認知症に効果がある脳トレ10選
習慣として取り組むポイント


年齢を重ねるなかで、物忘れなどが増えたように思うこともあるでしょう。このような症状は、軽減できるものなのでしょうか。

認知機能は加齢によって低下しますが、いわゆる「脳トレ」を適切に行なうことで維持できる可能性があります。脳トレには認知症予防の効果があるといわれているため、早い段階で取り組むことが大切です。

この記事では、認知機能の種類や認知症の予防につながる脳トレ、習慣にするためのポイントなどを紹介します。

認知機能改善に効果的!年齢を重ねたら脳トレを行なうべき理由

年齢を重ねるごとに脳内の血流は悪化し、認知機能にも影響をおよぼします。しかし、脳トレで脳に刺激を与えると、脳内の血流が活性化されて認知機能の衰えを予防できるとされています。

一口に脳トレといっても、その種類は豊富です。なかには、周囲の人とコミュニケーションを取りながら行なう脳トレもあります。脳トレを行なうことを習慣にすれば、ストレスの軽減や気持ちのリフレッシュにつながるでしょう。

認知機能の衰えに不安を感じている方は、日常生活に脳トレを取り入れてはいかがでしょうか。

【脳トレを始める前に】おもな認知機能5つを確認しておこう

認知機能の衰え方は、人それぞれに異なります。自身にとって適切な脳トレを知るためには、認知機能への理解を深めておくことが大切です。

ここでは、おもな認知機能を5つ紹介します。自身が抱えている認知機能への悩みと照らし合わせながら、確認してみてください。

記憶力

記憶力とは、物事を覚えておく際に必要な能力のことです。日常生活を送るなかで、友人や家族などとの会話の内容を記憶しながら、コミュニケーションを取る機会があるでしょう。このようなときに、無意識的に働くのが「記憶力」です。

記憶には「記銘」「保持」「想起」の3つのステップがあります。具体的には、記憶を取り込み(記銘)、その記憶を長時間にわたって残し(保持)、必要に応じて思い出す(想起)という流れです。

年齢とともに少し衰える程度であれば単なる物忘れといえますが、認知症が進行すると生活面に影響をおよぼします。

判断力

一般的に判断力といえば、何かを決断する際に必要な能力という意味合いで使用されることが多いでしょう。認知機能の場合には、さまざまな状況に対応するための判断が可能かどうか、といった意味合いになります。

判断力が衰えると、日時や状況を認識する「見当識」、物事に集中する「注意力」、物の形や状態を把握する「空間認識」などに影響をおよぼします。例えば、自宅にもかかわらずトイレの場所がわからなくなったり、季節に適した服装が選べなくなったりすることになりかねません。

言語能力

言語能力は、コミュニケーションを取るうえで必要不可欠な能力です。例えば、自身の言葉で意思を伝えたり、相手が話している言葉を理解したりすることが該当します。また、書いている文字を理解することも言語能力の一つです。

言語能力が低下すると、書いてある文字や文章、相手が話している内容を理解することに時間を要します。症状が進行するにつれて、文字が書けない、話を理解できないなど「失語」の状態になるケースもあるため、注意が必要です。

なお、言語訓練を実施することで、失語を回避できる可能性を高められます。

遂行力

遂行力とは、日常生活のなかで目的を成し遂げようとする際に働く能力です。普段意識していないつもりでも、家事や仕事などを行なう際には遂行力が使われています。これにより、料理を作る際には食材を用意し、包丁で切ってから炒めるといった工程を自然の流れで行えるようになります。

遂行力が低下するにつれて、何かに取り組もうとする際に順序立てて行なうことが難しくなります。具体的には、これまで普通にこなせていた料理の手順がわからなくなったり、自発的な行動が取れなくなったりといった症状が現れます。

計算力

計算力は数字を理解して計算する能力のことです。一般的には、数学など勉強のシーンで使う機会が多いでしょう。しかし、認知機能としての計算力には、予算を考えて商品を購入する、時間配分を考えながら行動するといった意味合いも含まれます。

計算力が衰えると、小学生が解ける簡単な計算が難しくなります。ショッピングで会計をする際には、提示された金額に対していくら支払えばよいのかがわからなくなり、1万円札を使う機会が増えることもあるでしょう。

認知症の予防に効果的な脳トレ10選

ここからは、認知症の予防に効果的といわれている脳トレを10種類紹介します。

それぞれ、鍛えられる認知機能は異なります。自身が鍛えたい認知機能に合わせて適切な脳トレを選択しましょう。

漢字クイズ

漢字を使った脳トレでは、バラバラにした漢字を組み立てて四字熟語を作ったり、植物や生物を表す難しい漢字の読みを考えたりする問題に挑戦します。ほかにも、イラストを漢字に変換して熟語を完成させる問題など、さまざまなパターンがあります。

漢字を書いたり思い出したりすることで、記憶力や思考力が鍛えられます。また、識字能力の維持も期待できるでしょう。

都道府県当てゲーム

都道府県当てゲームは、各都道府県の特徴などヒントを伝えて、答えを考えてもらう脳トレです。出題者は、多くの人に認知されているような観光地やゆかりのある人物名などを3~5個ほど用意しておきます。より少ないヒントの数で解けると高得点となるルールです。

多数の人がわかるような問題であることから、比較的取り入れやすい脳トレといえるでしょう。クイズの答えを考えることで、記憶力を鍛えられます。

間違い探し

間違い探しには、以下のようなパターンがあります。
  • 複数の同じ絵のなかから1つの間違いを探し出す
  • 正しいイラストを見たあとに、もう1枚のイラストを確認して間違いを見つける
上記のように複数のパターンがあるため、さまざまな楽しみ方で取り組めるのが特徴です。間違いを探し出したり、1枚の絵を記憶したりすることで、記憶力や集中力、注意力などを鍛えられます。

日常的な計算問題

計算問題といっても難しい問題ではなく、単純な足し算や引き算を問う脳トレです。例えば、イラストで描かれている小銭が合計でいくらかを計算するといった形です。簡単な計算問題を繰り返し解くことは、脳の活性化に効果的だといわれています。

計算問題を解くには、一時的な記憶力や想像力が必要です。そのため、ワーキングメモリー(作業記憶)や計算力のトレーニングにも適しています。

仲間はずれ探し

仲間はずれ探しは、複数用意したキーワードやイラストから、仲間はずれになっているものを探し出す脳トレです。この脳トレのポイントは、正解を1つに限定しないことです。答えを柔軟に考えようとする姿勢が、脳の活性化につながります。

難度を少しずつ上げていき、達成感を得られるようすることが大切です。仲間はずれの理由を考える必要があるため、分析する力や注意力が試される脳トレといえます。

早口言葉

一般的には、発音しにくい言葉を早口で言うイメージがあるかもしれませんが、脳トレではスピードを重視せずに取り組みます。何度か挑戦し、慣れてきたら速度を競う楽しみ方も試してみるとよいでしょう。

早口言葉は道具などを用意する必要がなく、環境を問わず取り入れることが可能です。滑舌良く発声するゲームのため、口腔機能の向上、ひいては誤嚥防止の効果も期待できます。

なぞなぞ

なぞなぞは発想の転換が重要となるため、柔軟な思考が求められる脳トレといえます。季節やスポーツの話題など題材が豊富で、インターネットでも問題を手軽に入手できるため、出題側も困ることはほとんどありません。

なぞなぞを解く際には、集中力や記憶力、思考力などが鍛えられるでしょう。また、複数人で集まって取り組むことで、コミュニケーションの活性化にも期待できます。

色塗りパズル

色塗りパズルとは、指定された数字の枠に色を塗っていきイラストを完成させる脳トレです。色を塗る前はどのようなイラストになるのかがわからないため、楽しみながら作業を進められます。

イラストのバリエーションは豊富にあり、意欲的に取り組める脳トレといえるでしょう。マスを確かめながら塗り進めていく作業を通じて、注意力の向上効果も期待できます。

そろばんの計算

そろばんを使って計算問題を解く脳トレです。そろばんを使用することで手指の運動につながり、脳にほどよい刺激を与えられます。

そろばんを実際に使用しなくても、操作をイメージすることで記憶力や想像力の強化が期待できるでしょう。

しりとり

一般的なしりとりでも楽しみながらトレーニングできますが、イラストを使ったり、最後の言葉を決めてしりとりを完成させたりする方法もおすすめです。バリエーションが豊富で、さまざまな楽しみ方ができる脳トレです。

言葉に詰まる人がいても、焦らず続けられるように声がけすると楽しみながら取り組めるでしょう。

認知症予防のために脳トレを習慣付けるポイント

脳トレは継続することが大切なため、無理なく気軽に続けられるものを選びましょう。最初から頑張りすぎると継続がつらくなる可能性があるので、適度にリラックスしながら取り組むことが大切です。

また、継続するためにはやりがいを感じられるものや簡単に取り入れやすいもの、誰かと一緒に行えるものなど、楽しめる要素が含まれている脳トレを選ぶとよいでしょう。

ただし、どのような問題でも、解くスピードや感じる難易度には個人差があります。上級・中級・初級と難易度を適切に設定することで、より効果的にトレーニングを行えるでしょう。

脳トレと併せて取り入れることが望ましい認知症予防法

認知症の予防において重要なのは、脳の健康維持です。そのためには、生活習慣の改善に加えて、食事にも配慮する必要があります。家族や友人と楽しい会話をしながら栄養バランスの良い食事を取るなど、脳の活性化につながることを実践するとよいでしょう。

また、認知症予防には運動も欠かせません。適度な運動を行なうと血流が良くなり、脳の活性化につながります。なかでも、推奨されているのは有酸素運動です。負担が大きくならない程度に、楽しみながら続けることをおすすめします。

質の良い睡眠を十分に取ることも重要です。睡眠不足に陥ると脳に老廃物が溜まり、機能低下を起こしてしまうといわれています。認知症の発症リスクも高まるため、睡眠時間をしっかりと確保するように努めましょう。

脳トレを習慣にすることで認知症予防の効果が期待できる


加齢による認知機能の低下を防ぐには、脳トレが効果的だといわれています。これは、脳トレを行なうと脳が活性化すると考えられているためです。脳トレを継続して行なうことで、認知機能の低下を防げるでしょう。脳トレを習慣化するには、無理なく続けられるものを選択することがポイントです。

また、脳トレと併せてバランスの良い食事や運動、質の良い睡眠を取り入れることも大切です。認知機能を維持するためにも、早めに取り組んでみてはいかがでしょうか。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2024年2月27日

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