高額療養費制度とは?

通院や薬など、出費がかさみがちな介護で、
お金の心強い味方になってくれるのが、高額療養費制度です。
この制度は、「ひと月以内の医療機関や薬局での支払いが
一定額を超えた場合、超えた分のお金が支給される」というものです。

そもそも、どんな制度なの?

高額療養費制度は、医療費の家計負担が重くならないように用意された仕組みで、医療機関や薬局で支払った1ヵ月分の医療費(入院時の食費や差額ベッド代などは含みません)が一定額を超えた場合に、超えた金額を支給する制度です。
70歳以上・年収約370万円~770万円の場合(3割負担)
100万円の医療費で、窓口の負担(3割)がかかる場合
総額100万円の医療費のうち、3割の30万円を負担した場合、制度を活用すると、212,570円が支給されるため、
負担額が87,430円まで下がります。

負担はどれくらい減るの?(上限額)

上記で紹介した例では、負担額は30万円から87,430円まで減りました。しかしこれは、このモデルケースの場合。誰もが、いつでも、同じように負担が減るわけではありません。上限額は年齢や年収などに応じて変わります。

70歳以上の方の上限額

1つの医療機関等での自己負担(院外処方代を含みます。)では上限額を超えないときでも、同じ月の別の医療機関等での自己負担を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(平成30年8月診療分から)

69歳以下の方の上限額

1つの医療機関等での自己負担(院外処方代を含みます。)では上限額を超えないときでも、同じ月の別の医療機関等での自己負担(69歳以下の場合は2万1千円以上であることが必須です)を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(平成30年8月診療分から)

知っておいて損はない、高額療養費制度のポイント

高額療養制度には、いくつかのポイントがあり、中には知らないと損をしてしまうこともあります。代表的なポイントをご紹介しますので、賢く制度を活用しましょう。

「病院に支払ったお金」の中にも対象外がある

「保険適用される診療に対し、患者が支払った自己負担」が対象になります。つまり、食費、居住費、差額ベッド代、先進医療にかかる費用などは対象外。
高額な個室に入院してお金がかかっても、その分は支給されませんので、注意しましょう。

さらに負担が減る仕組み
「多数回該当」

過去12ヵ月以内に3回以上、上限額に達した場合、4回目から上限額が下がります。

複数の病院で使った費用を
合算できる

同じ月(1日〜30日・31日)内であれば、他の病院などで使用した医療費を合算することができます。
「上限額が8万円の人が、病院A、病院Bでそれぞれ5万円を支払った」場合、差額の2万円が支給されます。

ただし、69歳以下の方の受診については、2万1千円以上の自己負担のみ合算されます。

同じ世帯の医療費を
合算できる

ひとつの世帯にいる被保険者(同じ医療保険に加入している方に限ります。)の医療費を合算することができます。
「夫Aさんが●●病院で5万円、妻Bさんが◇◇病院で5万円」を支払った場合、合計の10万円が対象となります。

ただし、69歳以下の方の受診については、2万1千円以上の自己負担のみ合算されます。

どうやって申し込むの?

加入している公的医療保険(健康保険組合・協会けんぽの都道府県支部・市町村国保・後期高齢者医療制度・共済組合など)に、高額療養費の支給申請書を提出、または郵送することで支給が受けられます。詳しくはそれぞれの公的医療保険にお問い合わせください。病院などの領収書の添付を求められる場合もあります。
ご自身が加入されている公的医療保険の種類は、保険証から確認することができます。

気をつけなければいけない注意ポイントも!

高額療養費制度は、医療費の家計負担を軽減してくれる一方で、制度の対象外となるケースがあるなど、注意すべきポイントもあります。
  • 収入が高い人は上限額も高い。
  • ひと月以内に上限額に届かなければ、対象にはならない。
  • 69歳以下の人は、70歳以上の人よりも上限額が高い。
  • 差額ベッド代や先端医療など、保険が適用されない出費には対応できない。
  • 同じ世帯でも加入している公的保険が別の場合は、世帯で合算することができない。
特に、医療費負担が長期に渡ることがある介護では「ひと月以内に上限額に届かなければ、制度の対象にならない」ことには、注意が必要です。
上限額が8万円の場合、毎月7万円×12ヵ月の負担があっても、制度の対象にはなりません。
また、差額ベッド代などが対象に含まれないことも、費用負担の軽減を妨げる要因になっています。
高額療養費制度は、医療費が高額になった時には頼れる制度ですが、
決して「これだけあれば安心」というものではないのです。
将来の介護を見据えて備えるのであれば、民間の介護保険を含め、
さまざまな自助努力の準備をしておく必要があります。

淑徳大学 総合福祉学部
教授 結城康博

1969年生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒業。法政大学大学院経済学研究科博士前期課程修了、法政大学大学院政治学研究科博士後期課程修了。地方自治体にて介護職、ケアマネジャー、地域包括支援センター職員として勤務。厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会委員を務めた実績を持つ。著書には『在宅介護-自分で選ぶ視点』『介護破産-働きながら介護を続ける方法』『正義と福祉-競争と自由の限界 』『親の介護でパニックになる前に読む本 』『介護職がいなくなる-ケアの現場で何が起きているのか 』など。介護のエキスパートとしてメディアにも多数出演。

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