「オレンジリング」「認知症サポーター」とは?
認知症の方の家族ができること


認知症の方の手伝いができないかと調べていたときに「オレンジリング」という言葉を目にしたことはありませんか?
オレンジリングとは認知症サポーター養成講座を受講した方に授与される、認知症サポーターの証のことを指します。認知症について正しく理解したうえで、認知症の方を自分のできる範囲でサポートするのが認知症サポーターです。

本記事ではオレンジリングや認知症サポーターとはなにか、認知症サポーターになるにはどうしたらいいのか、サポーターの役割にはどのようなことがあるのかを紹介します。

「オレンジリング」とは?

オレンジリングとは認知症サポーターの目印として、認知症サポーター養成講座を受けると授与される、オレンジ色のリストバンドのことです。

なお、令和3 年度(2021年度)以降は、原則としてオレンジリングではなく認知症サポーターカードを配布しており、オレンジリングは一部自治体での購入が可能となっています。

「認知症サポーター」とは?

認知症サポーターとは、認知症に関する知識を正しく理解し、認知症の人や家族に対し温かく見守る応援者として、支援する人をいいます。「支援する」といっても、特別な行動義務はありません。認知症患者本人とその家族の方が必要としている支援を、自分のできる範囲で行います。

また、特別なスキルや資格は不要で、養成講座を受けるだけで誰でも認知症サポーターになれます。ただし、認知症に関することに興味があること、積極的に関わろうとする意識は必須といえるでしょう。

認知症サポーターになるにはどうしたらいい?

認知症サポーターは「認知症サポーター養成講座」を受講することで誰でもなることが可能です。受講費用は原則無料です。養成講座の受講受付は各自治体(市町村・都道府県)の担当窓口で行っています。

養成講座の受講の際にも必要なスキルはなく、受講後のテストもありません。養成講座は約90分で実施され、キャラバン・メイトと呼ばれる認知症ケアのエキスパートによる講義とともに、専用のテキストで認知症について学びます。

養成講座修了後に認知症サポーターの証であるサポーターカード(オレンジリング)を受け取れます。

認知症サポーターに期待される5つの役割

認知症サポーターには、5つの期待されることがあります。詳しくみていきましょう。

認知症について正しく理解し、偏見を持たないこと

認知症に対し、偏見や誤解を持っている人たちは少なからず存在します。そしてその偏見や誤解に、認知症の方本人や認知症の方を支えている家族が悩み苦しんでいるケースもあります
まず、認知症について正しく理解し、偏見を持たず、認知症の人や家族を温かく見守ることがスタートです。

また、自分自身がしっかりと認知症を理解していると、万が一自分が認知症になった際にも、何も知らないよりもずっと受け入れやすくなります。

認知症の人や家族に対して温かい目で見守ること

認知症サポーターは、認知症に対する正しい理解ができているため、認知症の方や家族に対し温かな目で見守ることができます。前述のとおり、サポーターは特別な行動をする必要はありません。認知症の方やその家族の話を聞いたり、見守ったり、付き添ったりするなど、そばに理解者がいるというだけで、安心感を与えられます

また、認知症の方が外出先などで困っているときには、そっと手助けしてあげるだけでも、辛い気持ちがやわらぐこともあるでしょう。

近隣の認知症の人や家族に対し、自分なりにできる簡単なことから実践すること

専門的な技術などを持ち合わせていなくても、認知症に対する理解や知識があるだけで認知症の方や家族に対してできることは十分あります。

例えば、近所を散歩しているところを見かけたらさりげなく様子を見守ったり、危ないと感じる状況があったら一緒に歩いたりするなどです。一人ひとりが小さなことを積み重ねて実践していくだけでも、認知症の方にとっては大きな支えになります。

地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくること

認知症の方やその家族に対するサポートを実践する際、自分ひとりですべてに対応しようとする必要はなく、専門家が必要なときには頼って問題ありません。誰に頼ればいいのか、それを知っていることが大切になります。

地域包括支援センターの場所や介護家族会の存在を教えられるなど、必要なサービスへとつなげることも認知症支援の一環です。必要なサービスへつなげることを何度も実践していくだけで、地域のネットワークの輪も広がり助け合いの輪は自然に広がっていきます。他力が必要になったら、専門機関につなげましょう。

まちづくりを担う地域のリーダーとして活躍すること

認知症サポーターが中心となり、地域の方の手助けを行うことや、認知症への理解を広めるための積極的な情報発信を行うことは、認知症の方が暮らしやすい社会をつくっていくうえでも重要です。

「認知症の方を支援します」という意思表示になるオレンジリングを身に着け、人の集まる地域活動などに行けば、認知症サポーターを知ってもらうきっかけになりえます。サポーターの輪を広げ、地域全体で認知症の方を支える社会をつくっていきましょう。

認知症の人や家族をサポートするためにできることを把握しよう


オレンジリングは、認知症を正しく理解するための養成講座を受講することで授与される「認知症サポーター」の証です。

認知症サポーターとはなにか特別なことをするわけではありません。
認知症を正しく理解し、認知症に対する誤解と偏見を解消し、認知症の人や家族を応援することが期待されています。

認知症を正しく理解するためにも、認知症サポーター養成講座を受講してみるのもよいでしょう。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2024年6月4日

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