親に認知症保険は本当に必要?メリットと注意点


「親の認知症に備えて認知症保険に加入したほうが良いの?」と気になっている方もいるかと思います。

認知症での介護は通常の介護よりも費用がかかるため、親の貯蓄や収入で賄えないと思われる場合は、認知症保険への加入がおすすめです。

本記事では、認知症の現状と介護にかかる費用・期間の目安、認知症保険の概要とメリットなどについて解説します。最後に、親が加入している保険がわからない場合の対処法も紹介するので、認知症保険に関心のある方はぜひ参考にしてください。

朝日生命では認知症介護などの経済的負担に備えられる介護・認知症保険をご提供しています。
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親に認知症保険は必要?認知症のリスクと現状

はじめに、認知症の概要と現状、認知症保険の必要性について解説します。

認知症とは?

認知症とは、様々な脳の病気により脳の働きが衰え、記憶力や判断力などの認知機能が低下して日常生活に支障が出る状態のことです。

認知症の前段階はMCI(軽度認知障害)とされており、認知症とは診断できない「正常と認知症の中間」状態を指します。MCIの方のうち、年間10~15%が認知症になるといわれています。
MCIは物忘れなどの症状はありますが、日常生活への影響はほとんどありません。しかし、認知症になるといつもどおりの生活が送れなくなるため、介護が必要になることもあります。
 

内閣府「平成29年版高齢社会白書」、首相官邸認知症施策推進関係閣僚会議(第2回)資料、
厚生労働省老健局 社会保障審議会介護保険部会(第92回)「介護保険制度をめぐる最近の動向について」より当社試算(65歳以上を対象として各年齢の認知症有病率が上昇する場合の数値を使用)

日本では認知症・MCIの方は増加傾向です。2030年には約1,548万人(65歳以上の約3人に1人)となる見通しです。

介護費用はいくらかかる?

2021(令和3)年度の「生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯主または配偶者が認知症などで要介護状態になったときに、公的介護保険の範囲外の費用に対して必要と考える初期費用の平均額は234万円、月々の平均費用は15.8万円です。

この平均額は、公的介護保険の適応を受けたうえで必要となる費用です。公的介護保険は受けたサービスに対して1~3割の自己負担が生じるため、上記の費用とは別で考慮する必要があります。

また、認知症における介護は通常の介護より費用負担が大きい傾向があるため、認知症への備えは重要といえます。

介護期間の目安はどのくらい?

前述の調査によると、平均介護期間(認知症に限らず)は5年1ヵ月で、10年以上となる長期間の介護を経験している方も17.6%と少なくありません

家族や親族が介護をする場合、体力的・精神的負担があるだけでなく、これまでのように仕事ができないことで、長期間にわたり収入が減少する可能性もあります。

施設入居も選択肢に入るかもしれませんが、経済的負担が大きくなります。

介護期間分の介護費用や初期費用を親の貯蓄や収入、家族の収入で賄えるなら問題ありませんが、賄えない場合は認知症保険の活用が有効です。

認知症保険とは?

認知症保険は大きく2種類あり、次のような違いがあります。

・治療保障タイプ
一定の要件を満たす認知症になった場合に年金や一時金を受け取れる保険で、おもに生命保険会社が販売しています。

認知症になると医療や介護に必要な費用、施設入居費用などの支出が増えますが、治療保障タイプの保険では保険金・給付金を定額で受け取れるため、これらの費用に対応できます。

・損害補償タイプ
認知症の方が引き起こしたトラブルに対する費用の実損分を補償する保険で、おもに損害保険会社が販売しています。

認知症になると、判断能力の低下などで第三者の財物に損害を与えたり、行方不明になって捜索費用がかかったりすることもあります。これらのトラブルへの対処費用を上限まで補償してくれます。

いずれのタイプも毎月の保険料や支払条件などは保険会社によって異なるため、事前に保障内容をしっかり確認しましょう。

また、前述の「生命保険に関する全国実態調査」によると、認知症保険・認知症特約の加入率は6.6%です。93.6%の医療保険と比較すると加入率は低いですが、日本では今後高齢化が進み、認知症の方は増えると予想されます。加入者は増加する可能性が高いでしょう。

以降の項目では「治療保障タイプ」について解説します。

認知症保険の3つのメリット

認知症保険のメリットを3つ紹介します。

経済的負担を軽減できる

認知症保険に加入し、「認知症と診断される」「要介護認定される」など一定の要件を満たすと、保険金・給付金を現金で受け取れます。

認知症の治療にかかる医療費や介護費用などの経済的負担に備えられるのが、認知症保険の一番のメリットです。特に、介護開始時はリフォームや介護用品の購入で費用負担が大きくなりやすいため、現金で給付を受けられる認知症保険は負担軽減に役立つでしょう。

また、保険金・給付金の使用用途は限定されていません。そのため、介護の影響で家族の収入減があった場合は、生活費の補填にも役立ちます。

保険金・給付金の給付条件は保険会社や商品によって異なるため、事前に確認しましょう。

認知症予防サービスを受けられる

認知症予防のために、次のような独自のサービスを提供している認知症保険もあります。

・現在の認知機能測定と将来予測
・認知症の基礎知識や最新情報の提供
・運動や食事など生活習慣の管理・サポート
・認知症関連施設の紹介

保険会社や商品によって内容は異なりますが、認知症の予防や早期発見のために有効活用したいサービスです。

指定代理請求制度を利用できる

指定代理請求制度とは、被保険者に特別な事情がある場合、あらかじめ指定された代理人が保険金などを請求できる制度です。

特別な事情の例は以下のとおりです。

・傷害または疾病により、保険金などを請求する意思表示ができないとき
・治療上の都合により、傷病名または余命の告知を受けていないとき
・そのほか、上記いずれかに準じた状態であるとき

指定代理請求できる商品は保険会社により異なりますが、一般的に認知症保険は利用可能です。親が認知症となり保険金などの請求が難しくなってしまっても、家族が保険金・給付金を受け取れるのは安心できるポイントでしょう。

認知症保険の3つの注意点

認知症保険の注意点も解説します。

給付対象となる認知症が決まっている

認知症保険は、すべての認知症が給付対象となるわけではありません。

例えば、アルコールの多飲により生じるアルコール性認知症を給付対象外としている商品もあります。いざというときに保険金・給付金がもらえず困らないように、事前に給付要件を確認しましょう。

掛け捨てタイプの保険が多い

認知症保険は掛け捨てタイプの商品が多いです。掛け捨てタイプの場合、解約返戻金や満期保険金はなく、支払った保険料は戻りません。


また、保険商品は一般的に加入年齢が高いほど保険料が高くなります。認知症保険は50~60歳代で加入することも多いため、「思っていたよりも保険料が高い」と感じるかもしれません。早めに加入したほうが保険料を抑えられるでしょう。

定年後も無理なく保険料を支払い続けられるかもシミュレーションすると安心です。

認知症になってもすぐに保険金・給付金は受け取れない

認知症保険のなかには、「公的介護保険の要介護認定」を保険金・給付金の支払条件としている商品もあります。

要介護認定は申請書の提出後、認定調査を受けたり医師に意見書を書いてもらったりと手間がかかり、結果が出るまでに1ヵ月以上を要することがあります。

そのため、認知症と診断されてもすぐに保険金・給付金を受け取れない可能性があることは覚えておきましょう。

また、免責期間(保険加入後の一定期間は認知症になっても給付を受けられない期間)中に認知症になっても、保険金・給付金を受け取れない点も注意が必要です

認知症保険を検討するときに確認したいポイント

保険商品によって保障内容や給付条件が異なるため、どの認知症保険が良いか迷う方もいるかもしれません。

認知症保険の加入検討時に確認したいポイントを5つ紹介します。
 

保障の範囲

対象は器質性認知症のみか、MCI(軽度認知障害)が含まれるか、認知症以外のリスクへの保障の有無など

保険金・給付金の受取方法

一時金タイプか年金タイプかなど

免責期間の有無

免責期間がある場合はどのくらいの期間かなど

付帯サービスの有無

認知症防止アプリや見守りサービスがあるかなど

前述のとおり、アルコール性認知症を給付対象外としている商品があるなど、認知症保険は対象としている認知症が決まっています。保障の範囲はしっかり確認しましょう。

保険金・給付金の受け取り方も重要です。

受取方法について、一時金タイプはまとまった金額を受け取れるため、介護の初期費用にも活用できます。年金タイプは「毎月〇万円」のように定期的に受け取れるため、介護が長引いたときの負担を軽減してくれます。

迷った際は専門家へ相談すると、ご自身に適した商品の提案を受けられるでしょう。

認知症の親が加入している保険がわからない場合の対処法

生命保険契約照会制度は、親が死亡したり、認知症などで判断能力が低下(医師の診断が必要)したりした場合に、親が契約あるいは被保険者になっている保険を法定相続人などが照会できる制度のことです。

親が認知症になると加入している保険がわからなくなったり、保険金・給付金の請求手続きができなくなったりとトラブルになることもあります。この制度を活用することで、親が加入している保険を把握できるでしょう。

加入状況を照会できるのは、照会対象者の3親等内の親族や法定代理人、任意代理人などで、費用は3,000円(平時利用の場合、税込)です。

照会手続きはオンラインまたは郵送で可能ですが、照会結果が出るまでに14営業日程度かかる点は注意しましょう。

生命保険契約照会制度はいざというときに便利な制度です。しかし、保険の加入状況は早めに家族に共有しておくことをおすすめします。事前に共有していると、認知症になった場合にスムーズに対応してもらえるでしょう。

将来の認知症リスクに備えて認知症保険の検討を


認知症は認知機能が低下して日常生活に支障が出る状態です。高齢化が続く日本では認知症・MCIの人は増加傾向であり、誰にとっても他人事ではありません。

認知症の介護は通常の介護よりも経済的負担が大きく、貯蓄や収入で賄えない場合は認知症保険の活用も有効です。

 

朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

CFP 齋藤 彩

急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2024年7月1日

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