認知症を疑った際に受ける「MMSE」とは?
評価法や注意点


もしかしたら認知症かもしれない。そんな不安を感じたときに、簡単にできる認知症検査「MMSE」という言葉を耳にしたことはありませんか?また、MMSEはどのような検査なのかと、気になる方も多いのではないでしょうか。

MMSEとは、世界的に使用されている認知症のスクリーニングテストを指し、認知症が疑われているときに行う、神経心理検査の一つです。

この記事では、MMSEとは何か、評価方法・採点基準や実施する際の注意点、「長谷川式認知症スケール」との違いについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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「MMSE」とは

MMSEは正式名称を「ミニメンタルステート検査」といい、日本語では「精神状態短時間検査」と呼ばれます。認知症が疑われる際に行う神経心理検査の一つであり、世界的に広く使われている認知症のスクリーニングテストです。

認知機能を点数化することで、低下している認知機能のレベルを客観的に把握できます。特別な機材は必要なく、短時間で簡易的に行える検査となっており、国内では2006年に日本版が作成され広く活用されています。

MMSEの検査内容と評価基準

MMSEは短時間で簡単に実施できる検査です。MMSEの検査の流れや評価項目について詳しく解説します。

MMSEの検査の流れ

検査を行ううえで必要なものは、おもに下記の4つです。
  • MMSEの評価用紙
  • 筆記用具(鉛筆・消しゴム)
  • 時計や鍵
MMSEの検査のなかで、物の名称を問う設問があります。そのため、時計や鍵以外であっても、身の回りの物品で、誰もがその名前を知っているものであれば代用が可能です。

MMSEの検査にかかる所要時間は10~15分程度です。1問につき10秒の制限時間が設けられているため、時間内に回答者が答えられなかった場合、質問者はその問題は解けなかったものと判定し、次の問題にうつります。

検査では、質問者が問題を出し、回答者は口頭や記述、図形模写といった方法で回答します。

MMSEの評価項目と採点基準

MMSEの評価は全部で11項目あります。1問につき1点の配点となっており、すべて正解した場合は30点です。獲得した得点をスコアシートに当てはめて、評価・判断します。

時間の見当識(1点×5個)

認知機能が低下すると、現在の日付や時間帯、季節などの時間間隔がずれる傾向にあるため、時間の見当識の度合いをチェックします。

例)「今日は何日ですか?」「季節は何ですか?」

年の回答の場合、西暦と年号どちらであっても正答となります。季節の場合には「春夏秋冬」だけでなく、「梅雨」「初夏(冬)」と回答した場合であっても正解です。
日にちについては、誤って答えた場合であっても制限時間内に正しく言い直した場合には、正解したとみなします。

場所の見当識(1点×5個)

認知機能が低下すると、現在自分がいる場所が正確に把握できない傾向にあるため、場所の見当識の度合いをチェックします。

例)「ここは何県ですか?」「この建物の名前は何ですか?」

現在いる場所(病院など)の名前を把握しているか、地理的所在地についても正しく認識しているかどうかの確認を行います。病院など施設の名前については、正確な名称である必要はありません。通称や略称を回答した場合にも、正解とします。

即時想起(1点×3個)

認知機能が低下すると短期の記憶を維持することが難しい傾向にあるため、短時間で、単語を覚えられるか検査します。

まずは3つの単語(相互に無関係な単語)を、1秒間に1個ずつのペースで検査対象者に伝えます。そのあと、検査対象者には3つの単語を同じ順番で繰り返して言ってもらいます。

例)「今から私が言う言葉を覚えて、繰り返し言ってください」
「『ボール』『旗』『桜』はい、今言った言葉を言ってください」

1つ正解できれば1点で、合計3点になります。ただし、全部回答できるようになるまで最大6回まで繰り返し6回目でも答えられなかった場合には終了です。

注意と計算(5点)

脳が記憶力や情報に対し、どのように処理するかを判断します。暗算での引き算、もしくは単語を逆から言う逆唱課題が出題されます。

引き算の場合、「100から7を引くと?」と質問し「93」と正解したとします。その場合、次の問題では93から7を引いた数字、さらに次は86から7を引いた数字と、答えに対し同じ数字を引く計算を5回繰り返します。

注意すべきは、前の数式の答えを出題者は口にしてはいけないという点です。前文の例の場合、「100から7を引くと?」の質問のあとに「では93から7を引くと?」と聞いてはいけません。「93」と回答したあと、出題者は「では、さらに7を引くと?」と、答えの数字をあえて言わないようにする必要があります。

言葉の逆唱の場合には、「セカイチズ」や「フジノヤマ」といった特定の単語を出題者が伝え、検査対象者には単語を後ろから読んでもらいます。

遅延再生(1点×3個)

記憶した言葉を、少し時間が経っても思い出せるかどうかをチェックする項目です。「即時想起」の項目で言った3つの言葉を思い出してもらい、再度復唱してもらいます。

このとき、「即時想起」のチェック時に答えてもらった順番でなくても問題ありません。もし答えが出てこないような場合には、「動物」「乗り物」などといった、単語に関するヒントを出すことも可能です。

物品呼称(1点×2個)

目の前の物を認識できるか、正しい名称を記憶のなかから思い出せるかどうかを判断する項目です。2つの物品について出題されます。

質問者は、用意した身の回りの物品(鉛筆や時計、鍵など)を見せながら、「これは何ですか?」と質問します。回答者が正式名称ではなく、通称を答えた場合であっても正答となります。

文の復唱(1点)

長文に対し、記憶力に問題がないかをチェックする項目です。質問者が文章を口頭で伝え、回答者に繰り返し言ってもらいます。

例)「つべこべ言っても駄目」「みんなで力を合わせてつなを引きます」

一度で正確に復唱できたら1点となり、一つでも単語を間違えたり言い間違えたりした場合には不正解となります。

口頭指示(1点×3段階)

口頭での指示に対し、内容を理解して行動にうつせるかどうかをチェックする項目です。質問者は指示を3段階にわけて出し、一つの段階ごとに、行動が指示どおりのものであるかを確認します。

指示ごとに正確な作業ができれば、1点ずつの加算となります。3段階すべての行動ができると3点満点の評価です。

例)①「右手にハンカチをもってください」
②「ハンカチを半分に折りたたんでください」
③「ハンカチを私に渡してください」

書字指示(1点)

書いてある文章を理解し、そのとおりに行動にうつせるかどうかを判断する項目です。質問者は指示を紙に書き、回答者に読ませます。この際、回答者は音読でも黙読でも構いません。

指示を読んだことを確認したあと、書いてあることを実行してもらいます。そのとき、指示どおりの動作ができない、あるいは字が読めないと不正解になります。

例)「片手を上げてください」

自発書字(1点)

違和感がない文章を構成できるかどうかの確認です。内容は何でも構わないので、回答者には自由に作文してもらいます。

質問者は文章を読んで、意味が理解できる文章であれば正解と判断し、単語を羅列しただけなどといった場合には不正解となります。

図形模写(1点)

描かれた図形を正しく模写できるかどうかをチェックする項目です。一例として重なり合った2つの五角形が描かれた紙を渡して、回答者には同じものを描いてもらいます。

図形の角が両方に5つあり、2つの五角形が1カ所交差していれば正解と判断します。逆に角が5つない場合や、線が閉じていない場合、五角形が交差していないなどといった場合には誤りと判断します。

MMSEのカットオフ値・点数について

MMSEのカットオフ値とは認知機能の障害の度合いが、病気によるものなのか、それとも加齢によるものなのかなどを判断する際に基準となる値やラインのことです。
MMSEの満点である30点に対し、評価基準は以下のとおりになります。
  • 28~30点は異常なし
  • 24~27点は軽度認知障害(MCI)の疑いあり
  • 23点以下は認知症の可能性あり
あくまでも評価基準は目安であり、結果だけでは正確な判断はできません。MMSEの値が異常なしであっても、日常生活のなかで不安なことや気になることがある場合は、病院を受診し脳のCTやMRIなどの精密検査を受けるとよいでしょう。

また、軽度認知障害の疑いであっても、認知症予防の観点から早期の対策や治療は大切です。医師や専門家からの指示をしっかりと仰ぎ、早期治療を心がけましょう。

MMSEの検査をする際の注意点

MMSEの点数が低いだけで認知症と評価するわけではなく、MMSEの値はあくまで一つの指標にすぎません。例えばうつ病を患っている場合も、認知機能は低下します。MMSEの結果を過信しないように注意しましょう。

認知機能低下の原因はさまざまで、正しく診断するためには、病歴や画像検査、血液検査なども鑑みて総合的に評価する必要があります。点数が低かった場合は認知症以外の疾患を抱えている可能性も考えるため専門医に相談するとよいでしょう。

また、家族の勧めでMMSEの検査を受ける場合「認知症を疑われている」と、本人がショックを受けてしまう可能性も考えられます。検査を受ける本人の感情へも気を配り、ショックを受けぬよう家族がケアすることも大切です。

「改訂版長谷川式簡易知能評価スケール」との違い

MMSEと類似するスクリーニング検査に「改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(HSD-R、以下長谷川式スケール)」があります。世界中で用いられるMMSEとは異なり長谷川式スケールはおもに日本で利用されます。

MMSEが見当識、記憶力、注意機能、言語能力、視空間認知能力など複数の観点から評価できるのに対し、長谷川式スケールは記憶力に重点が置かれています。検査方法がすべて口述で行われる点もMMSEとは異なる点です。

また、評価基準も異なります。30点満点であるという点は同じですが、MMSEは23点以下で認知症を疑われるのに対し、長谷川式スケールは20点以下で機能低下が疑われます。

下記記事では長谷川式スケールについてより詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

認知症かもと思ったら病院を受診・MMSEを検討しよう


MMSE(ミニメンタルステート検査)は、認知症が疑われているときに行う神経心理検査の一つです。認知機能に関する評価を点数化し、簡単にかつ客観的に低下している認知機能の種類などが確認できます。

MMSEには1問につき10秒ほどの制限時間が設けられており、回答者は全11項目の設問に答えます。各項目にはそれぞれ評価基準が定められており、正解すると配分されている得点を獲得し、獲得した得点をスコアシートに当てはめることで、認知機能が評価・判断されます。

MMSEの点数が低い場合も、テストだけで認知症と判定はせず、あくまでも一つの可能性としてとらえるようにし、医師に相談するとよいでしょう。

 

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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2025年1月17日

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