認知症の方が施設に入所する最大のメリットは、介護者の負担軽減です。本人や家族が納得できる施設に入所できれば、介護者の負担が軽減され、本人・介護者それぞれの生活が安定します。
また、施設では家族以外の人とのかかわりが増え、認知症の専門的なサポートを受けることも可能です。施設で生活すること自体がリハビリとなり、認知症の症状を和らげたり進行を遅らせたりする効果が期待できるでしょう。
本人が集団生活を苦手と感じる場合は、施設での生活がストレスになる可能性があります。長年自宅で暮らしてきた方が施設へ入所することで、苦痛を感じるケースもあるでしょう。
また、介護者の負担が軽減できる反面、施設の入居費用などで経済的な負担が大きくなる場合もあります。条件や環境の整った施設であればあるほど費用が高額になるでしょう。そのため、入所を検討する際はかかる費用について施設へ確認し、十分に検討することが大切です。
認知症の方の施設選びから、実際に入所するまでの一般的な流れを解説します。
まずは、予算やサービス内容、立地条件などの情報をもとに、認知症の方が入所する施設を選びます。
すでに介護サービスを利用している場合は、担当ケアマネジャーへ施設入所について相談するとスムーズです。担当ケアマネジャーは、本人に合いそうな施設の紹介や施設との連絡調整を行なってくれます。
担当ケアマネジャーがいない場合は、雑誌やインターネットで情報を収集し、興味のある施設の資料を請求してみるとよいでしょう。
最終的な判断は本人や家族が行なうため、担当ケアマネジャーの有無にかかわらず施設の基本的な情報を十分に把握しておくことが大切です。
気になる施設をいくつかピックアップできたら、施設見学に行きましょう。
施設見学ではスタッフやほかの入所者の様子、施設の実際の雰囲気を知ることが可能です。本人に適した施設を選ぶために、いくつかの施設を見学して比較検討することをおすすめします。
見学の際には、事前に質問したい事柄をメモしておくと聞き逃しがなく安心です。
見学後に余裕を持って見返せるよう、施設の様子を写真に撮っておくのもよいでしょう。ただし、写真の撮影は施設側の許可を得てから行なうのがマナーです。
入所を前向きに考えたい施設が見つかったら、体験入所を行ないます。体験入所の実施の有無や料金は施設によって異なるため、家族や担当ケアマネジャーから施設の担当者に問い合わせましょう。
体験入所は必須ではありませんが、契約前に数日間生活することで、本人に合った施設なのかを判断しやすくなるはずです。本人が快適に過ごせるか、食事は好みに合うかといった判断材料を集めるには体験入所がよいでしょう。
ただし、複数の施設で体験入所を行なった場合、入所する施設を選びきれなくなってしまう可能性があります。施設を決められない事態を防ぐため、体験入所は本命の施設に絞って行ないましょう。
入所する施設を決めたら、必要書類を用意して契約を結びます。必要書類は施設によって異なりますが、以下の書類提出を求められるのが一般的です。
診療情報提供書 |
主治医が発行する書類で、本人の日常生活上の注意点や施設側に把握してほしい情報などが記載されています。 |
健康診断書 |
医療機関で健康診断を受けることで発行される書類で、取得には2~3週間程度かかります。 |
契約時は、「入居契約書」「重要事項説明書」「管理規程」といった書類の説明があります。
費用に関するトラブルを防ぐためにも、基本的な費用以外の必要費や退去後の原状回復費など、契約前に細部までチェックすることが大切です。必ず、書類の説明に納得してから署名・捺印をしましょう。
また、「重要事項説明書」には、施設で提供されるサービスやスタッフ体制などについて明記されています。不明点がある場合は、必ず質問して疑問を解消しましょう。
認知症の方が入所施設を選ぶ際には、以下の2つのポイントを押さえておきましょう。
施設を選ぶときには、施設に入所する本人と家族の希望を混同しないよう整理することが重要です。
片方の希望だけを優先すると、本人と家族のどちらかに精神的・経済的負担が生じてしまうことがあります。本人や家族の思いを箇条書きにするなどして整理すると、お互いの希望を知りやすくなるでしょう。
認知症は進行性の疾患です。病状が進行した場合に施設が対応できるかは、施設選びの重要なポイントとなります。
認知症が進行した場合には入所を継続できない施設もあり、退所後どのように対応するのかを考えておくことが必要です。病状の進行後の対応は、担当ケアマネジャーに相談するとよいでしょう。