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あなたの「?」にもの忘れ・認知症の専門医が答える 認知症クリニック

第8回認知症患者の食生活と住環境。
どのようにサポートすればよいでしょうか?

食と住まいは、暮らしの基本。上手にサポートすることで、暮らしを快適で楽しいものにすることができます。

認知症患者さんにとって、食事と安心して暮らすための適正な住環境はとても大切なものです。今回は、その食と住まいのサポート方法についてご紹介します。

認知症患者さんの食サポート

認知症患者さんの場合、食事をしたことを忘れたり、上手に食べることができなくなったりします。食べることは生きる源、健康の基本です。患者さんの症状に合わせた適切なサポートで、食事の時間を楽しい時間にすることが大切です。

認知症患者さん&認知症予防にも
おすすめの食事とは!?

認知症の患者さんにおすすめしたいのは、脳の健康を維持するのに適した食事を摂ることです。ポイントとなるのは「栄養バランスのよさ」「適正な摂取カロリー」「塩分控えめ」「糖分控えめ」の4つ。これは、認知症予防にも適した食事になりますので、患者さんだけではなく、ご家族みなさんの食事で心がけるとよいでしょう。

のどの筋肉の衰えや早食い、口の大きさに合わない食べ物などが原因で、食べ物をのどに詰まらせることがありますので、食事の提供スピードや具材の大きさには気を配りましょう。焦らず、よく噛んで、味わって食べてもらうことが大切です。また、水分は飲み込みやすく思われますが、筋肉が衰えていると気管に入りやすく、むせてしまうことも多いので、とろみをつけるなどの工夫をしましょう。

おすすめの食材は次のようなものになります。「まごわやさしいよ」と覚えて活用してみてください。

認知症患者さんにおすすめの食べ物

食サポートのポイント

楽しく食べるための工夫

一人で食事をするのは寂しいものです。患者さんの介護状態にもよりますが、状況が許せば、患者さんと一緒に食事をすることをおすすめします。
また、患者さんが好きな色や柄のランチョンマットを使う、料理を小さなお皿に少しずつ盛り付けて出すなど、楽しいテーブル演出も心がけてみてください。

食べ続けてしまう場合の対応

多く食べてもカロリー過多にならないように、ローカロリーの食事を出すようにしましょう。患者さんの手の届くところに食べ物を置かないことも大切です。
また、食べ物を一気に詰め込んで窒息する可能性や、食べ物ではないものを食べてしまう可能性もありますので、注意が必要です。

食べたことを忘れてしまう場合の対応

食べ終わった食器をしばらくそのままにして、食べたことを印象付ける方法が有効な場合もあります。 みんなで食べる時には、食べるのが遅い人には先に、早い人は後に配膳するとよいでしょう。

手づかみで食べてしまう場合の対応

美しい姿ではないかもしれませんが、患者さんの「食べたい」と思う気持ちを尊重してあげてください。手づかみで食べる前提でメニューを考えるのもよいでしょう。

食事をしようとしない場合の対応

食べたくないのではなく「どのように食べたらよいのか」「何を食べたらよいのか」がわからなくなっていたり、便秘による腹部膨満感の場合もあります。また、義歯が合わない、虫歯による痛みなどの口腔内や顎の問題で、食事ができないケースもあります。

まずは、食事をしない原因を突き止めることが大切です。認知症が一段階進行した可能性もありますので、主治医に報告するようにしましょう。便秘の場合には、便秘の原因の究明、便秘や食欲不振をきたす薬の減量、下剤の処方を検討することができます。

食べやすいようにワンプレートや丼ものにする、または小鉢に分けて一皿ずつ食べきってから次のお皿を出すなど、提供方法を変えることで食べてくれることもあります。ケアマネージャーやヘルパーさんに知見がある場合も多いので、相談してみるとよいでしょう。

認知症患者さんの食サポート

患者さんが多くの時間を過ごす住まいを整える際には、「安全性」と「慣れた環境」のバランスがポイントになります。

住環境の変化は、患者さんの精神状態に大きな影響を及ぼします。住み慣れた落ち着ける環境をキープしながらも安全性を確保することを心がけるようにしましょう。

住まいを整備するタイミングについては、患者さんの性格や症状によって、早い方がよい場合も、そうでない場合もありますので、主治医やケアマネージャーと相談のうえ決めることをおすすめします。

また、費用もかかるので、早期に検討を始めて計画的に進めるとよいでしょう。

住環境サポートのポイント

安全性の確保

手すりやスロープ、滑り止めなどの設置による歩行のサポート&転倒防止は基本的なことになります。公的介護保険で手すり設置などの住宅改修費の給付を受けることもできますし、公的介護保険で借りることができる介護ベッドを利用するのもおすすめです。

また、部屋の中にごちゃごちゃと物が多いのはNGです。転びやすく、不衛生なだけではなく、探し物も増え、幻視・幻覚にもつながります。歩行器や杖を使うようになることも想定して、すっきりと片付けるようにしましょう。電気コードやカーペットのめくれなど、転倒の原因となるものがないかの確認もお忘れなく。

明るさやコントラストの工夫

患者さんの視覚に寄り添った工夫も必要になります。
白内障などにより、私たちよりも視界が暗くなっている可能性がありますので、患者さんの見やすい明るさに合わせて、部屋の照明を調整しましょう。
また、色のコントラストにより注意喚起をするのも有効な方法です。ドアとドアノブ、壁の色や、滑り止めと床の色を分けることで認識をサポートすることができます。

お風呂&トイレの工夫

お風呂やトイレが寒くて部屋との温度差がある場合、突然死につながることもありますので、注意が必要です。お風呂やトイレにも空調を導入して温度管理をするようにしましょう。
また、トイレの床と便器の色を差別化することで、便器が認識しやすくなります。認知症患者さんは便秘になりやすいので、便秘解消の助けとなる踏み台を置いておくのもおすすめです。有名な彫刻、ロダンの「考える人」のポーズが便秘解消によいといわれています。

安心感&その人らしさのある空間づくり

患者さんが「居心地がよい」と思える空間づくりも重要です。
部屋を整備する際にも、愛着がある家具などは残して「慣れた環境」をキープするようにしましょう。例えば、絵を描く、映画を観る、ガーデニングをするなど、患者さんの趣味や日課となっていることがあれば、それを楽しめる環境を残すことも大切です。

食事や住環境が患者さんに与える影響とは⁉事例を見てみましょう。。

事例 1 血管性認知症*の83歳男性Aさん

最近、食欲がなくなったAさん。妻が「具合が悪いの?」と聞いても、曖昧な返事しかない。かかりつけ医に相談したところ、「便秘で、胃腸に食べ物がたまっているために、ごはんがおいしく食べられないこと」と「薬の飲みすぎでお腹がいっぱいになっていること」が原因かもしれないと言われた。

Aさんは、総合病院、認知症センター、整形外科、眼科、それぞれの病院から処方されている薬があり、合わせると、朝9錠、昼4錠、夜6錠、寝る前に2錠の薬を飲んでいた。

かかりつけ医の提案で、必要性が低い薬の中で、副作用で便秘になりやすい薬と、食欲が落ちやすい薬を徐々に減らすことにし、また便秘解消のための下剤も処方してもらった。

その後、かかりつけ医を何度か受診し、薬の量は半分にまで減った。Aさんは食欲が回復したことで元気が出てきたうえ、健康と便秘解消のためにと毎日散歩をするようになった。

*脳梗塞や脳出血などによって発症する認知症


たかが便秘、されど便秘です。食べることも大切ですが、しっかり排出することも大切ですね。快便は快適な生活につながります。

Aさんの場合、服薬量を半分にできたことと、毎日の散歩で身体を動かすことでお腹が空いて、おいしく食事ができる、という好循環が生まれたのがよいですね。ご夫婦で散歩をするので、話題や会話が増えたという副産物もあったそうです。

食欲がない時期には、サプリメントでビタミンなどの栄養を補っていたそうですが、今は日々の食事から摂取ができています。行政機関や医療機関の栄養相談などを利用して、食事のバランスを見直したり、便秘になりにくい食事について教えてもらうのもよいかもしれませんね。

事例 2 若年性認知症*の61歳女性Bさん

8年前に若年性認知症と診断され、自宅で療養しているBさんは、症状が進行し、同居の家族が食事の時間に食卓へ呼んだときに家の中で迷うようになった。

食事に関しても、以前は自分の分以外に家族の分も食べてしまうことが問題だったが、最近では、どれを食べたらいいの? と戸惑っている様子で、なかなか手を付けなかったり、途中で「もういい!」と怒り出して自室に戻ってしまうこともあった。

フォークとスプーンの使い分けができず、スプーンでパスタを食べようとしたり、フォークでスープを飲もうとしたりという様子も見られた。

ケアマネージャーの助言を受け、家族のランチョンマットの色を一人一人変えて、スープはコップで提供し、フォークやスプーンなどは一種類だけを出し、一度に何種類もの料理をテーブルに置かないことを実践したところ、以前より戸惑う様子が見られなくなった。

また、リビングの入口には暖簾をかけ、トイレにはトイレマークのステッカーを貼り、廊下には進行方向に向かって「→」マークを付けたことで、家の中で迷うことも少なくなった。

*65歳未満で発症する認知症


ケアマネージャーからよい助言を受けていますね。

病気の進行の過程では、さまざまな変化が出てきますが、頭ごなしに叱ったり、正すだけではなく、本人の変化を受け入れ、いかに臨機応変に対応していけるかがポイントになります。

Bさんの場合もこの8年、その都度、ご家族、ケアマネージャー、医師が考えを出し合って試行錯誤を繰り返してきました。

認知症が進行すると言語的なコミュニケーションが取りづらくなりますが、色や形、記号を認識する能力が残存している場合が多いので、そこに働きかけるのは効果的です。

また、心理や習性に働きかけるのもよいでしょう。例えば、開いている扉や明るい方に導かれやすい習性を利用して、夜間はトイレに小さな明かりをつけて、扉を開けておくなどの工夫は効果的です。

今後、家と屋外の区別がつきにくくなり、知らぬ間に外に出てしまうことも想定し、扉の開閉や人の通過時に音が鳴るような工夫をしてもよいかもしれません。

話し手 さちはなクリニック 副院長  岡 瑞紀

さちはなクリニック

さちはなクリニック 副院長  岡 瑞紀

琉球大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部精神神経科学教室にて研修。国家公務員共済組合連合会立川病院、桜ケ丘記念病院勤務後、慶應義塾大学病院メモリークリニック外来、一般内科医院での認知症診療、各種老人入居施設への訪問診療、保健所の専門医相談、地域研究、家族会など各種講演会での啓発活動を通して、様々なステージや状況下の認知症診療を経験。慶應義塾大学大学院医学研究科にて学位取得。2015年より、さちはなクリニック副院長として、もの忘れ、認知症の診療を担当。

免許・資格:医師/精神保健指定医/精神科専門医/日本老年精神医学会認定専門医/医学博士
所属学会:日本精神神経学会/日本老年精神医学会

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