厚生労働省がまとめた「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」によると、2025年には65歳以上の約2割が認知症になると推計※1されており、将来的にはその割合がさらに上昇するとの予測です。生活習慣病の一つである糖尿病の罹患者が増えれば、さらに上昇幅が大きくなるとも考えられています。※2
さらに、認知症のリスクは高齢になるほど高まるという調査結果も出ています。85歳~89歳で4割以上、90歳以上になると6割以上が認知症になるとの推計※3です。平均寿命が伸長するなか、認知症は高齢者にとって特別な病気ではなく、誰にでも発症するリスクがあるといえるでしょう。
また、認知症は65歳以上で介護や支援が必要になる原因の第1位※4でもあります。認知症は将来の介護とも密接にかかわってくる問題です。
※1厚生労働省 「平成 29(2017)年 7 月改訂版 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)」
※2内閣府「平成29年版高齢社会白書 3 高齢者の健康・福祉」
※3平成31年3月 認知症施策推進のための有識者会議(第2回)(首相官邸ホームページ) 「資料1 認知症年齢別有病率の推移等について」
認知症は早期発見・早期診断が重要
しかし、認知症は早期診断・早期治療が重要です。なぜ重要なのか、その理由を説明します。
早期の治療開始で改善できる可能性がある
認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の段階で治療を始めれば、進行を遅らせる、認知症に移行せずに改善できるケースもあることがわかっています。
また、認知症が進行すると、症状も重くなり改善が難しくなるため、できるだけ早い治療開始が大切です。
認知障害を引き起こす疾患の発見につながる
例えば、注意力や活動性の低下は抑うつ症にもみられる症状で、認知症との識別が難しいといわれています。また、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫なども、認知障害があらわれる疾患です。これらの疾患では、有効な治療により認知障害の改善や完治が期待できるでしょう。
また、服用中の薬の影響で、一時的に認知症のような認知障害があらわれることもあります。睡眠薬をはじめ、抗コリン作用を含む薬などがその代表例です。
抗コリン薬はアレルギーや降圧剤、胃薬などさまざまな薬に用いられ、複数の医療機関から重複した処方を受けるなどして過剰摂取となることもあるため注意が必要です。
複数の医療機関を受診している場合には、各所でどのような薬を服用しているかを伝えることが大切です。それによって過剰摂取を防ぎ、適切な処方に変更することで症状を改善できるでしょう。