親が認知症かもしれないと思ったら
知っておきたい相談先と対応方法


親や家族、自分自身が認知症になって、不安や悩みを抱えている方は少なくないでしょう。そしてその不安や悩みをどうにかしたいと思っていても、どこに相談したら良いのかわからないという方もいるかもしれません。

「認知症かも」という疑いの段階での相談なら、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談し、実際に親や家族、自分自身が認知症で不安を抱えているなら、認知症カフェや認知症の人と家族の会などに相談することがおすすめです。

この記事では、親や家族、自分自身が認知症になった際に生じた不安や気になることをどこに相談したら良いのかわからない方のために、悩み別におすすめの相談先を紹介します。

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「認知症かも…と不安を感じた時」の相談先

親や家族、自分自身が認知症かもしれない……。そんな不安を感じたときの相談先について紹介します。

かかりつけ医を受診する

「認知症かもしれない」と不安を感じたら、まずは、普段からお世話になっているかかりつけ医に相談するとよいでしょう。常日頃から、体や健康のことについて相談できる「かかりつけ医」を見つけておくことで、些細な不安もすぐに相談できます。

かかりつけ医の場合、症状が発生する前の健康状態についても知っているため、ちょっとした変化に気付いてもらえることもあります。かかりつけ医が認知症の診断をできなくても問題ありません。必要に応じて適切な医療機関を紹介してくれます。

地域包括支援センターなどでアドバイスを受ける

認知症かもしれないと思っても、「年のせいかも」などの思い込みやプライドなどから、病院での受診を見送るケースは少なくありません。しかし、ほかの疾患同様、認知症の場合も早期診断と早期対応は非常に大切です。

本人が病院の受診を嫌がっている場合、まずは家族のみで地域包括支援センターからアドバイスを受けることがおすすめです。
かかりつけ医がいない場合にも、地域支援総括センターに相談するとよいでしょう。

地域包括支援センターとは、高齢者の生活や介護などさまざまな相談に対応する機関です。必要な援助を行うために、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門スタッフが配置されています。さまざまなサービス機関と連携をとり、多角的なサポートを行っているため、悩んだり迷ったりしたらまず相談してみるのがおすすめです。

「親や家族、自分自身が認知症になった時」の相談先

親や家族、自分自身が認知症になったら、一体誰に相談すれば良いのでしょうか。不安な気持ちのまま過ごさないためにも、相談先をいくつか知っておくとよいでしょう。

認知症カフェ

認知症カフェとは、認知症の方やその家族だけでなく、認知症について詳しく知りたい方や地域住民の方、介護や福祉の専門職の方など誰もが利用でき、交流したり情報の交換を行ったりできる場所です。

公民館や地域のコミュニティセンターなどを利用して開かれており、全国で7,000カ所以上のカフェが存在しています。おおむねどの地域にもあり、現在もその数を増やしています。

介護施設や介護事業所、地域包括支援センターが運営していることが多く、NPO法人や地域のボランティア、介護や福祉の専門職の方が運営しているケースもあります。

活動内容はカフェによって異なりますが、多くのカフェで共通して行われていることは、以下のとおりです。
  • 参加者同士の自由な交流、コミュニケーション
  • 認知症や介護についての講演会やセミナー
  • 専門家による相談会
  • レクリエーション(介護予防体操、脳トレ、カラオケ、ゲーム)
なお、「認知症カフェ」という名称以外に「オレンジカフェ」などの名称で運営されている地域もありますが、実施している内容はどちらも同じです。

認知症の人と家族の会

全国47都道府県すべてに支部がある「認知症の人と家族の会」は、認知症の方やその家族の方が、悩みや介護体験などの情報を交換・共有し、お互い励まし合い、助け合うことを目的として作られた団体です。

悩みを打ち明けたり話し合ったりする「つどい」が各都道府県で実施されており、気軽に参加できます。

いきなり「つどい」に参加するのはちょっと…、という方は、各支部で受け付けている電話相談から始めてみるとよいでしょう。

若年性認知症コールセンター

認知症と聞くと「高齢者が発症するもの」と考えている方も多いかもしれませんが、年齢が若くても認知症を発症することがあり、65歳未満で発症すると「若年性認知症」と診断されます。

高齢者の発症と比べ、本人だけでなく家族の生活に与える影響も大きく、仕事が続けられない状況になると、本人や家族の経済的・精神的な負担も大きくなります。

若年性認知症コールセンターは、全国若年性認知症支援センターが実施している事業です。若年性認知症に関する電話相談を受け付けており、専門的な研修を受けた相談員が対応してくれます。電話が苦手な方はメールでの相談も可能なので、一人で悩まずに相談してみるとよいでしょう。

「介護」の相談先

続いて、「介護」に関する悩みの相談先を紹介します。

自治体の福祉課

介護について悩んだときの相談先の一つに、自治体の福祉課があります。自治体の福祉課では、特に公的介護保険や各種サービスの申請・相談が可能です。

例えば、「家事援助」「通所介護」「福祉用具の利用」など、要介護度に合わせた介護サービスを受けたい場合、まずは自治体の福祉課で、要介護認定の申請を行いましょう。

また、自治体では、認知症の相談会や介護者の交流会などを主催していることもあります。相談会では、認知症に関する悩みや気持ちの整理のために、専門家が相談に乗ってくれます。交流会では、介護を行う同じ立場の方と話せるため、自身が抱える悩みを共有しやすいでしょう。

社会福祉協議会

社会福祉協議会は、全都道府県に設置されており、介護や認知症に関する総合的な悩みの相談が可能です。

例えば、介護サービスの申請方法や相談のほか、高齢者の日常生活や金銭管理に対する不安、認知症に対する不安などが挙げられます。

また、都道府県社会福祉協議会では、訪問介護や配食サービスなどを行う市区町村社会福祉協議会と連携し、自分の判断能力に不安のある認知症の方などを対象として「日常生活自立支援事業」を実施しています。具体的には、福祉サービスの利用援助や行政手続きの援助、日常生活費の管理、定期的な訪問などです。

「相続や税金などのお金」に関する相談先

親や家族、自分自身が認知症になったとき、相続や税金のことなど、お金に関する不安も感じるでしょう。こうした不安や悩みは、なるべく早めに信頼できる専門家に相談することが大切です。

なぜなら、認知症になり「判断能力がない」とみなされると、法律行為や契約行為ができなくなり、資産が凍結される恐れがあるためです。認知症の進行状況にもよりますが、認知症かもと思ったタイミングで専門家に相談することをおすすめします。

ただし、専門家によって対応できる分野は異なるため、以下では相続や税金にかかわる専門家を紹介します。

司法書士

司法書士は、法務局や裁判所などに提出する書類の作成や、それらに関連する手続きの相談に応じる専門家です。相続などのお金に関する分野としては、家族信託、遺言書、任意後見制度、生前贈与などの手続きが該当します。相続やお金に関しての相談先がわからないという場合は、まずは司法書士に相談しましょう。

弁護士

弁護士は、社会生活上の事件や紛争について、法律相談や法律事務、弁護活動を担う専門家です。相続などのお金に関する分野としては、相続人間でのトラブル解決のほか、調停や裁判の代理人や手続きが該当します。依頼にかかる費用がほかの士業と比較して高い傾向があるため注意しましょう。

税理士

税理士は、税務に関する専門家です。相続税や贈与税などの税金に関する書類の作成や、申告手続きのほか、節税の相談などに対応しています。ただし、認知症の発症後では相続税対策は難しくなるため、事前の相談が必要です。

行政書士

行政書士は、官公署に提出する申請書類や事実証明、契約書の作成のほか、提出手続きなどを行う専門家です。相続などのお金に関する分野としては、遺言書の作成支援や、家族信託における信託契約書の作成、銀行預金の相続手続き、相続人・財産調査、遺産目録の作成などが該当します。

認知症で困ったり不安を感じたりしたら、まずは相談を


親や家族、自分自身が認知症かもしれないと不安に感じたときは、一人で悩まずに周りに相談することが大切です。まずはかかりつけ医に相談し、場合によっては地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。

実際に認知症になってしまった場合の不安や悩みは、認知症カフェや、認知症の人と家族の会、若年性認知症コールセンターなどに相談することをおすすめします。また、介護やお金に関する悩みがある場合も、自治体の福祉課や社会福祉協議会、司法書士などの専門家に相談することで解決につながるでしょう。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2024年9月9日

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