認知症の検査には公的医療保険が適用されるため、患者の自己負担額は医療費の1~3割となります。血液検査や画像検査などの専門的な検査を組み合わせて行う場合、数千~2万円程度の費用がかかるのが一般的です。
検査の内容によって費用は大きく異なるため、受診を検討している病院に事前に費用の目安を確認しておくとよいでしょう。
認知症に対する治療法には薬物療法・非薬物療法・適切なケアの3つがあり、ポイントは3つの治療法をバランス良く行うこととされています。
認知症の薬物療法は以下の2種類に分けられます。
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抗認知症薬によるもの
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認知症の行動・心理症状を抑える薬によるもの
抗認知症薬による薬物療法は、記憶力や判断力の低下といった認知症の中核症状の進行を遅らせる目的で行われ、「コリンエステラーゼ阻害薬」などを使用します。
抗認知症薬は認知症を比較的軽度な状態に長く保つことが可能です。ただし、進行を完全に止める薬ではありません。
また、認知症の行動・心理症状を抑える薬による薬物療法では、睡眠薬や抗不安薬などが処方されます。抑うつや不眠、不穏など、認知症の行動・心理症状から生じる生活の悪循環を和らげることが目的です。
認知症の非薬物療法は、認知症を患っている方の生活の質を高める効果を期待できます。例えば、読書・ゲームといった知的活動や趣味活動、回想法などは、認知症の代表的な非薬物療法です。
認知症の症状によって生じる不安や焦りに苦しんでいる場合でも、好きな活動に集中すれば本人が自分らしく過ごせます。
認知症の非薬物療法にはさまざまな種類があるため、本人にあったものに取り組むことがポイントです。
薬物療法や非薬物療法で認知症の進行を緩やかにしている間に、本人と家族に適した介護サービスを導入することも大切です。環境を適切に調整することで、本人や家族の生活の質をよりよく保てます。
認知症を患っているという状況にゆっくりと慣れ、適切な介護の体制を整える時間を確保するために、薬物療法や非薬物療法を実施するとよいでしょう。
認知症の疑いがある場合、できるだけ早めに医療機関を受診することが大切です。しかし、本人が抵抗を示すこともあり、無理に連れて行こうとするとかえって逆効果になることもあります。
ここでは、受診時に心がけたいポイントを6つ紹介します。
本人が受診を嫌がるからといって、病院に行く理由を偽って無理に連れて行くのは避けるべきです。
「健康診断だから」「別の病気の検査だから」などと偽って受診させると、本人が医療機関で事実を知ったときに傷付き、信頼関係が壊れてしまいます。
一度失った信頼を回復するのは簡単ではなく、その後の治療や通院にも大きな支障をきたす恐れがあります。正直な気持ちで接し、心から心配していることを伝えることが大切です。
本人が受診を拒否する場合、無理やり連れて行くと不安をあおり逆効果となってしまいます。
認知症という言葉はできるだけ使わず、「念のために行こう」「予防のために早めに受診する人が多い」などと伝えるとよいでしょう。
また、受診を勧める場合には、家族や親族のなかでも近しすぎず適切な距離感のある方が本人に伝えるという方法も有効です。
かかりつけ医がいる場合は事前に連携し、医師の口から受診を勧めてもらうと素直に受け入れやすくなります。
どうしても本人が受診を拒むときは、医療機関に相談し訪問診療(往診)を依頼するのも一つの方法です。
実際に受診する段階になると本人だけでなく家族も緊張して、認知症が疑われる症状や困りごとを医師にうまく伝えられないことがあります。
事前に症状や既往歴の情報を書き出すなど、情報を整理しておくとスムーズに受診することが可能です。
また、症状や既往歴などの具体的な情報だけでなく、家族として不安なことや医師に相談したいことを書きとどめておくのもよいでしょう。
受診の結果「認知症」と診断された場合は、本人・家族ともに精神的なショックのために医師からの説明や重要な情報を聞き逃してしまう恐れがあります。
認知症かどうかの診断結果はできるだけ一人ではなく、ほかの家族や信頼できる人と聞きましょう。
診断結果を聞く場への同席が難しい場合でも、結果を聞いたあとすぐに誰かと連絡できる体制を整えておくことをおすすめします。
結果を聞く場に受診者本人がいない場合、認知症の診断結果を本人に伝えるかどうかは、性格や判断力を考慮しながら家族で慎重に判断することが必要です。
早期に伝えることで治療方針や将来について本人の意向を確認できるメリットがある一方、精神的に大きなショックを受けてしまう可能性があります。
告知する場合は、病気に対する理解を深めてもらいながら、今後の見通しや支援体制について丁寧に説明し、不安を和らげるサポートを心がけましょう。
認知症と診断された本人や家族は、事実を受け入れられなかったりショックのためふさぎこんでしまったりすることもあります。まずは精神的なケアが重要です。
気持ちが落ち着いたあとには、本人が今後どのように過ごしたいか、また将来に備えて何をしておくべきかなどを確認する必要があります。疑問や悩みごとがある場合は、地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。