「理想の介護」について考えよう
短期記憶障害とは、短い時間内に起きた新しい出来事を記憶する機能が低下することです。「1時間前にしていたことを思い出せない」「今日の日付がわからない」のような症状が見られます。短期記憶障害の原因は、記憶を司る「海馬」の異常です。
認知症にはいくつか種類がありますが、どの認知症も症状が進行すると(程度の差はあれ)記憶障害が認められます。
また、短期記憶障害とよく混同される「もの忘れ」は、原因、忘れる範囲、自覚症状の有無が異なります。短期記憶障害は、脳血管障害や異常タンパク質の蓄積など脳の障害で発生するものです。朝食を摂ったこと自体を忘れるなど「物事のすべてを忘れる」のが特徴で、そもそも忘れたことにすら自覚がありません。
一方、もの忘れは加齢による自然な脳細胞の萎縮や減少で生じ、朝食を摂ったことは覚えていますが「朝は何を食べたっけ?」のように「物事の一部を忘れる」のが特徴です。忘れたことは自覚しており、指摘されると思い出すことができます。
認知症にはいくつか種類がありますが、どの認知症も症状が進行すると(程度の差はあれ)記憶障害が認められます。
また、短期記憶障害とよく混同される「もの忘れ」は、原因、忘れる範囲、自覚症状の有無が異なります。短期記憶障害は、脳血管障害や異常タンパク質の蓄積など脳の障害で発生するものです。朝食を摂ったこと自体を忘れるなど「物事のすべてを忘れる」のが特徴で、そもそも忘れたことにすら自覚がありません。
一方、もの忘れは加齢による自然な脳細胞の萎縮や減少で生じ、朝食を摂ったことは覚えていますが「朝は何を食べたっけ?」のように「物事の一部を忘れる」のが特徴です。忘れたことは自覚しており、指摘されると思い出すことができます。
認知症による短期記憶障害 | もの忘れ | |
原因 | 何らかの原因による脳の障害 | 加齢による脳細胞の萎縮や減少 |
忘れる範囲 | 物事のすべてを忘れる | 物事の一部を忘れる |
自覚症状 | なし | あり |
記憶は、心理学の領域において大きく長期記憶と短期記憶、感覚記憶に分類されます。また、臨床神経学的には、記憶の保持期間で「即時記憶(数秒程度の保持)」「近時記憶(数分~数か月程度の保持)」「遠隔記憶(数か月以上の保持)」に分類されます。臨床神経学領域での即時記憶は、心理学領域の短期記憶に該当し、臨床神経学領域の近時記憶と遠隔記憶は、心理学領域の長期記憶に該当します。
また、長期記憶には意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶といった種類があり、短期記憶にはワーキングメモリー(作業記憶)があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
また、長期記憶には意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶といった種類があり、短期記憶にはワーキングメモリー(作業記憶)があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
短期(即時)記憶障害
短期(即時)記憶は、数秒~数時間と比較的短い時間の記憶です。短期記憶に障害が生じると、数秒〜数時間前に行っていたことを思い出せないため日常生活に大きな影響が現れます。短期記憶は長期記憶よりも先に障害が生じる場合が多いです。
下記のいずれかの症状が見られる方は、認知症による短期記憶障害である可能性があります。
● どこにいるかわからない
● 5分前に聞いた話を覚えていない
● 今が何月何日か思い出せない
● 今の季節がわからない
● 物を置いた場所をすぐに忘れる
● 同じことを何度も聞いたり話したりする
下記のいずれかの症状が見られる方は、認知症による短期記憶障害である可能性があります。
● どこにいるかわからない
● 5分前に聞いた話を覚えていない
● 今が何月何日か思い出せない
● 今の季節がわからない
● 物を置いた場所をすぐに忘れる
● 同じことを何度も聞いたり話したりする
長期(近時・遠隔)記憶障害
長期(近時・遠隔)記憶は、数日~数週間もしくは数十年の記憶です。昔の記憶を思い出せなかったり、覚えていても時系列がバラバラになったりなどの症状が見られます。また、新しい出来事を長期間にわたって覚えておくのも難しくなります。
下記のいずれかに当てはまる方は、認知症による長期記憶障害である可能性があります。
● 薬の飲み忘れが多い
● 子供や家族の消息がわからない(思い出せない)
● 自分が結婚していること自体を忘れている
● 昔の出来事の時系列がバラバラ
● 数日前に立てていた予定を忘れてしまう
● 一般的な知識が抜け落ちている
● 家族や友人など親しい人の名前が思い出せない
下記のいずれかに当てはまる方は、認知症による長期記憶障害である可能性があります。
● 薬の飲み忘れが多い
● 子供や家族の消息がわからない(思い出せない)
● 自分が結婚していること自体を忘れている
● 昔の出来事の時系列がバラバラ
● 数日前に立てていた予定を忘れてしまう
● 一般的な知識が抜け落ちている
● 家族や友人など親しい人の名前が思い出せない
エピソード(出来事)記憶の障害
エピソード記憶は、経験や体験したことの記憶です。朝食を摂ったかどうかは、短期記憶の障害だけでなく、エピソード記憶の障害も影響しています。「いつ、どこで、何を、どのように」といった記憶に障害が生じ、朝食を摂ったという「体験」の記憶が抜け落ちます。
エピソード記憶の障害は、記憶に対するリハビリでも影響が現れます。リハビリ自体を忘れるため、リハビリの効果が得られにくいのです。
エピソード記憶の障害は、記憶に対するリハビリでも影響が現れます。リハビリ自体を忘れるため、リハビリの効果が得られにくいのです。
意味記憶の障害
意味記憶とは、「地球は丸い形をしている」のような知識の記憶です。障害が生じると、蓄積された知識が抜け落ちてしまいます。他にも花や道具の名前なども思い出せないといった症状が見られるのも特徴です。
「アルツハイマー型認知症」では、意味記憶よりエピソード記憶の障害が目立ちます。一方「前頭側頭型認知症」ではエピソード記憶より意味記憶の障害が目立つことが知られています。このように、認知症の種類によって意味記憶障害の程度は異なります。
「アルツハイマー型認知症」では、意味記憶よりエピソード記憶の障害が目立ちます。一方「前頭側頭型認知症」ではエピソード記憶より意味記憶の障害が目立つことが知られています。このように、認知症の種類によって意味記憶障害の程度は異なります。
手続き記憶の障害
手続き記憶とは「身体で覚える記憶」を指します。自転車に乗る、車の運転をする、野球を練習して技術を身に付けるなどは手続き記憶によるものです。手続き記憶に関わっている主な脳の領域は「大脳基底核」や「小脳」です。他にも脳のさまざまな部位が連携を取り、手続き記憶を行っています。しかし、認知症を発症すると全体的に脳の萎縮および障害が生じるため、身体で覚えるのが困難になります。
記憶障害の進行
認知症の種類によって、記憶障害の進行程度は異なります。認知症の中でも、アルツハイマー型認知症の進行は緩やかな場合が多いため、記憶障害の程度も緩やかに進行します。
脳血管型認知症以外の認知症では、健常人がド忘れしただけのように感じる症状が初期に見られます。以降、本人の自覚がないところで徐々に記憶障害が進行し、周囲の人が異変に気づきます。脳血管型認知症の記憶障害は、脳血管障害の程度に左右されるため例外です。
記憶が障害される順番は、短期記憶→長期記憶(エピソード記憶→意味記憶→手続き記憶)で、比較的手続き記憶は残りやすいとされています。
脳血管型認知症以外の認知症では、健常人がド忘れしただけのように感じる症状が初期に見られます。以降、本人の自覚がないところで徐々に記憶障害が進行し、周囲の人が異変に気づきます。脳血管型認知症の記憶障害は、脳血管障害の程度に左右されるため例外です。
記憶が障害される順番は、短期記憶→長期記憶(エピソード記憶→意味記憶→手続き記憶)で、比較的手続き記憶は残りやすいとされています。
記憶障害の対策
ここからは、記憶障害の進行を遅くするためにできる対策を解説します。認知症は進行性の病気であるため、完全に記憶障害を改善することは困難です。しかし、対策によって進行を遅くできれば、さらなる日常生活への影響を防げます。対策方法を学び、実際に取り入れてみてください。
運動
認知症の方が運動することで脳神経のネットワークに変化を起こし、認知機能低下の防止につながるといった研究が数多く報告されています。走るなどの激しい運動である必要はありません。有効とされているのは週5回、計150分(1回30分)程度の有酸素運動(歩行など)です。
また、記憶を司る「海馬」の血流量増加や脳の「灰白質」と呼ばれる部位の体積増加も報告されています。つまり、定期的な運動を取り入れることで、記憶障害の進行予防が期待できるのです。
また、記憶を司る「海馬」の血流量増加や脳の「灰白質」と呼ばれる部位の体積増加も報告されています。つまり、定期的な運動を取り入れることで、記憶障害の進行予防が期待できるのです。
食事
果物や野菜、魚を中心とした食事が、認知症の発症予防および進行を遅らせる効果が得られるとされています。反対に、マーガリンや加工肉などに含まれる飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は、認知症の発症リスクを高めるという報告があります。
身体検査
ここで言う身体検査は、主に脳の検査を指します。認知症の進行予防には、定期的な脳の画像検査を行い、状態を把握することが大切です。脳画像から現れる症状の予測も可能になるため、事前に備えられるメリットがあります。
ストレスの管理
ストレスは脳に負担をかけ、認知症および記憶障害の進行をさらに早める恐れがあります。認知症者は、自身でのストレス管理は困難です。周囲によるストレス管理が必要になるため、ささいな変化に気づけるよう普段から本人の観察を怠らないようにしましょう。もし、ストレスが蓄積している場合は、個人に合わせた方法でのストレスの発散が大切です。大変ではありますが、適切なストレス管理で介護負担の軽減につながるため実践してみましょう。
記憶障害が出たときの接し方
記憶障害は、日常生活に大きな悪影響を及ぼすため本人にとってストレスとなります。そんな状況の中、さらにストレスを与える接し方をすると症状の悪化や健康を害する恐れがあります。ここでは、本人への接し方に加え、記憶障害による日常生活への影響を少なくする「工夫」をお伝えしていきます。
本人の状況を受け入れる
まずは本人の状況を受け入れましょう。記憶障害の影響で、日常生活では忘れてしまう場面が多々見られるでしょう。そこで怒ったり否定するような声かけは避けるべきです。本人を否定するような言動は精神面への負担をかけ、認知症の進行を促進する原因となります。
環境を整える
記憶に頼らないような環境にすることで、記憶障害による影響を小さくできます。
● 大切な物(カギや財布など)は、目につきやすい場所に置いておく
● 毎日違ったスケジュールにせずパターン化する
● メモ用紙やカレンダーを用い必要事項は書いておく
● 物の位置を変えないようにする
以上を実践するだけでも、記憶障害による生活への影響を小さくし、生活しやすくできます。
● 大切な物(カギや財布など)は、目につきやすい場所に置いておく
● 毎日違ったスケジュールにせずパターン化する
● メモ用紙やカレンダーを用い必要事項は書いておく
● 物の位置を変えないようにする
以上を実践するだけでも、記憶障害による生活への影響を小さくし、生活しやすくできます。
記憶を留めるための工夫
何か覚える必要がある場合、一度で覚えることはまず不可能と言えます。そのため「反復」が大切です。1日の中で何度も一緒に確認したり、壁にそのことを書いた紙を貼っておき、いつでも目に入るような環境にしたりといったことを実践しましょう。また、メモリーノートを活用するとよいです。後から見直せるように必要な情報を書いてもらうようにします。
メモやメモした内容の確認を習慣化できるように支援しましょう。