費や施設での食費・居住費、住宅改修費などは対象外です。
公的介護サービスに関する支出には、高額介護サービス費の算定対象になるものと、対象外になるものがあります。制度を正しく活用するためには、対象範囲を把握しておくことが大切です。
払い戻しの対象となるのは、公的介護保険が適用されるサービスの利用費です。例えば、訪問介護やデイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所生活介護)、訪問看護、福祉用具貸与のほか、特別養護老人ホーム(特養)などの施設サービスが該当します。
こうしたサービスを複数、あるいは長期間利用することで自己負担が増え、高額介護サービス費の支給対象となる場合があります。
介護に関連する費用であっても、すべてが支給対象として扱われるわけではありません。例えば、介護施設やショートステイ利用時の食費・居住費、福祉用具購入費、住宅改修費などは支給対象から除かれます。
そのため、介護費の負担軽減を考える際には、利用を検討するサービス費用が制度の対象に含まれるのかをあらかじめ確認しておくことが大切です。
支給対象となる場合でも、自動的に払い戻しが行われるわけではありません。実際に支給を受けるためには申請手続きが必要です。ここでは、申請の流れや準備しておきたい書類を確認しておきましょう。
介護費用の1カ月の自己負担額が利用者負担上限額を超えた場合、自治体から支給対象者へ高額介護サービス費に関する案内や申請書が送付されます。申請書が届いたら、必要事項を記入し、必要書類とともに自治体の窓口へ提出しましょう。
申請が受理されると、後日、上限額を超えた分が指定口座へと払い戻されます。初回は申請しなければ払い戻しを受けられないため、注意が必要です。2回目以降は、利用者負担上限額を超えた際に自動的に払い戻されるようになります。案内が届いた際には早めに内容を確認し、期限内(支給対象である介護保険サービスが提供された月の翌月1日から2年以内)に申請することが大切です。
高額介護サービス費の申請時には、自治体から送付される申請書のほか、介護保険被保険者証や振込先口座がわかるものなどが必要です。自治体によってはマイナンバー関係の書類の提出を求められる場合もあります。
必要書類は自治体によって異なることがあるため、申請前に市区町村の窓口や案内書類で確認しておくと手続きをスムーズに進められるでしょう。
支給までに要する期間や申請時の取り扱いは、自治体によって異なる場合があります。また、申請後すぐに振り込まれるわけではなく、実際の支給まで一定期間を要することもあります。
なお、本人による手続きが難しい場合は、家族が代理で申請することもできますが、その際は委任状などの提出を求められるため、必要な書類などを事前に自治体へ確認しておくと安心です。
介護費の負担を軽減する制度は、高額介護サービス費だけではありません。医療費と介護費を合わせて支援を受けられる制度や、施設利用時の食費・居住費を軽減できる制度もあるため、併せて確認しておくとよいでしょう。
例えば「高額医療・高額介護合算療養費制度」は、1年間に支払った医療保険と公的介護保険の自己負担額を合算し、定められた上限額を超えた場合に、超過分の払い戻しを受けられる制度です。公的介護サービスの利用に加え、通院や入院などで医療費の負担が大きくなった場合に活用できる可能性があります。
「介護保険負担限度額認定制度」は、介護やショートステイを利用する際の食費や居住費を軽減する制度です。高額介護サービス費では食費や居住費は対象外ですが、一定の所得要件などを満たす場合には、この制度によって負担を抑えられることがあります。
介護にかかる費用負担を軽減するためには、高額介護サービス費だけでなく、状況に応じて上記のような制度も活用していくとよいでしょう。