公的介護保険制度と要介護認定について
介護サービスを利用した際の自己負担額は、40歳から64歳までは1割、65歳以上の場合は世帯所得に応じて1割~3割と負担額が異なります。
介護サービスを受けたい場合は、要介護認定の取得やケアプランの作成依頼など、さまざまな手続きが必要です。認定された要介護度によって選択できる介護サービスが異なるため、事前に要介護認定の仕組みを理解しておくと安心です。
要介護認定について、詳しく見ていきましょう。
要介護認定の基本概要
要介護認定とは?
自立 (非該当) |
歩行や起き上がりなどの日常生活上の基本的動作を自分で行うことが可能であり、かつ、薬の内服、電話の利用などの手段的日常生活動作を行う能力もある状態 |
要支援1 要支援2 |
日常生活上の基本的動作は、ほぼ自分で行うことが可能であるが、日常生活動作の介助や現在の状態の防止により要介護状態となることの予防に資するよう手段的日常生活動作について何らかの支援を要する状態 |
要介護1 | 要支援状態から、手段的日常生活動作を行う能力がさらに低下し、部分的な介護が必要となる状態 |
要介護2 | 要介護1の状態に加え、日常生活動作についても部分的な介護が必要となる状態 |
要介護3 | 要介護2の状態と比較して、日常生活動作及び手段的日常生活動作の両方の観点からも著しく低下し、ほぼ全面的な介護が必要となる状態 |
要介護4 | 要介護3の状態に加え、さらに動作能力が低下し、介護なしには日常生活を営むことが困難となる状態 |
要介護5 | 要介護4の状態よりさらに動作能力が低下しており、介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態 |
引用:厚生労働省「介護保険制度における要介護認定の仕組み」
要介護認定を受けるためには?
その後は自治体に在籍する調査員が本人のもとへ訪問し、本人・家族に対する聞き取り調査を行います。具体的には、74項目の認定調査票(全国共通)を用いて、本人と対話しながら動作・認知機能をチェックします。
また、市区町村では申請者の主治医に対して心身状況等に関する意見書の作成依頼も行います。
なお、本人・家族が申請に行けない場合は、各自治体の地域包括支援センターに申請代行を依頼することも可能です。地域包括支援センターとは高齢者の総合相談窓口であり、介護の悩みや日常生活での困りごとなど、さまざまな相談に乗ってくれます。要介護認定について不安な人はまずは相談してみましょう。
要介護認定はどのように決定される?
一次判定は、認定調査票と主治医意見書を用いてコンピュータによる判定を行います。
二次判定では、保健・医療・福祉の学識経験者5名程度で構成される「介護認定審査会」が開かれます。一次判定の結果および主治医意見書の内容を踏まえて、有識者のさまざまな視点で要介護度が検討され、最終的に要介護度が決定されます。
介護保険法の規定により、原則として申請日より30日以内に結果が通知されます。
ただし、本人の心身状況によっては判定に時間を要することがあります。判定が遅れると、そのぶん結果通知も遅れてしまうため、介護保険サービスの利用を検討している場合は、早めに申請するとよいでしょう。
要介護度に納得できない場合の対応方法
要介護度の見直しは「不服申し立て」と「区分変更」の2つの方法があります。必要に応じて、いずれかを選択して対処しましょう。
不服申し立て
不服申し立ての可能期間は、要介護度の決定通知を受け取った翌日から3カ月以内(期限は自治体によって異なります)と決められているため、注意してください。
不服申し立て後、介護保険審査会は不服内容に対して審理を行ない、認容・棄却・却下を決定します。審理や再調査などには相応の時間が必要で、結果が出るまでに数カ月かかる場合があります。
区分変更
申請したあとの流れは新規申請の場合と同様です。認定調査、一次判定、二次判定と手順を踏んだうえで決定されます。
区分変更による要介護度の決定は30日以内に通知されるため、不服申し立てよりも早く結果がわかります。
ただし、不服申し立て・区分変更のいずれも、申請をすれば必ず要介護度が変更されるものではありません。要介護度が変わらなかった場合でも困らないよう、事前に担当ケアマネジャーとケアプランの内容を相談しておくことが大切です。
一般的な介護サービス
● 居宅サービス
● 通所(地域密着型)サービス
● 施設サービス
居宅サービス
訪問介護では、ホームヘルパーや介護士が自宅に訪問し、家族の代わりに食事・入浴・トイレなどの身体介護や掃除・洗濯・買い物などの生活援助を行ないます。
主治医が必要と判断すれば、身体機能を維持するための訪問リハビリや、健康状態の管理を目的とした訪問看護のサービスも利用できます。
通所(地域密着型)サービス
デイサービスは、食事や入浴、排せつなどのサポートを受けられるのはもちろんのこと、レクリエーションなども用意されており、ほかの利用者や職員など、家族以外の人との交流を楽しめます。
デイケアでは、おもに身体機能の維持を目的としたリハビリが受けられます。リハビリの専門スタッフ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)が本人の状態に合わせてサポートをしてくれるため、無理なく通えます。ただし、利用するためには主治医の指示が必要となるため、注意してください。
日中だけでなく、短期間の入所ができるショートステイは、家族の体調不良や冠婚葬祭などで介護が難しくなった場合にも利用できます。
施設サービス
公的施設の種類 | 施設の特徴 | 入所条件 |
特別養護老人ホーム | ・介護必要度が高い方が対象 ・費用は安いが、入所までに時間がかかる |
要介護3以上 |
介護老人保健施設 | ・リハビリを行ない、在宅復帰を目指す | 要介護1以上 |
介護療養院 | ・要介護者の長期療養が目的 ・おもに生活支援を行なう |
要介護1以上 |
介護療養型医療施設 | ・要介護者の長期療養が目的 ・医療的ケアの対応が可能 |
要介護1以上 |
認知症に特化した介護サービス
本人・家族が安心して過ごすためには、本人の状態に合わせたサービスを選択することが大切です。ここからは、認知症に特化した介護サービスを紹介します。
認知症対応型通所介護
利用できるのは「認知症の診断を受けている、要介護1以上の人」が条件です。
一般的なデイサービスとの違いは、事業所の管理者が「認知症対応型サービス事業管理者研修」を修了していることが義務付けられている点で、認知症に関する高度で専門的なケアが受けられます。
また、受け入れの人数が12名以下と決まっており、一般的なデイサービスよりも手厚いケアが受けられることもメリットです。
認知症対応型通所介護におけるケアの具体例としては、回想法と呼ばれる方法があります。回想法とは、昔の写真や音楽を見たり聴いたりすることで、昔の経験や思い出話をする心理療法の一つです。
昔話をすることで脳が活性化され、認知症の進行を緩和するといわれています。思い出に浸れる時間が作れるため、本人の精神的な安定も期待できるでしょう。
認知症対応型共同生活介護
認知症グループホームでは、入所定員が5名から9名までと少人数であることが特徴です。施設の職員が日常生活をすべてサポートするわけではなく、料理や買い物などの家事に本人も参加してもらい、可能な限り自立した生活を送ることを目的としています。
施設というよりは、自宅に近い環境のなかで過ごせるため、のびのびと生活ができる点がメリットです。穏やかな環境で過ごすことで、認知症の進行を和らげることも期待されています。
ただし、認知症グループホームでは、医療面での環境が整っていないため、医療的なケアが必要な場合には受け入れてもらえない可能性があります。