認知症になった本人の気持ちとは?
理解して対応するための5つのポイント


身近な人が認知症になった際に、本人の気持ちを知りたいと思うこともあるでしょう。

認知症の人は不安や戸惑いを感じやすいとされているため、本人の気持ちに寄り添うことはとても大切です。そのため、気持ちを知ることは適切なケアにつながり、介護する側にも良い影響を与えます。

この記事では、認知症の人がどのような感情を抱えているのかを詳しく解説します。また、本人の気持ちを理解して支援するためのポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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認知症の人の気持ちを理解して支援する重要性

認知症とは、さまざまな脳の病気によって脳の神経細胞の働きが少しずつ衰え、記憶や判断力などの認知機能が低下して生活に支障をきたした状態のことです。

認知症になると、病気の影響で自分の気持ちを言葉で的確に表現しにくくなります。そのため、認知症になった本人の気持ちを介護者が理解することは難しい場合も多いでしょう。

しかし、本人の気持ちをできるだけ理解することで、コミュニケーションの取り方や、介護者の気持ちも良い方向へ変化する可能性があります。

本人の思いやつらさを完璧には理解できなくても、本人の立場に立って考える姿勢が大切です。

認知症と診断されたときの本人の気持ち

認知症と診断された際に抱く感情は、人によってさまざまです。物忘れに気付き、自覚を持ってかかりつけ医に相談する人もいれば、認知症という病名を受け入れられない人もいるでしょう。

また、認知機能の低下に対する戸惑いや将来への不安があり、自分の病気によって家族に迷惑がかかることを「申し訳ない」と感じる人もいます。

このように、認知症であるという事実に対して大きなショックを受けるのは、当然で無理のないことです。

しかし、ショックがあまりにも長引いて自宅に閉じこもるような状況になると、認知機能の低下が進んでしまうおそれがあります。

そのため、認知症と診断された際には、周囲の協力を得ながらこれからの生活について考えることが大切です。

認知症の症状による本人の気持ち

認知症の症状によって、本人はどのような感情を抱くのでしょうか。ここでは、認知症のおもな症状をいくつか挙げ、本人が抱く思いについて解説します。

記憶障害による焦燥感

認知症を患うと、物事を覚えることや覚えておくこと、思い出すことが難しくなります。

そのため、認知症の人は記憶障害によって不安や焦りを感じ、自信を失う場合もあるでしょう。

例えば、過去の出来事や大切な情報を覚えられず、「○○はしただろうか」「○○を聞いておかなければ」など、不安な気持ちで苦しんでいる可能性があります。

判断力や決断力の低下による不安感

認知症になると、仕事や家事など、普段何気なく行なってきたことに失敗が見られるようになります。

自分がこれまでうまくやってきたことができなくなった状況に、「自分には何もできない」「周囲の期待に応えられない」など、不安や戸惑いを感じるケースも少なくありません。

また、周囲から失敗を指摘されると、悔しい思いをしたり、自信を失ったりする場面も多いでしょう。

コミュニケーションの困難による孤独感

病気の影響によって、認知症になった本人は言葉や文章を理解したり、自分の考えや気持ちを表現したりすることが難しくなることがあります。

そのため、人との会話に対して恐怖心やストレスを抱き、コミュニケーションそのものが嫌になってしまう場合もあるのです。

会話を避けるようになると、孤独感や疎外感を募らせることにもつながります。

認知症の本人の気持ちを理解して対応するポイント

認知症の人の気持ちを理解し、適切に対応するためのポイントをいくつか紹介します。

本人の話を聞いて共感する

本人が不安や焦った様子などを見せている場合は、まず、話をじっくり聞いて共感することが大切です。

認知症の人は、急かされたり同時に複数の問いに答えたりすることを苦手とする傾向があります。

たとえたどたどしい言葉だとしても、相手の言葉をゆっくり聞くことが大切です。

簡単な言葉でゆっくりと伝える

認知症の人にとって、周囲の会話は2倍速以上の速さに感じるため、理解しにくいといわれています。

そのため、言葉を伝える際の工夫として、できる限り簡単な言葉を選んでゆっくり話すことが大切です。本人の抱く「何を言っているのかわからない」という不安を軽減するために、言葉一つひとつの間を空けるように、句点や読点を意識して話しましょう。

さらに、手ぶりなどのジェスチャーを交えると、言葉だけでは伝わりにくいニュアンスも表現でき、コミュニケーションがよりスムーズになります。

感情に訴えるような言葉を選ぶ

認知症の人とのコミュニケーションを深めるうえで、「嬉しい」「楽しい」といった感情に訴えかける言葉選びを心がけることも大切です。
例えば、「デイサービスは明日ですよ」と伝えるだけでなく、「カラオケもできるから楽しみですね」というようにポジティブな言葉を足すとよいでしょう。

本人の様子や周囲の状況を観察する

認知症によって脳の機能が低下し、思考力や判断力が衰えると、物事を道筋立てて考えるのが苦手になります。そのため、一般的な常識とは食い違う言動をする場合もあるでしょう。

認知症の人が理解できない言動をしたときには、本人の行動や周囲の状況などを注意深く観察することが重要です。

表面的な言動だけでなく、その背後にある意図や状況を理解しようとすることで、適切な支援につながるヒントを得られる可能性があります。

本人ができることは見守る

認知症になったからといって、すべてのことが突然できなくなるわけではありません。認知症の進行とともに少しずつできないことは増えていきますが、苦手なことは人それぞれ異なります。

大切なのは、本人がいま持っている能力をできる限り使ってもらうことです。「できること」の継続が、リハビリや自尊心を守ることにつながります。

認知症になっても幸せに暮らすことはできる

人は、認知症を患っても幸せに生きることができます。

そのための大切なポイントとなるのは以下の3点です。
  • 適切なケアを受けること
  • できることを続けること
  • 前向きに過ごすこと
認知症になると、それまでと同じ生活を送ることが難しくなる場合もあるでしょう。そのため、介護サービスの利用や家族の協力など、状況に合わせた適切なケアを検討する必要があります。

また、できることを続けることも幸せに暮らすためには重要です。認知症になっても趣味や好きなことを続けることで、生きがいを感じられます。

オレンジカフェのようなコミュニティに参加して、ほかの認知症の人や支援者との交流を深めるのもよいでしょう。情報共有に役立つだけでなく、孤独感の軽減や前向きな気持ちを保つことにつながります。

認知症の本人の気持ちを理解してより良い生活につなげよう


認知症の人は、病気の症状によって不安や焦り、孤独感などを抱きやすくなります。周囲の人は、その気持ちに寄り添うことが大切です。

理解のある対応は本人のつらい感情を軽減し、スムーズなコミュニケーションを可能にします。

本人の気持ちを理解しながら支援するためにも、簡単な言葉でゆっくりと話したり、できることを見守ったりする姿勢を心がけましょう。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2024年3月29日

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