2030年には、65歳以上の約3人に1人がMCI(軽度認知障害)または認知症になると見込まれており、認知症は今後ますます身近な課題となるでしょう。
※65歳以上を対象として各年齢の認知症有病率が上昇する場合の数値を使用
内閣府「令和6年版高齢社会白書」より当社推計
こうした状況のなかでは、本人だけでなく家族も含めた支援体制を整えていくことが欠かせません。
デイサービスは、認知症の方が安心して日中を過ごせる場所であり、心身の機能維持や社会的なつながりを保つための大切な場でもあります。また、家族の介護負担を軽減する効果も大きく、認知症ケアの選択肢として積極的に取り入れたい支援です。
ここでは、デイサービス利用によって得られるおもなメリットを紹介します。
デイサービスに通うことで、決まった時間に起きて食事をし、外出して活動するという規則正しい生活パターンが自然と身に付きます。日中に適度な運動や活動を行うことで心地良い疲れを感じ、夜の睡眠が安定しやすくなるのも大きな利点です。
さらに、職員やほかの利用者と交流しながら過ごすことで、穏やかな精神状態を保ちやすくなります。
こうした生活リズムの安定は、家族にとっても介護しやすい環境づくりにつながります。認知症の初期段階から利用を始めることで、よりスムーズに生活リズムを整えられるでしょう。
デイサービスでは、体操やリハビリ活動など、体を動かすプログラムが多く取り入れられています。これにより、筋力が維持され身体機能の低下を防ぐ効果が期待できるでしょう。
また、レクリエーションや工作、季節の行事といった活動は、脳に刺激を与え、認知機能の維持や発語の促進にも役立ちます。職員やほかの利用者との会話を通じて笑顔が増えると、気持ちが前向きになり、日常生活への意欲も高まるでしょう。
こうした刺激の積み重ねが認知症の進行をゆるやかにし、生活全体に良い影響をもたらします。
認知症の方のなかには、人とのかかわりを避けて自宅に閉じこもりがちになるケースもあります。しかし、社会的なつながりを失うと、孤独感や無気力感が強まり、認知機能の低下を早めるおそれがあるのです。
デイサービスでは、職員や利用者との会話やゲーム、レクリエーションなどを通して自然な交流が生まれ、笑顔が増えていきます。
共通の体験や趣味をきっかけに「ここに来るのが楽しみ」と感じられるようになれば、生きがいや喜びにもつながるでしょう。
デイサービスは、認知症の方だけでなく介護する家族にとっても大きな支えになります。
利用中は家族が自由な時間を確保できるため、休息や買い物、通院、仕事などをすることが可能です。定期的に介護から離れる時間を持つことで、心身の疲労をやわらげ、介護ストレスや共倒れを防げます。
また、施設の職員から介護の工夫や日々の接し方についてアドバイスしてもらえることもあります。こうした情報を家庭でのケアに役立てられる点も、大きなメリットです。
一人で抱え込まず、デイサービスを有効に活用することで、介護をする方も心のゆとりを保ちながら安心して介護を続けられるでしょう。
デイサービスの利用開始前に対策しておきたいポイント
認知症の方がデイサービスにスムーズに通い始めるためには、事前の準備と環境づくりが大切です。本人が「行ってみようかな」と思える雰囲気を整えることで、初回の不安がやわらぎ、継続して通いやすくなります。
ここでは、利用開始前に押さえておきたいポイントを紹介します。
デイサービスを選ぶときは、「本人が楽しく通えそうか」を重視しましょう。
施設には、料理や園芸などの趣味を生かせる施設、機能訓練に特化したリハビリ型施設、食事や入浴設備が充実した施設など、さまざまな特色があります。本人の性格や好みに合った施設を選ぶと、通所への抵抗感が少なくなります。
事前に情報を集め、候補を2~3カ所に絞り込むとよいでしょう。利用者層や活動内容、スタッフの雰囲気が本人に合っているかを確認することが、継続して通える施設を選ぶポイントです。
契約前には必ず見学し、施設の雰囲気やサービス内容を確認しましょう。ケアマネジャーを通じて見学の予約を手配してもらうとスムーズです。
見学では、利用者同士の交流や職員の対応、室内の明るさや清潔感などをよく観察しましょう。気になる点は遠慮せず質問することが大切です。
また、家族が「ここは楽しそうだね」「趣味が生かせそうだよ」といった前向きな言葉をかけることで、本人の不安がやわらぐでしょう。
家族によるデイサービスへの送り出しが難しいときの対応
家族の都合でデイサービスへの送り出しが難しい場合は、訪問介護サービスを利用する方法があります。
訪問ヘルパーが自宅に来て、着替えや持ち物の確認、玄関までの誘導などをサポートしてくれるため、仕事や家事で朝の時間が取れないときも、無理なくデイサービスを利用できるでしょう。
必要に応じてケアマネジャーに相談すれば、サービスの手配をしてもらえます。