認知症の診断基準とは?
確認のポイント・検査の種類・受診のタイミング


「最近、親が同じことを何度も話すようになった」「自分の物忘れが増えてきた」というような変化に気付いたとき、「もしかして認知症?」という不安が頭をよぎる方は少なくないのではないでしょうか。

認知症かどうかは、医師が問診・検査・日常生活への影響などを総合的に評価して診断します。1つの検査の結果だけで決まるわけではなく、「どこからが認知症なのか」には医学的な診断基準が存在するのです。

当記事では、認知症の診断基準の考え方や、診断で確認される具体的なポイント、使われる検査の種類、受診を考えるタイミングの目安について解説します。

認知症はどのように診断されるのか|診断基準の考え方

 
以下では、認知症の診断基準の考え方を解説します。「検査を受ければすぐわかる」と思われることもありますが、実際の診断はもう少し丁寧なプロセスを経て行われます。

診断は1つの検査だけで決まるわけではない

認知症の診断は、問診・認知機能テスト・画像検査・家族からの情報など、複数の手がかりを組み合わせて医師が総合的に下します。

スクリーニング検査の点数が低くても、すぐに認知症と診断されるわけではありません。反対に、点数が基準を下回っていなくても、日常生活への影響が大きければ診断の対象になることもあります。

判断の軸は「認知機能の低下」と「日常生活への支障」

認知症の診断基準は国際的にいくつか存在しますが、現在広く用いられている基準の一つがDSM-5(米国精神医学会の診断基準)です。

DSM-5では、学習および記憶・複雑性注意・言語・遂行機能・知覚-運動、社会的認知といった認知領域のうち、1つ以上で以前と比べて明らかな低下があること、かつその影響で日常生活の自立が損なわれていることが診断の要件とされています。

「物忘れがある」だけでなく「生活に支障が出ているかどうか」が診断の重要な軸になるのです。

認知症の診断で確認される3つのポイント

DSM-5をもとに、診断の際に確認されるポイントをわかりやすく紹介します。

記憶力や判断力など認知機能が低下しているか

認知症の診断では、記憶力だけでなく、複雑性注意・遂行機能・言語・知覚-運動・社会的認知など複数の認知領域が評価の対象になります。各領域の症状は、日常生活のなかで次のような形で表れることがあります。
  • 複雑性注意:テレビを見ながら会話するなど、注意を同時に向けることが難しくなる
  • 遂行機能:料理の手順が組み立てられなくなる、段取り良く動けなくなる
  • 言語:言葉が出てこない、話の内容がかみ合わなくなる
  • 知覚-運動:道具の使い方がわからなくなる、空間の把握が難しくなる
  • 社会的認知:相手の表情や気持ちが読みとりにくくなる
DSM-5で認知症と診断されるには、上記から1つ以上の領域で「以前の水準からの明らかな低下」が認められることが必要です。

日常生活や社会生活に支障が出ているか

請求書の支払い・内服薬の自己管理・公共交通機関の利用といった、いわゆる手段的日常生活動作に援助が必要になってきた状態が、一つの目安になります。

加齢による物忘れは体験の一部を忘れる程度にとどまり、日常生活への影響はほとんど見られません。一方、認知症の物忘れは体験そのものをまるごと忘れ、忘れたこと自体への自覚もないことが多いため、日常生活に支障をきたすようになります。

ほかの病気や薬の影響ではないか

認知機能が低下しているように見えても、うつ病やせん妄、甲状腺機能低下症・慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症などが原因となっている場合もあります。

これらは治療によって改善が見込める状態です。血液検査や脳CT・MRIを用いてこうした疾患との鑑別が行われます。

認知症の診断に用いられる検査の例

 
認知症の診断では、複数の検査を組み合わせて行います。ここでは代表的な検査を紹介します。

認知機能テスト

よく用いられるスクリーニング検査として、長谷川式スケール(HDS-R)MMSEの2種類があります。どちらも30点満点で、長谷川式は20点以下、MMSEは23点以下が認知症の疑いの目安です。

長谷川式は口頭のみで実施でき、特に記憶力に関する質問が多く含まれています。MMSEは記憶・言語・計算・視空間認知など多面的に評価でき、国際的に広く使われています。

ただし、これらはあくまでスクリーニング検査です。点数だけで診断が確定するわけではなく、問診や画像検査などと組み合わせて総合的に判断されます。

認知機能テストについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

認知症テスト「長谷川式スケール」の実施方法や行う際のポイント

認知症を疑った際に受ける「MMSE」とは?評価法や注意点

画像検査

脳のMRIやCTでは、脳の萎縮の程度や血管障害の有無を確認できます。アルツハイマー型認知症では海馬周辺の萎縮が、脳血管性認知症では脳梗塞や脳出血の痕跡が見られることがあります。

必要に応じて、脳血流SPECTという画像検査で血流の状態を調べたり、PET(陽電子放出断層撮影)で脳の代謝状態を確認したりすることもあるでしょう。

問診と家族からの情報

認知症の診断には、本人への問診に加えて、家族など身近な人からの情報も重要です。

「いつ頃からどのような変化があったか」「日常生活でどのような場面に困っているか」といった具体的な情報が、診断の重要な手がかりになります。

受診前に気になる変化をメモしてまとめておくと、診察がスムーズに進めやすくなるでしょう。

認知症の受診を考えるタイミングとは

加齢による物忘れは体験の一部を忘れる程度で、ヒントがあると思い出せますが、認知症の物忘れは体験そのものをまるごと忘れ、忘れたこと自体への自覚もない点が異なります。

以下のような変化が続く場合は、まずかかりつけ医に相談してみましょう。必要に応じて、脳神経内科やもの忘れ外来への紹介をしてもらえることもあります。

同じことを何度も聞く・話す場面が増えた

「短時間のうちに同じ話を繰り返す」「同じ質問を何度もする」のような場合は、記憶の記銘(新しい情報を覚える機能)に障害が生じている可能性があります。加齢による物忘れと異なるのは、本人にその自覚がないことが多い点です。

時間や場所、通い慣れた道がわからなくなってきた

今日の日付や曜日がわからなくなったり、長年通い慣れた道で迷うようになったりすることがあります。時間・場所・人物を正しく認識する「見当識」の低下は、認知症の比較的早い段階から表れやすい変化の一つです。

お金の管理や手続きが難しくなってきた

買い物のつり銭の計算が難しくなった、公共料金の支払いを繰り返し忘れるといった変化は、段取りを立てて行動する遂行機能の低下として表れやすいサインです。「料理の手順がわからなくなる」「服薬管理が難しくなる」なども同様です。

認知症と軽度認知障害(MCI)の違いとは

「認知症」と「軽度認知障害(MCI)」は混同されやすいですが、その区別は診断でも重要な意味を持ちます。

日常生活への支障の有無

認知症は、認知機能の低下によって日常生活の自立が困難になった状態です。一方、MCIは認知機能の低下は見られるものの、日常生活動作はおおむね自立して行えている状態を指します。厚生労働省の資料でも、MCIは「正常と認知症の中間の状態」と位置付けられています。

認知機能低下の程度

MCIは、同年代と比較して認知機能の低下が認められるものの、認知症の診断基準には達していない状態です。認知症とMCIの境界は、「認知機能の障害が日常生活の自立を阻害しているかどうか」によって判断されます。

回復・改善の可能性

MCIは、適切な対応によって認知機能が回復する可能性があります。一方、認知症は原因となる疾患が治療可能なケースを除き、根本的な回復は難しいとされています。だからこそ、MCIの段階で変化に気付き、早めに相談・対応することが重要です。

MCIは、以下の記事でも詳しく説明しています。

軽度認知障害(MCI)とは?初期の認知症の症状・受診のサイン

認知症の診断基準を把握し、気になる変化は早めに相談を


認知症の診断は、認知機能の低下と日常生活への支障の両面を総合的に判断して行われます。1つの検査だけで決まるわけではなく、問診・認知機能テスト・画像検査・家族からの情報などが組み合わされます。

確認されるポイントは、認知機能が以前より低下しているか、日常生活に支障が出ているか、ほかの疾患の影響ではないか、の3点です。また、認知症と似た状態であるMCIは、早期に発見して対応することで改善が見込める可能性があります。

「最近、なんとなく気になることがある」と感じたら、受診をためらわず、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

 

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菊池 大和[医師]

医療法人ONEきくち総合診療クリニック理事長・院長。地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、活動が評価され2024年11月にTIMEアジア版に掲載される。

資格:日本慢性期医療協会総合診療認定医・日本医師会認定健康スポーツ医・認知症サポート医・身体障害者福祉法指定医(呼吸器)・厚生労働省初期臨床研修指導医・神奈川県難病指定医 など

公開日:2026年5月22日

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